泣きながら生きて

この作品中のハイライトの一つでもある、13年ぶりに夫婦が会って東京観光するシーンは、俺が今まで見た中でも五指に入るくらいに美しいデートシーンだった。涙が止まらなかった。
これは日本で異物になるしかなかった人だからこそ歌える日本への賛歌だ。日本で生きる全ての人の背中をぐいぐい押してくる、そんな賛歌だ。心から素晴らしい作品だと思う。

  • 53 書を捨てよ町へ出よう

極彩色と混沌の素晴らしい「映画」というフィクションそのものである中間部分と、突然メタフィクションの顔をしながら実はメタフィクションでもフィクションでもなく、ただ単に映画や創作物というフィクションの依存に溺れる観客につばを吐いて外に出ろ馬鹿野郎、って突き放すだけの冒頭と結末。そういう「映画」
監督一発目でこんなのを撮る寺山修司はやっぱりただのひねくれ者。そして天才。音楽が素晴らしすぎてぐうの音も出ません。

「渇き」が公開されるので、パク・チャヌクで観てないのを観ていくキャンペーン実施中。おい、やっぱパク・チャヌクってすげーじゃないか。大変面白かった。南北問題が進展を見せ始めた2000年に真正面からこれを作るセンスも抜群だと思う。しかも過剰に南と北、どっちのバイアスにもかかる事を必要としないドラマを作ったというのも凄く正しい。
南北統一を実現するには信じられない額の金額が必要らしいし(今調べたら韓国のGDPの6倍だって!ウヒャー)、それだけじゃない色んな問題がある。現実味はどのくらいあるのかは分からない。だけど、そのテーマをこういうミニマルなドラマに描く意義は十分にあると思う。パク・チャヌクってやっぱ信用していい男だと思う。