夏の風景 悲しみの風景

ディズニーランドのCMを観る度に悶絶してしまう皆様、如何お過ごしでしょうか?メールで「浴衣の君が一番似合う」とか言うあれですよ。そりゃ浴衣着れば誰だって最高に決まってるじゃんね。かなり残念なおフェイスをされている人でも浴衣着ちゃえばほぼチャラだよ。心を揺さぶられるコスチュームっていろいろあるけど、浴衣ほど誰でもかわいくなるモノはないね。断言していい。これ以上は無いよ。
なのに一番浴衣を着て欲しい人の浴衣姿を目の当たりにできないと言う不幸。そしてその姿をどっかの誰かが確実に見られるという不幸。なんと言う不幸!それでも俺は抗うさ。とりあえず今できるのはそれしかないからな。かつて西寺郷太氏は「彼女の笑顔を奪い返す」事を「まるでノルマンディ」と表現したけど、今の俺は言うなれば「まるでレジスタンス」。何にも見えない暗がりに向かってパンチを繰り出し続けるような状況だけど、やらないよりはきっとマシだよね。
はーこんなセンチメンタルな、センチメンタル南向きな更新するつもりじゃなかったんだけどなあ。
いや、これは絶対さっき見た風景のせいだな。今日さ、埼玉の某駅近くで昼飯を食おうとしたんだよ。そしたら牛丼屋っていう看板が見えてさ。ただし松屋でも吉野家でもすき屋でも、牛丼太郎でさえない、めちゃめちゃ個人経営な店なんだよ。超場末の中華料理屋をイメージしてもらえばいいよ。
で、そこ入ってみたんだけど牛丼とカレーしかないのな。本当に牛丼で勝負してる店なんだよ。んで、店員はおじいちゃん一人。汚い床と何か微妙な匂いのするエアコンと劣悪な画質のテレビに映るNHK。そして昼の1時なのに先客も後客も一人もいないという繁盛具合。
牛丼ってご飯に煮込んだ牛肉盛るだけだからさ、それはもうあっという間に出てきたんだよね。松屋とかと同じくらいのスピードね。でもその速さって言うのがさ、何て言うのかな、語弊があるかもしれないけど「カジュアル」じゃないんだよな。一般的な牛丼チェーンに働いてる人の殆どが若い人なのに比べて、今目の前でご飯に牛の煮込みを盛ってるのがおじいちゃんだから、とかそういう表層的なものじゃなくて、もっと根本的な何かなんだよね。店が汚いとかそういうのもあくまで副次的なモノに過ぎない、「何か」
で、出て来た牛丼を食ってみたんだけど、これが思いのほか、いや、と言うより「とても」旨いんだよ。これで350円はコストパフォーマンス良すぎ!ってくらいにね。でも何だかそれが逆に心を締め付ける原因になっちゃうんだな。おじいちゃんの顔とか見てるとなおさらね。
んで、お金を払って出ようと思ったら壁に証券が額縁に入ってるのを見つけたんだ。ほう、どこの証券だ?と思ってみたらそりゃもう見事に「ライブドア」って書いてあるじゃないですか。なんかさー、もう期待通りって言うか。面目躍如って言うか。適材適所っていうか。おじいちゃん、そこの曇った額縁の中の紙、今いくらになってるのか知ってるかい?俺の口からは言えないよ。
で、店を出てうだるような熱気の中に身を委ねたら、天真爛漫な笑みを浮かべて走り回る夏休みの子供と、浴衣をばっちり着込んでウキウキの女の子が視界に飛び込んできました。その絶対的な対比。ああ、夏って残酷だ。そして俺はきっと今のところ被害者だ。そこのあなたもきっと被害者であり、きっと加害者だよ。
だから俺は抗うよ。被害者になるなら、加害者として後ろ指刺されたほうが何ぼかマシ。今の俺はそう思ってるよ。

そこのあなたは誰のために浴衣を着ますか?