デス・プルーフ in グラインドハウス

※まず最初に、がっちょりネタバレを含んでいます。これから見ようとしてる方は絶対に読まない方がいいです。




えー、見てきましたクエンティン・タランティーノの新作「デス・プルーフ」@新宿武蔵野館。とりあえず何はともあれ、ラストシーンに大爆笑。もう腹抱えて大爆笑。スタイリッシュなエンドクレジットが流れてる間中、ずっと笑ってた。俺が観た回の観客は全部で50人くらいだったと思うのだけど、劇中の笑えるシーンに比較的冷ややかだったにもかかわらず、最後の「THE END」ばば〜ん!だけは全員大笑い。オチっていろんな形があるけど、タランティーノはこうきたかwwwっていう
この作品の前半ってホラー映画的な楽しさがあると思うんだよね。ただし、あくまでシャープでカラッとしたポジティヴな楽しさ。なんと言うか、ホラー映画の「日常を不条理に踏み躙られる恐怖感と快感」が詰まってる。かなり長い間繰り返される女の子達の会話。タランティーノ作品らしいベラベラと繰り返される会話。見方によっては冗長だな〜と思われるくらいの、「誰かの日常」が描かれる。最初に描かれるのは乱痴気騒ぎが好きな女の子たち。そして多分多くの人達にとっては、「なんかちょっとむかつくwww」と思っちゃう日常。「6分だけいいから車の中でやらせて!!」を受け入れちゃうかる〜い子、自分のセクシーな肢体に自信満々の地元の人気女性ラジオDJ。散々もったいぶってからエロエロのラップダンスを披露する女の子(正直このシーンは体のある一部がかなり反応したwwぽっこりお腹最高)。
そして、そんな前半で散々引っ張りまくった女の子たちの酒池肉林な楽しい時間を、満を持してズッタズタに蹂躙するカタルシスタランティーノの映画ってこの「両極端な振り幅で捻出するカタルシス」を散見するけど(っていうかほぼそれしかないけどw)、この作品もまさにその面目躍如。丁度「なんか一人で調子こいてるヤツ」とか「仲間と離れてこっそり暗がりでセックスしてるバカップル」が真っ先に殺される役を頂戴するっていう、ホラー映画の黄金律のような、「ああ、やっぱこいつ殺されるよなww待ってました!」っていう盛り上がり。セックス真っ最中のカップルの頭が斧でざっくり割られるのって、「ぎゃああああ!!」っていう恐怖感と同時に、やっぱり「うっひょおおお!!きたああ!!!」っていう快感も確実に得られるじゃん。それと同じ感じだね。
で、その導入も最高。多分30分近くその女の子達の「他人の日常」が描かれて「で、いつカーアクション出てくんの?まだ?」って思っていた所で、ようやくカート・ラッセルが車に乗り込むシーンになるのだけど、そこで「お・ま・た・せ!」みたいな感じでカメラ目線でニッコリするんだ。それが合図で、その後は阿鼻叫喚の殺人カーの本領発揮。明らかに声のトーンが変わって「怖い人」に豹変するカート・ラッセッルと暴走する車。で、まんまと助手席という死刑台に乗せられてしまった女の子の恐怖に満ちた顔と涙と、その表情を無慈悲にぶっ壊す急ブレーキ。顔半分がぐっちゃぐちゃになって息絶える女の子。グロい!!!怖すぎる!!っていう恐怖感と、今までの日常をいきなりぶっ壊しちゃう快感と、カートラッセルの「お・ま・た・せ!」から一連の流れのクールなかっこよさが渾然一体となる、訳分からんけど盛り上がりまくってしまうシーン。
その後、本来のターゲットだった女の子たちを暗がりで待ち伏せして車で正面衝突する、という派手にも程がある殺人を遂行するのだけど、そこで女の子の一人が窓から脚を出して乗ってるんだ。もうこの時点で「ぎゃあああ!!だめー!!!せめて脚引っ込めてぇぇぇぇ!!!」って俺の中では大盛り上がりww「早く気付いてぇぇぇ!避けて避けてぇぇ!」って思うのだけど、まんまと正面衝突されて全員ぐっちゃぐちゃ。で、案の定、女の子の脚だけがぶっ飛んで道路にごろーん。ぎゃあああああ!!!!!(見てる途中で「何でこれR-15なんだ?さっきのラップダンスがエロ過ぎたから?」なんて思っていたのだけど、ここで納得w)
「恐怖を感じた時にしか分泌されないアドレナリンを得る為に人はホラー映画を見てしまう」っていう説があるらしいけど、多分それは正しいんだと思う。この作品の場合はそのホラー的なアドレナリンと、今までまったりと動いていた時間の流れが急展開するアドレナリンという色んなアドレナリンが分泌されちゃうんだろうね。そういうアドレナリンの出させ方を熟知してるのが、タランティーノの最大の才能なんだと思う。
そして物語の後半。前半が夜の世界だとしたら、こっちは昼の世界。またしても女の子たちの日常がだら〜んと垂れ流される。で、ここで個人的にめちゃくちゃ盛り上がったのが、その中の一人のメアリー・エリザベス・ウィンステッドの尋常じゃない可愛さ。しかもチアガールのコスプレしてんだよ?タランティーノめ!やりやがったな!俺が浴衣とメイドとチアガールに弱いって事を知っての事か!!しかしホントに可愛かった。ファイナル・デッドコースターとか観るしかないな、これは。
で、後半も同様に女の子たちのなが〜い会話で彼女達のキャラ付けをしっかり作るのだけど、重要なのはその女の子のうち二人がガチのカーマニアであるということ。(で、その子たちの話に置いていかれてキョトーンとするメアリー・エリザベス・ウィンステッドの可愛さといったら!)車のボンネットに乗って爆走するのが大好きという変態カーマニア。もうその設定の時点で、殺人カーマニアカート・ラッセルとの一騎打ち期待するじゃん。
で、物凄く分かりやすく、当然の如く、ハイライトのその2台のカーチェイスになるとw(そういう「分かりやすさ」がタランティーノの真骨頂だな)で、そこからはホラーよりも純然たる「カーアクション・ムービー」に。
ここで最初は殺人鬼カートラッセルに女の子たちが殺されそうになって、前半と同じ結果に向かってるのか・・・・などと思うのだけど、ここからが本番。ガンガン車をぶつけられて殺されそうになった女の子たちに向かって「ヘッヘーイ!楽しかったぜ〜!」などと余裕をぶっこく殺人者が、女の子が放った銃弾を肩に受けた瞬間、いきなり泣き叫ぶ子供の様に情けない姿になり、そこから女の子のリベンジ開始!!もうその分かりやすい勧善懲悪・復讐劇の図式。最高すぎる。
で、しょぼくれた泣き言を吐きながら逃げ惑うカートラッセルの車を転覆させて、肩が折れた〜〜って泣き叫ぶカートラッセルを無理やり引っ張り出して、ついにラストシーン。
もうね、「カート・ラッセルが女の子たちにフルボッコにされる」って画だけで笑えて仕方ないのに、今までやりたい放題やってきた殺人鬼がボコボコにされてる、っていうその爽快感もたっぷりに含んだ素晴らしいシーン。で、トドメの回し蹴りがヒットしてばた〜んと倒れるカートラッセルと、女の子たちの「イエ〜〜イ!!」、そして!!!
「THE END」ばば〜ん!!!!
もう最高すぎるだろwwwwwその色々積もりに積もった色んな要素を最後に大爆発させるカタルシスと、最後の最後にそれを完結させる「THE END」の文字。フォントも、チープなスーパーインポーズの出方も、そしてそのタイミングも、本当に完璧。だって今思い出しただけでも笑えて仕方ないもん。多分、未見の人がこういう演出だって分かってて観ても絶対に笑うと思う。それほどの最強のラストだね。


という訳で、映画のすっきりとしたレビューじゃなくて、こんなシーンあったよな〜、あれ面白かったな〜っていう恐ろしくパーソナルな文章になっちゃったけど、そうやって反復したくなる映画なんだから仕方ないよね。
まあ纏めるとすれば、前半と後半で大まかなプロットは同じなのだけど、夜の重厚な雰囲気と昼のカラッとした雰囲気の対比の見事さと、前半と後半でオチがすり替わる事で得られる爽快感と、THE ENDばばーんという見事なオチが素晴らしい映画って事だね。本当に楽しかった。ここまでネタバレしといてなんだけど、未見の人は是非観に行ってくださいな。