【レビュー】第26節 鹿島戦@鹿島スタジアム

鹿島アントラーズ 3-1 アルビレックス新潟
さーて、どうしようか。負のスパイラルが止まってくれない。この試合で勝ち点3を逃しただけでなく、マルシオは出場停止になり、永田は故障してしまった。悪いことは続くもの、ってのはこの世の常だけど、ここまで続いてしまうとは。さーて、どうしようか。
この試合の立ち上がりは新潟のペースだった。この試合で最大の注目点であった、右サイドバックに入った光が積極的に前線で絡み、内田が見せていたようなマルシオとのコンビでサイドでの起点を作る。そんな感じで積極的に攻勢を仕掛けた結果、鹿島のディフェンスは浮き足立ち、マークをちょこちょこ離すようなシーンが観られるようになる。
そして、そんな流れを見逃さなかった貴章の素晴らしい仕掛けが、本当に本当に素晴らしいゴールを生む事になった。ハーフウェーラインで縦のボールを受けた貴章は、鹿島のDFのポジショニングの隙を狙って彼らしい素晴らしいドリブルを開始。そしてスタートでは対等に走っていた岩政をその長いストライドと上半身の使い方、そして圧倒的なスピードでぶっちぎる。で、ここで素晴らしかったのはいつものようにサイドへ流れるドリブルの軌道ではなく、ゴールへ直結する軌道を狙っていたという事。貴章にとって、比較的プレシャーの緩いサイドをグリグリえぐるのは容易な事になりつつある。だから次向かうべきステージは、そのドリブルのセンスとスピードを、ゴールへ直結させるために活用するって事。その片鱗をしっかりと見せてくれた素晴らしいゴールだった。これで7ゴール。10ゴールなんて言わずにもっともっと狙ってくれ。
で、その素晴らしいゴールの後数分間も新潟のぺースで進む。しかし、ここで次第に浮き彫りになったのは新潟の守備陣の帰陣の遅さ。鹿島ボールに切り替わった瞬間、まず鹿島の攻撃の組み立ての上手さもあって中盤でのプレッシングが掛からない。そしてその状況から鹿島がフィニッシュに向かい始める瞬間、DFラインのポジショニングを修正する暇がなく、鹿島の攻撃に曝されるという危険な状況が見られるようになった。そして、その流れを修正できないまま同点弾が生まれる。
速攻からの新井場のクロスに鹿島のアタッカーはセンターに3人に揃っていた。その3人に対して新潟の守備陣が集中した瞬間、ファーには3列目から飛び出してきた小笠原が余って完全にフリーに。彼にそんなスペースと余裕を与えたら殺傷能力の高いパスが飛んでくるのは当然で、あっけなく同点。プレビューで言及したような、鹿島の攻撃の恐ろしさをものの見事に見せ付けられてしまった。
結局、その後もその同点ゴールと同様の問題点を新潟の守備陣は抱えたまま試合が進んでしまった。帰陣の遅さ、中盤でのプレスの甘さ、クロスが上がった後のポジショニングのマズさとマーキングの曖昧さ、その結果下がるライン。逆転ゴールも結局このクロスに対してのリスクマネージメントの拙さから。確かに田代のあのヘッドはめちゃくちゃ上手かった。光は恐らくあそこまで体勢を崩させた時点で勝ちだと思ったと思う。俺もあのクロスの瞬間は光の勝ち!と思った。でも、田代はボールを逸らせてあくまで狡猾にゴールを狙ってた。そこの甘さは反省しなくちゃいけない。相手もうまい。でもそれに感心してるようじゃ進歩はない。
ただ、前半に関して言えば攻撃面では悪くなかった。特に貴章が鹿島のCBとボランチの間でキッチリとボールを受けるというタスクを遂行し、光も前半立ち上がりのような攻め上がりと起点作りを見せていたし、ちょこちょこスペースを作る鹿島のサイドに坂本が上手く入り込むって言うシーンも見られたし、シルビーニョもそういう状況をしっかりと把握したパス回しを見せていたしね。
だから、勝負は後半の次の1点だったと思うのだけど、その1点を取れないのが今の新潟で、その1点を取れるのが鹿島の実力って事なんだろう。しかも、その1点はDFのセルフジャッジからという最悪の形。マルキーニョスが倒されて一瞬動きの止まる新潟のDF。しかしそれは笛が吹かれずに流され、ボールが野沢に簡単に渡って3点目。あれはサイドから入ってくる選手に対して一枚余ってた松尾がケアをしっかししなくちゃいけないシーンだった。前節に続いての、DFが絶対やっちゃいけないミス。猛省を促したい。
で、3点目を奪ったことで鹿島は混乱する事無くゲームを進める事になってしまった。そうするとここ数試合の流れと同じく、運動量が別段落ちたわけではないのだけど、ぴったり守る相手に対してトップへのボールが工夫と精度を欠き、トップでボールが収まる事無く簡単にボールロストしてしまい流れを引き寄せる事ができないという悪循環が続く。淳さんも早めに深井→河原という選択をしたけど、状況は変わらず。後半になって工夫と連動性を欠くというこの数試合で見せている悪癖はちょっと根が深そうだ。
で、攻撃的な交代策を打とうにも、ベンチを見ると松下くらいしかいないという状況。その松下の投入もかなり早い段階で行われたのだけど、結局奏功せず。はっきりと、駒数の足りなさを痛感した瞬間だった。
で、最後は奥谷の良く分からんジャッジの連発と鹿島のブーイング大好きなアレなゴール裏からのしんぱんしんぱんへったくそのシュプレヒコールの中、ぐだぐだと試合終了。は〜。




きっかけだ。今欲しいのは何らかのきっかけ。ちょっと歴史を紐解いてみよう。去年はアトムトップ下の4-2-3-1でその状況を打破した。05年は船越のトップ起用とリマのスーパーなフリーキックで川崎を破って嫌な流れを断ち切った。04年は言うまでもなくオゼアスの加入による化学変化。03年は第4クールでの上野優作の覚醒、などなど・・・。
だから、やっぱり人なんだよな。誰かがやるしかないんだよ。それは今まで出場機会に恵まれなかった選手の場合もあるし、レギュラー選手の覚醒って場合もある。それが、今は誰なのか。今年の前半戦で言えば千葉ちゃんがそうだったけど、この状況で、誰が出てくるか。だから、逆に言えば全ての選手にとってチャンスなんだよ。この状況を打ち破れるだけの存在感を出せれば、このチームはその選手自身の肩に委ねられる事になるんだから。サッカー選手として、そんな幸せなことはないだろう?
とりあえず、今日の試合を観る限りは俺は貴章に期待したい。03年の優作さんの様な覚醒の匂いをしっかりと見せてくれたしね。だからもう一度言う。10ゴールなんてぬるい。もっともっと取れるだけ取ってくれ。そのゴールが、チームを救う事になるんだから。