【レビュー】08年第7節 京都戦@スワン

アルビレックス新潟 1-0 京都サンガ
スタッツ


この試合はこれでいーのいーのブライアン・イーノ
・・・・という三日月しずかの名言を試合後思い出した。まあこれについてはまた後ほど。


この試合の立ち上がりは新潟ペース。それを作り出していたのは、新潟が京都に対して用意してきた守備メソッドと、ダヴィと松下の両サイドハーフの動きの素晴らしさだった。新潟は京都の4-3-3というシステムに対して、まず3トップはセンターに入った選手をセンターバックが、両サイドは両サイドバックがしっかりマーク。そしてサイドバックに対しては上がり目の位置を取り始めた時点で、サイドハーフがDFライン付近まで下がってケアしていくという形。これが見事にはまってボールの奪いどころがはっきりした事で、新潟の奪ってからの攻撃が非常に活性化する。
それと同時に今日は新潟のボランチもかなり積極的だったこともあり、京都の逆三角形の中盤の前二人=佐藤勇人と中山が中へと絞らざるを得なかった事で、4-3-3というシステムの構造上の弱点であるサイドバックと両ウイングの間のスペースがぽっかり空くシーンが目立って、新潟の両サイドハーフが自由を謳歌する事になる。
特に今日出色だったのは松下。とにかく開始早々から積極的にボールを受け、ボールを引き出すフリーランイングを見せまくる。そしてやっと新潟のサッカーの中で自分がどんな仕事をすればいいのか分かり始めたアレッサンドロとのコンビは抜群で、前半の新潟のリズムを牽引する事になった。
開始早々の先制点もこの二人から。中盤の高い位置でボールを奪い、アレッサンドロがキープすると真っ先に左のスペースに走りこんだ松下にパスが通り、そこからクロス→アレのヘッドドカン。見事。
しかしガンバ戦でのゴールもそうだけど、クロスに対して一旦引いた位置から虎視眈々と「その時」を狙い、一番いい所ですっと入ってきてゴールを掠め取るってのはまさに「典型的な9番」らしいプレーだよね。この試合では今まで一番と言っていいくらい、攻撃に切り替わった時の判断スピードも速かったし、マルシオも戻ってきたし、こっからが真価の見せ時だぜ、アレ。
で、25分くらいまではずっと続いてた新潟ペースも、京都の中盤のポジション修正や3トップのポジションチェンジで流れを引き戻すと随分落ち着いたものになり、イーブンな状況が続く。で、そこを動かすのはどういうプレーになるだろうと思ってた所で、試合を動かしたのは審判のジャッジだった。
一枚カードを貰ってたシジクレイが、貴章との走りあいの際に手でチャージングしたという判断で2枚目のカード。現地で見てたときは良く分からなかったけど、後で録画したの見直したらこれは明らかにミスジャッジだろう。ファウル自体も微妙だったし、少なくとも1枚貰ってる選手にカード出すようなファウルでは到底ない。
で、それで数的優位になった新潟だけど、その後の2度の決定的なチャンスを外して微妙な空気のまま後半を迎える事になる。ていうかアレのあれは決めてくれよ・・・・。平井の相変わらず微妙な飛び出しを狡猾に突いた松尾のクロスもアレの動き出しも完璧だったのに。



で、後半京都は林に変えて平島を入れて、中谷・森岡・増嶋の3バックに、右サイドバックで先発の渡邊大剛を左のワイド、平島を右のワイド、勇人とアタリバがセンターで、田原と中山が前で構えると言う3-4-2のような形に変更。そしてその変更が新潟を狂わせる事になった。
京都が3バックに変更した事、そしてそのラインをかなり積極的に上げてきた事で、明らかに前半には見られなかったスペースがちょこちょこ生まれる事になる。ただ、それが逆に新潟のリズムを崩す事になったといっていいと思う。というのも、特に2トップがそのスペースを安直に狙いすぎて、前への性急な展開に終始してしまったことで、前半見せていたトップへボールが収まってからの両サイドハーフサイドバックの駆け上がりが引き出されると言うプレーが影を潜めてしまった。
その結果どんどん乖離するトップの中盤以降。その「攻守の意識の齟齬」が後半の流れの停滞の最大の原因だったのだと思う。
しかもいい流れを作り出す最大の功労者であった松下は相手と衝突して途中交代しちゃうし、マルシオの投入もリズムを激変させるには至らなかったし。(でもあの右からのFKの弾道は凄かった。ああいう球種を蹴れるのはマルシオしかいないだろうな。いいよいいよー)
で、そうすると後は残り少なくなってきたこの試合をどうやって終わらせるか、ってのが重要だったのだけど、それは2つのレッドカードによってもたらされることに。
まずアタリバの一発レッドは文句なしに妥当なジャッジだったと思う。俺はバックスタンド側で目の前で見てたけど、審判が目の前にいるのに意図的にがっつーんと肘使っちゃったらな。やるならもう少しうまいことやればいいのに。あんなにあからさまにやっちゃうなんて本当にブラジル人?
それとまっすうの2枚目だけど、これは正直微妙かも。ただ、アタリバの退場直後でギスギスした雰囲気の中で、1枚目のカードを貰ったのと同じようなチャージしちゃうのは余りにリスキーだったとも言える。変な話、シジクレイだったら絶対にやらないプレーだろう。しかしまっすうは何でこんなに新潟に優しいんだ。天敵のエジがいない今年でもこれだもの。



で、これで11対8と言う異常な状況に。ただ、それがまた後半の新潟が苛まれていた「攻守の意識の齟齬」を明らかにさせる事になった。どっちつかずの半端なパス交換と、その結果生まれる何の意味もないオフサイド。で、京都の反撃を許す。
だから、ロスタイムに入ったあたりで攻撃を諦めてキープに入るということを、チーム全体の意思としてやっと統一できたのは良かったんだよ。それに3日目にはそこが曖昧になって凄惨な同点弾を叩き込まれたチームなんだから、慎重に終わらせるのは当然なんだよ。なんせロングボールの処理をCBとGKが見誤ってマヌケな失点をした次の試合で、メンバーを変えたのにほぼ同じような形で失点を食らっちゃうような、負の流れを経験したチームだからな。その流れを断ち切るには、勝利と言う具体的な結果を手に入れるしかないんだよ。
確かに11対8なのに得点決めて勝負を決めてしまえなかったのに不満を感じるのも分かるよ。でもこの試合で必要なのはどう考えても勝つことでしょ。シーズン始まって10試合全く勝ってなかったんだぜ。リーグ戦では最下位だったんだぜ。で、確実に調子が上向いてきたのに3試合連続で引き分けと言う結果で、前の試合なんて最後の最後で勝利を逃しちゃったんだ。その掴みかけた「いい流れ」を昇華させるのは、やっぱり勝利しかないんだよ。
それにサッカーってそんな単純な数字の増減で議論できるものじゃないと思うんだよ。2006年ワールドカップの予選リーグで、アメリカに圧倒的に攻められてたイタリアが退場者を出して一人減った事で、逆にアメリカの混乱が生じて、イタリアが試合を制圧して最終的には圧勝しちゃったみたいなケースだってある。それに11対8という状況でも、一つのアクシデンタルなプレーで全てひっくり返っちゃう事だってある。ましてや今日は雨だ。元々芝が長めのスワンのピッチで雨ってのは少ないかもしれないけど、確実なリスクを孕んでるんだよ。
そもそも11対8なんて異常な状況になったら、どう転んだって糞ゲームになることは約束されてんだから、華麗なサッカーで勝利する試合なんてまた別の試合に期待すればいいんだよ。まだまだ試合は30試合近く残ってるんだし。そしてその華麗な勝利を収めるために、確実に武器を揃えてる時期なんだから、今日は狡猾に、セコく、勝ち点3を手に入れるのを許容してやるべきなんだよ。選手だってこの泥沼を抜け出すために必死なんだから。
それだけにやっぱり、俺個人としては、最後に起きたブーイングは残念だった。状況を理解してるなら、あんなブーイングするよりも声援なり拍手なり送るべきだと思うよ。
だからこの試合は、これでいーのいーのブライアン・イーノ、って事になるんだ・・・って一番いいところダジャレで締めるなよw人生最大の危機を「ミニにタコ」というダジャレで乗り切ろうとした某氏みたいじゃないか。



と言う訳で、この試合でやっと勝利を手に入れることが出来た。そして前半の的確な守備とそこからの攻撃の流動性。アレッサンドロが一つのピースとして動き、かつ最も求められるゴールという結果と自信を手に入れ始めたと言う事。そしてマルシオの本格的な復帰。そういったポジティヴな要素も含め、ここからが反撃の時だ。
まずは次の札幌戦、絶対に勝とう。確実な勝利を収めよう。新潟と言うチームの真価を見せるのはこっからなんだよ。



あ、そうそう最後に。試合前の亀田製菓プレゼンツの映像、素晴らしかったな。不覚にも若干ウルウルしちゃったぜ。あの京都戦から7年も経って、また京都戦を迎えたこのタイミングであれだもの。こんにゃろ!おっぱい!