【レビュー】09年ナビスコカップ予選第1節 大宮戦@795

大宮アルディージャ 2-1 アルビレックス新潟
スタッツ
この試合に関しては勲がモバアルに出してるコメントがすべてだね。特に「サッカーは点を取るゲーム。内容がいいだけでは勝てない」ってライン。まさにそういう試合だった。


この試合は貴章が代表、うっちーが怪我、そしてペドロは前所属チームが珍しく知恵を働かせたことにより欠場、って事でスタメンに注目されたんだけどこのスタートの新潟のメンバーは4-4-2で、4バックは右サイドバックにゴートク、ボランチが千葉ちゃんと勲、サイドハーフは右がマルシオ・左が松下、2トップはオオシとアトム。たぶん、この試合の可能性としてはこれまでの4-3-3の右サイドバックにゴートク、アトムとヨンチョルを両ウイングって手もあったと思うんだけど、それをスタートからやらなかったのと淳さんのいう「使ってみたい選手がいた」って話に照らし合わせると、多分千葉ちゃんありきの4-4-2だったんだろうね。
対する大宮はこれまでのメンバーと、右サイドバックに土岐田、右サイドハーフに渡部、トップに石原って所以外は同じ。
立ち上がりからどっちのチームもいまいち噛み合わないシーンが散見する。新潟はオオシが最前線で体を張ってボールを受けて攻撃を組み立てていくという意図は見えるのだけど、いかんせん周りのフォローが遅い。その仕事が期待されたアトムは、イマイチやるべき仕事が明確になってなかった感じで、ちょっと空回り気味。
ただ、前半の停滞の一番の原因になってたのはオオシを後ろからフォローする中盤の押し上げの遅さ・不十分さだったと思う。結局、去年一年を通しての課題だった「中盤の真ん中での押し上げやキープ等の、センターで起点を作るというプレーの欠如」っていう悪癖がまた出てしまったような印象。特に千葉ちゃんと勲の仕事がすごく曖昧で、二人とも前をフォローするっていうプレーがなかなか繰り出せない。
となるとサイドハーフの両翼がサイドバックと絡んでサイドアタックを仕掛けるっていう去年で一番の武器を繰り出したい所。それに前半の新潟は、ゴールキックでは徹底的にオオシが右に流れて北野のキックを受けるってシーンでもわかるとおり(北野が真ん中に蹴っちゃった時に永田さんがジェスチャーで「サイドにサイドに!」ってやってたな)、ど真ん中にそびえ立つマトを外した攻撃を標榜してたしね。
しかし右サイドに関して言うと、前半のゴートクはほとんど効果的に前と絡んでいくプレーが出せないので、右は機能不全に陥り続ける。後述するけど、ゴートクは後半良かったんだよね。チームの流れも良くなってパスが回るようになってたし。
ただ、うっちーはチームの流れが悪かろうが良かろうがサイドで起点を作れる選手。この試合でのゴートクはまだまだそれには及んでいなかったって事だと思う。これに関しては、ゴートクもかなり悔やんでるコメントを出してるけど、後半は前と絡んで結構いいプレーが出来てたんだから、あの感覚を脳裏に焼き付けて是非とも頑張ってほしい。まだ18歳だけど、あのプレーの基本水準の高さは並のものじゃないんだから、磨けばめちゃくちゃ輝くはずだからね。がんばれゴートク。
しかし反対に左サイドはなかなかの攻撃力を見せる。前半の新潟の攻撃を支えていたのは間違いなく左のジウトン、松下、そして左に流れてきたアトムの3枚で繰り出すサイドアタックだった。特にジウトンはまさに槍って感じで、グングン前に絡んで裏をぶち抜いてクロスを上げ、その結果CKをむしり取ることに成功する。まあ、これは急増SBである土岐田の守備の拙さもあるんだけどね。彼はまだサイドバックとしての守備を理解してるとは言い難い。


すると12分。今日この試合でCKのキッカーを務めてたアトムのキックからオオシの決定的なヘッドを放つというシーンが生まれる。しかしこれは高木がナイスセーブ。その後もCKが続きチャンスを迎えるも、決定的なシーンはそのへッドくらい。

その新潟のいい時間が過ぎると、このあたりで目立ってきたのは、新潟の中盤でのボールロストから、大宮の2トップ=石原と市川にズダーンと前に走られてしまうってシーン。これは永田さんと千代のコンビの盤石さもあって、相手にフィニッシュで終わる形をなかなか作らせなかったんだけど、やっぱり歪な印象が拭えなかった前半の組織のちょっち脆弱な部分が出てしまった時間帯だと思う。


23分。その若干の大宮ペースに乗ってクロスを渡部がヘッドを放つもクロスバー。直後のシーンでの大宮のCK。そのボールは誰よりも高くにゅるっと伸びたマトの頭に合って失点を食らう。あれはもっと警戒しなくちゃいけないシーンだった。

この辺から段々と強くなってくる雨。もはや一瞬滝のような雨。さみー。そしてまたしても両チームともすごく微妙なサッカーに終始する展開のまま雨が止むと同時に前半終了。



そして後半。両チームとも交代はないものの、新潟は目に見えて分かる変化が。前半のアトムがトップ、マルシオが右サイドハーフから、アトムが右サイドハーフ、マルシオがトップに変更。結果的には、これがこの試合の後半の新潟のペースを急激に作り出すことになる。
で、この交代でまず変わったのは、マルシオの存在によって前半の課題であった「中盤の真ん中での押し上げやキープ等の、センターで起点を作るというプレーの欠如」ってのが消える。彼が見事なテクニックと献身性と的確なポジショニングでボールを触るシーンが増えると、一気に前線のオオシと中盤とのパイプが出来上がる。これは淳さん名采配だったと思う。そしてやっぱマルシオは改めて凄い。本当に圧倒的なこのチームの皇帝だ。
で、こうなると一気にオオシの本領発揮。もう相手がマトだろうが、冨田だろうが、サイドバックだろうが、相手が何人束になろうが関係なし。彼に入ってくるボールは信じられないような柔軟さで彼の体にすっぽりと収まり、そこから実に的確なタイミングでボールが配給される。上手い。とにかく上手い。畳屋が見事な畳を仕上げるように、陶芸家がろくろを回して美しい陶器の曲線を生み出すように、寿司屋が完璧な歯ごたえのシャリを握るように、ポストプレイヤーポストプレーをしてる、という感じ。なんだか陳腐な響きになってしまいそうだけど、まさに「職人芸」というやつだ。その道を極めてここまで戦ってきた男の仕事だ。
この試合での新潟のMOM、そして新潟にとって最大の収穫もオオシだったと思う。ここまでの3試合でシンプルに叩くことが多かったので、そこまで彼のポストプレー/キープ力を堪能するシーンがなかったけど、あれは彼がそれを「出来ない」んじゃなくて「やらなくてよかった」だけなんだよね。だって両翼のペドロと貴章、そしてセンターハーフ2枚が起点と前への推進力になってくれるから、あとはシンプルに叩くだけでよかったし、そもそも速攻の展開が多かったので彼が時間をかけたキープ力を発揮する必要がなかったんだよね。
でも、今日は彼が中心となってじっくり攻めたりキープ力を発揮して起点になるプレーが何度も見られた。これは先日の大分戦で露見した「クローズな展開で速効が繰り出せない時にどうするか」の大きなヒントになるだろうね。改めて、オオシがウチの選手であるという事実に喜びを感じる試合だ。


で、そうなると前半は仕事が曖昧だった勲と千葉ちゃんのボランチ二人もすごくいい仕事をするように。千葉ちゃんは前でボールを散らし、勲は相変わらずの危機察知能力とバランス感覚で中盤の底に、新潟にとっては安定感、相手にとっては閉塞感を与えることになる。やっぱ今年の勲すげーよ。
そしてそれに呼応して右サイドのアトム&ゴートクがボールに絡む意識が上がって右の攻撃が復活。そして左もジウトンが細々としたミスはあるものの、ここぞって言う時の前へのプレーは相手にとっての脅威になる。この両翼の復活と、真ん中を経由した左右への散らしが増えてくると完全に新潟ペースへと移行していく。
そんな中、そのジウトンがサイドチェンジをスピードに乗って受けるところで渡部がレイト気味にタックルかましてイエロー。FKを得る。そしてそのFKをキーパーの高木がパンチングした落下点に待ち構えていたのはジウトン!!!で、それを難なくループ気味にゴールへと流しこんで同点。バースデイゴール20歳おめでとう。1-1に追いつく。
するとこれを見て淳さんがすかさず動く。千葉ちゃんに変えてヨンチョル投入で、右にアトム・左にヨンチョル、そしてもちろんセンターオオシの4-3-3に移行。わーお!!はっきりと明確に逆転ゴール奪いに行く交替策だぜ。今年初めてビハインドからの采配だけど、今年の淳さんはなかなか攻撃的なようだ。そして恐らく、この並びの4-3-3って淳さんがスタートの4-4-2と天秤にかけて後に取っておくオプションに選んだ形なんだろうね。
するともう完全に新潟ペース。ヨンチョルが左サイドでテクニックとドリブルでの仕掛けで起点となって、相手のきっちり糞真面目にゾーンとラインを作る守備を崩しにかかり、同時にジウトンの上がりを誘発していく。何か、やっとヨンチョルの本領の一端を見せてくれた感じだね。
そしてセンターハーフという今年の定位置に戻った松下とマルシオも物凄く元気に。今日絶好調のオオシがいるので彼をターゲットにその二人が前を向けるシーンが頻発する。で、アトムもその中盤と絡んでオオシへの決定的なクロスやシュートを放つ。まさに新潟の目指すアグレッシヴなサッカーで相手を圧倒。
ただ、これは淳さんも試合後の反省点として語ってるけど、それだけ流麗にボールが流れてペースを握るものの、PAに侵入するための最後の一手のプレーが雑になってしまうシーンが多く、あれだけペースを握ったのに、それに比例するだけの決定機を作り出す事が出来なかった。特にわんちゃんがボールが足についてないシーンが目立ったけど、あれはさっきの大雨の影響もあったのかもね。


そんな流れの中、大宮が動く。61分に新井→藤本。68分に市川→藤田。このレギュラーの投入で流れが若干変わっていく。基本的には新潟ペースっていうのは変わらないし、実際CKから永田さんが折り返して千代がヘッドを放つもわずかにゴールの上(あれ叩きつけられれば確実に逆転ゴールだったな)とかそういうチャンスも作ってたんだけど、藤本と藤田の2人が特に左で起点となって、新潟の右サイドをちょっと押し込む展開が増え、またそこを起点としてサイドチェンジを繰り返してクロスを上げるシーンが散見する。
で、82分。そのシーンはあまりに唐突に訪れる。右からのクロスにファーで藤田がヘッドで石原に落とす。普通に考えれば千代を背負いながらそのボールに足出してトラップする所だろうけど、それをトラップせずにそのまんま空中で反転しながらボレーをかますと、完全に虚を突かれた千代と北野の横をするっとボールが走ってゴール隅へと吸い込まれていく。うっそー。

その後87分にケンゴをアトムに変えて投入して、そのまんま右ウイングに入ったりという交替策があって、CKから決定的な形を作ったりもするのだけど、どうしても1点が遠く試合終了。



しかし目標は変わってない。ナビスコ予選突破するためにはポイント12が必要。あと4つ勝てばいいだけの話だ。今はつべこべ言わずに目の前の磐田戦に注力するだけ。とにかくそこを絶対にモノにすべく、選手は皆いい準備をしてくれい。頼むぜ!!!!!!!!!!!ぜってーナビスコ予選突破、そしてその先行くぞ!!!