【レビュー】09年第14節 ガンバ戦@万博

ガンバ大阪 0-2 アルビレックス新潟
スタッツ
鈴木淳監督 試合後コメント

俺はこの前の大分戦のレビューで、ナビスコの惨敗が今の自分たちの実力なのか、って事に関して「モチベーションという要素を議論の俎上に載せる余地が一切ないリーグ戦が再開して初めて判断できるものだと思う」って書いたんだけど、やっぱモチベーションだったんじゃないだろうかっていうwwなんでこれがナビスコでできねーかなぁ。全く。



試合の立ち上がり、ガンバがギアを上げて攻め込む。これで新潟は連続でCKを献上することになるのだけど、この試合を通してセットプレーの守備がかなりヤバイ。これ、この試合の最大の課題だからこういうファインゲームのレビューだからこそ、最初に言及しようと思うんだけど、これだけは絶対に早急に修正しなくてはならないと思う。
というか、新潟のセットプレーって貴章がGKの前の位置でゾーンで守って、それ以外の選手がマンマークにつくってのが基本中の基本の約束事なんだよね?これまでずーっとそうだったし。それが「あれ?違うの?」って迷ってしまうくらいにこの試合ではそれがブレまくり。開始3分でルーカスに完全にフリーで抜け出されてニアでヘッドを許したシーンがあったけど、多分あれ本来マークしなくちゃいけなかったのは松尾だと思うんだよね。ああいう単純なミスが生まれるのは絶対に看過してはならないし、そもそもこの試合ではマンマークで付いているにもかかわらず、その責任を全うするという意識が希薄すぎたと思う。
これ、千葉戦とかでもそうだったんだけど、マンマークで付いていながら相手に先に触られるシーンが今年は多すぎる。これはこのチームの個々の選手の守備面でのスキルを考えれば、集中力と意識さえ持っていれば防げるんだから、その責任はしっかり考えてほしい。だってさ、浦和戦では出来てたじゃん。最後の最後は坪井の老獪さに屈したけど、それ以外ではこういう単純なミスなかったでしょ。出来るんだよ。出来るならちゃんとやろうぜ。
それと後半に二つ北野が飛び出したのに触れずに、いずれも超決定的なヘッドを許したシーンがあったけど、あれは猛省しなくてはならないと思う。大体、それとまったく同じミスで千葉戦ではボスナーにヘッドを許して失点したって言う前科があるのだから、それを繰り返すのは絶対にやってはいけないと思う。
セットプレーって、それまでどんなにいい準備して、戦術的なすり合わせを行って、ハードワークして、努力して、掴みかけた勝利への道を、何の前触れもなく一発で瓦解させてしまう危険性を常に孕んでいるんだから、こういうファインゲームが出来た今こそ確認しなくちゃいけない。去年はホーム千葉戦でセットプレーで失点してから、その負の連鎖が続いて、次節の清水戦でセットプレー2発で大敗を喫したのをきっかけに、真夏の4連敗という最悪のサイクルに陥ってしまったっていう経験もある。このチーム、セットプレーに関して負の連鎖が続く傾向があるんだよ。だから今こそ、しっかり確認を。逆に言えば、今のチームならそれさえ出来れば怖いもんなんてねーよ!




んで、ガンバはそうやって連続のセットプレーで流れを掴みかけるものの、次第に流れは新潟へ。そのリズムを生み出していたのはやっぱりペドロと松尾の左サイドだろう。プレビューでも書いたとおり、やっぱりこの試合のカギは復活した加地とガンバ最強のブースターである佐々木の右サイドと、新潟の左サイドの主導権争いだった。序盤こそ加地がかなり前に押し込んでくるシーンがあったのだけど、次第にペドロと松尾が高い位置を取れるようになって新潟に流れが移っていく。結局、90分を通して加地の1対1のさすがのスキルもあって、ペドロが完全にドリブルで抜け出して決定的な形を作るまでには至らなかったのだけど、それでもペドロが左サイドでツンツン突っかけて相手を押し込むことに成功しただけで、この試合のガンバの機能性を消失させるには十分だった。
で、これが何度も出来たのは何故かといったら、その原因の一つはペドロがちょっと無理をして突っかけた結果、ボールロストした後にすぐに新潟の中盤とDFがフォローできていたからだと思うんだよね。これペドロに限らず右サイドでも同じなんだけど、新潟の選手が攻撃面でチャレンジをした後のセカンドボールに対して、前半のガンバは後手を踏み続けた。これ、結局一言で言っちゃえば、そういうファジーな状態になってる中盤をたった一人で引き締めることのできる明神の不在が原因だと思うんだけどね。倉田と橋本のボランチコンビはとにかく距離感が曖昧で、その前の安田、佐々木、ルーカスとも連動できないので、ガンバの中盤はセカンドボールを狙いに行く勲、マルシオ、松下の3枚に対して全く勝てていなかった。明神の不在って新潟にとっては思いのほかラッキーだったと思う。
あとやっぱ松下とマルシオの2枚のアップダウンの運動量も素晴らしかった。特に松下の、松尾が上がった位置と勲の間のスペースをずっとケアしつつも、攻撃時にはPA内に飛び込んでいくって言う機敏なプレーは素晴らしかった。


で、その結果何が得られたかっていうと、中盤の底を心配せずに攻撃時に選手を前に多く裂ける、って状況。13分の分厚い攻めとか、あと先制点でもそうなんだけど、前半は何度もボールを奪ってから人数をかけたワイドに分厚い速攻を仕掛けることが出来た。ガンバはそれを防いで反撃を狙うのだけど、いびつな中盤と新潟の攻撃を前に引ききったDFラインと、前線で孤立するチョ・ジェジンとという状況だと、選択肢としてはほとんどが縦への単純なロングパスになってしまい、簡単に新潟がそれを処理してまた新潟ボールにする、って循環が出来て新潟のポゼッションが上がっていく。
単発ではガンバもサイドへの展開を見せてクロスを上げていくのだけど、「上がったクロスを跳ね返す」っていうタスクに関しては新潟の守備陣の得意とするところ。しかも何故か貴章がしれっとその跳ね返す作業に参加してたりするのでww、問題なくゲームを進める事に成功する。てか貴章はやっぱすげーよ。あそこでしれっと守備をしてくれることの重要さを、ナビスコのボロボロな中盤・守備を観た後だと痛感する。



で、「ガンバ相手にポゼッションしながら試合を優位に進められる」という想定外の状況の中、試合が動く。北野のゴールキックから貴章がフリックオンしたボールを、オオシがキレイに右サイドのスペースへ流し、それをうっちーがフォロー。その数秒を使って3トップ+松下&マルシオの5人がPA内に一気に突入すると、ファーに流れた松下へとうっちーのクロスが通り、松下がヘッドで折り返したボールがオオシの肩越しを経由して、右サイドでフリーになっていた貴章へと届きボレー!!ゴール前が混雑している時のセオリー通りの叩きつけるボールはキレイに中澤の頭を掠めてゴールイン!!!左右へ揺する攻撃、叩きつけるボレー、とセオリー通りのいい形が二つ続けばそりゃゴールになるよね、な見事な形で先制に成功する。


その後も基本的な流れは変わらず。ガンバはセットプレー絡みでチャンスを作るものの流れを変えるには至らず、新潟がゲームをコントロールしていく。ただ、44分にアクシデント発生。松尾が橋本と交錯した所で右足の靱帯を痛めてヒロシと交代。全力で鶴。
前半終了間際には貴章が倒されて得たPAギリギリのFKを、マルシオが高知キャンプでの富山との練習試合の時のような遠いサイドを強襲するストレート系のキックで狙うのだけどバーを叩く、っていう決定的なシーンもありつつ前半終了。セットプレーの守備以外はほぼ問題のない内容で前半を終える。



ガンバはハーフタイムで安田→バンド、倉田→二川。2トップがジェジンとバンド、中盤は左からルーカス、二川、橋本、佐々木。ああ、やっぱそりゃそうだよね、な交代。
これでガンバにとって大きく変わったのは左でルーカスが顔を出して守備にも参加してくれるシーンが増えたって所。これでやっとガンバの中盤が落ち着きを取り戻して、二川という真ん中でボールを収めてくれる選手もいるので次第に新潟が押し込まれるシーンが増えてくる。しかしやっぱルーカスは左サイドで使った方がいいよな。恐らくレアンドロが健在ならルーカスが左サイドで先発だったのだろう。単純にレアンドロという脅威がいなかったのもそうだけど、こういう部分も含めて改めてレアンドロがいなかったのは本当にラッキーだったと思う。


ただ、ちょっと押し込まれるシーンが増えたとはいえ、中盤で相手にスペースを与えることは絶対にしないし、両ウイング+センターハーフも的確に状況判断して守備に降りてくるので、ガンバに決定的なシーンを作らせることなく時計を進めていく。
そこからしばらくはガンバにも新潟にも特に大きくゲームを動かすシーンもなく進んでいったのだけど、67分にアクシデント発生。ルーカスのシュートをブロックに行った永田さんが右足を捻挫して千葉ちゃんと交代。こちらも全力で鶴。
そしてこの新潟の守備を支える永田さんの交代というきっかけと、この暑い気候の中で運動量が落ちたことで、ガンバが攻め、新潟が後ろに人数をかけて守るという流れに推移していく。その後は前述のようなセットプレーの守備のまずさで決定的なシーンを与えることもあったのだけど、ガンバの度重なるクロスに対しては中が集中して守り(当然貴章も元気に参加ww)、前に押し出せるチャンスではオオシ、ペドロ、マルシオ、そして下がって守る貴章の代わりに高い位置を取る事も多かった松下が必ず前への意識を披露して、ガンバの首元にナイフをちらつかせる事だけは怠らない。
攻めあぐねるガンバは79分に佐々木に替えて山崎。山崎は基本的には右サイドハーフの位置だったと思うのだけど、ほとんどスクランブル状態で攻めに入る。


しかし次にゲームを動かしたのは新潟だった。82分、藤ヶ谷の半端なキックを勲が拾い、ヒロシ→ペドロと繋ぎ、バイタルでフリーになっていたマルシオへ。ガンバの選手がすかさずフォローに行く暇もなく、マルシオがその魔法の右足というタクトを振るうと、ボールはドライブしながら藤ヶ谷の手を掠めてゴールにぶっ刺さる。0-2。試合を決定づけるゴールが決まる。
しかしこのシーンで場内のマイクが拾ってたキックのインパクトの瞬間の「ドムッ!!」ていう分厚い音と、ボールがネットに突き刺さった瞬間の「バシュッ!」っていう音たまんないね。「静かにしろい。この音が俺を蘇らせる。何度でもよ!!!」状態、まさに。


その後はもう守りながら時計を進めていけばいいだけの新潟。しつこいようだけどw、セ  ッ  ト  プ  レ  ー  の  守  備  以  外  は  問題なく、貴章が足を攣っちゃうくらいハードワークして(貴章はゴートクと交替)、守りきって試合終了。ナビスコでの惨敗が嘘のような完勝だった。



ま、これで暫定ながら2位。だけど下を見たら足を掬ってやろうって言う輩がわんさかだ。そいつらを振り切るために必要なのはただ一つ、勝ち点だけ。それを奪うために全てを尽くそう。まだまだこんなもんで満足してる場合じゃないからね。