【レビュー】09年第15節 名古屋戦@スワン

アルビレックス新潟 2-1 名古屋グランパス
スタッツ
鈴木淳監督 試合後コメント


試合の立ち上がりは名古屋ペース。ダヴィ、玉田、マギヌン、小川がポジションを変えながらワイドな展開を繰り返し、それに加えて田中ハユマが高い位置をキープして新潟を押し込んでいく。その結果、連続でセットプレーをむしり取り、チャンスを作ることに成功した。
ただ、その流れの中いきなり試合が動く。5分。この試合で初めて新潟のDFラインでのパス回し。この試合は4バックのうち左の2枚がいつもと違うメンバーであるということ、そしてその二人が永田さんと松尾orジウトンという、ビルドアップに関して非常に重要な選手たちであることを考えると、こういうパス回しでのプレーは随分と違うものになるだろう、って事で注目してたんだけど、その最初のシーンで千葉ちゃんが実に彼らしい縦への早いパスをオオシに通すと、その落としを拾ったペドロがドリブル開始。吉村をするすると交わすと、「ザゲイロに走り負けたことがない」の発言通り、並走してきた増川をあっけなく置き去りにしてゴールに迫りシュート!そのボールは左ポストを叩くものの、それをそつなく詰めていた松下がプッシュして先制!!DFラインでの組み立てどうだろう?って若干の懸念に対していきなり回答を見せる。やっぱ強いなこのチームは。


その後は新潟ペース。しかし往々にしてプレビューで書いたことがそのまんま的中しちゃうゲームって完勝に近い試合になる傾向があるけど、この試合もそうだね。この試合のプレビューで「前線(特にダヴィ)でボールが収まらず、あっけなくターンオーバーしてカウンターを被弾するケースが多い」って書いたけど、前半の名古屋はまさにそれ。基本的にはPAエリアのギリギリの位置で守備のブロックを作り、その前でマルシオ、勲、松下、貴章(貴章が最終ライン付近に入った時はうっちー)が網を張っていたんだけど、その網にすっこんすっこん引っかかる名古屋。そしてオオシがそのボールを受けた瞬間にスイッチが入って、アタッカーが飛び出すという新潟らしいシーンが散見することになる。それにこの試合のペドロはキレキレ。後ろにしっかり守備ブロックが出来てる状況なら、彼は何の迷いもなくつっこめるもんな。グッドリズム、グッドウィドゥム。

そんな中でも、ダヴィが不得手なポストプレーではなく、後ろに走らせるボールやクロスに対して入ってくるプレーってのはやっぱちょっと怖いんだけど、千代がそれにしっかりマークについて決定的な形は作らせない。さすが千代。


で、名古屋もダヴィをうまく使えば怖いしまだ油断できねーな、と思ってた17分、マギヌンがいきなり貴章にラリアットかましてイエロー。なんだありゃ。スタンハンセンでも憑依したか。こうなると期待しちゃうのはマギヌンの退場。彼は川埼時代に、絶対に負けてはならないガンバ戦で加地さんにいきなりおぞましいバックチャージかまして一発レッドを食らった・・・・というプレーに代表されるように、気性が荒い選手なので、俺も隣のおっちゃんと「あいつ退場するかもしれないっすよww」などと盛り上がる。

で、あのノーゴールの判定。あれ、その前に同じようにダヴィが千代を背負うようにしてボールキープしたシーンが2回くらいあったんだよね。ダヴィってポストプレーする時に、ああやって相手を無理やり手で押し込むような形でプレーするんで、審判によっては印象悪く見えてファウルを取られちゃうことがよくあるんで、俺はダヴィポストプレーに対しての特に注視して観てたんだけど、一回は千代のファウル、で、もう一回はファウルなし、って判定だったんだよね。
だから、俺は最初あのプレーではファウルなしのオンプレーだと思ったんで「うわ、やられた!」って正直思ったんだけど判定はダヴィのファウルでゴールはなし。録画で見たら多分その前に千代を抑え込むように手を伸ばしたのが印象悪かったんだろうな。ただまあ、名古屋の選手ならさっきの判定を基準にして考えれば文句も出るわな。


それを見て、彼のイライラは頂点に達する。その直後のプレーでドリブルが流れたボールを競りに行くシーン。そこで勲の足目掛けて明らかに踏みに行ったプレーでマギヌンに2枚目のイエロー。退場。ものの見事に予感的中。


そうなったら当然流れは新潟に。元々11人揃っていた時から左サイドバックの阿部はマギヌンとの距離感がつかめず、貴章とうっちーに手を焼いてる感があったけど、マギヌンを失うといよいよ右サイドを蹂躙され始める。なんせ、マギヌン退場後から前半終了まではほとんど右サイドからチャンスを作っていたしね。うっちーのクロスからオオシとわんちゃんがツインバイシクルかましたのもこれだよねwwあれ、後で友人と「同時に叩いた場合はどっちのゴールになるんだろう?」って話したんだけど、結論は「得点者:高橋陽一」って事になりましたwwww

で、結局阿部翔平は前半で交代させられる憂き目にあうんだけど、今年って貴章の対面となるサイドバックが前半で交代させられちゃうの多いよね。磐田の山本シュート、鹿島のアライバとかね。これって結局、「ウイングが常に相手のサイドにプレッシャーをかけ続ける事が出来る」って事なんだよな。今年の4-3-3が機能してる一番の要因はここだと思う。ペドロと貴章という運動量、機動力、破壊力を兼ね備えた規格外のウイングが常に相手のサイドバックに脅威を与え続け、相手の攻撃力をこっちの攻撃力で押し込む事で主導権を握り、相手の組織にエラーを起こさせる。特に今年は4バックのチームが多いのと、さらにサイドバックの攻撃参加を重視してるチームが多いのもリーグで今3位につけてる理由の一つだと思う。
ああ、そういえば思い出した。無類の強さを誇った岡田武史政権のマリノスで、岡田監督が重視したのは「相手のサイドバックへのプレス」だったんだって。なぜならそこに重点的にプレスかければ、能力の高いサイドバックが少ないJリーグでは面白いようにボールを奪えたんだってさ。
あっ!!だからさ、鹿島を倒すヒントはここなんだよ!各チームの皆さん!!鹿島に勝ちたいなら、サイドバックを攻撃的に押し込んで自由を与えない、ってプレーを繰り返すしかねーよ!彼らはサイドバックの攻撃参加を日本で一番有効活用するチームなんだから、それを抑え込めばいいのさ!



ただ、流れを掴みながらも追加点の奪えない新潟。しかし43分、やっと次の得点が生まれる。名古屋のCK崩れから縦への反撃。マルシオへのボールは流れるものの、すかさず楢崎にプレスに行くマルシオ。すると楢崎がその処理のキックをミスしてタッチラインを割る。ここで大活躍したのが渡邉基治通訳。そのボールを誰よりも早く掴んで、素早いスローインをアシスト。それをうっちーが入れると、松下がペドロとのワンツーで相手のDFラインのギャップを完璧に突いて抜け出す、後は中に切れ込みながらシュートをぶちこんで追加点!0-2。こういう流れなら最低でも欲しかった2点目を手中に収める。てかこれ実質「アシスト:渡邉基治」だよなwwwその後よっさんと黒さんにすげー祝福されてたしwww
しかしわんちゃんはナビスコで連続得点を挙げてるけど、ここにきてどうやって点を取るかってのに開眼した感じがあるね。これまでも良く走ってスペースに飛び出していたけど、得点に直結する「PAでのプレー」って事に対しての意識が強い印象を受ける。ガンバ戦の貴章のゴールの時の折り返しもその一つだよね。素晴らしい。



んで、前述の通り名古屋は阿部→竹内で後半スタート。後半も立ち上がりから新潟ペース。前半同様ワイドに展開して相手を押し込んでいく。

ただ、60分過ぎあたりから新潟の全体の運動量が落ちたのと、名古屋が竹内をセンターバックにした3バックに変更してきたのもあって次第に新潟が引いて守る時間帯が増える。まあ、あれだけ暑かったから省エネモードに入った時間が多かったってのは当然なんだろうけどね。
後こういう形になったのはやっぱり勲とマーカスの違いってのもあったと思う。マーカスはフィード、対人の守備に関しては及第点だったと思うけど、っていうかこの試合の出来に関してダメだとは毛頭思わないんだけど、やっぱり勲の「バランサーとしての質の高さ」は勲じゃないと難しいんだろうなあと感じた。
この「バランスを取る」ってプレー、すっげー曖昧で説明が難しいんだけど、要は「ボールに関与するタイミングとポジション」なんだよね。つまりボールにアタックに行くタイミングと、ボールを受ける位置の判断の部分。この地道な積み重ねで、ゲームの機微を読みながらちょっとずつ流れを理想的な方向に動かしていくという作業なんだよね。守備と攻撃を繋ぐ核の部分で、そのちょっとした部分が大きく流れを左右していく。なんだか、勲がキャプテンマークつけてる理由が改めて分かった気がする。


ただ、それでもカウンターの意識は当然忘れない。淳さんも「受けに回ることが多かったので、チャンスだと思ってカウンターアタックを狙いにいっていた。」と言っていたけど、もうこれはウチの最もコアとなる意識だよね。ずっとゲームを完全に終わらす3点目を目指すことは忘れなかった。77分にオオシ→ヨンチョルはゲームを決定付けるゴールを目指すための交替、ロスタイムのペドロ→アトムはゲームをクローズさせるための交替か。
まあ、ロスタイムになってやっと高い位置でのポゼッションで時間を進めるプレーが見られたけど、ああいうのが今日で言えば60分過ぎのタイミングでやれれば、もっと上のレベルに行けるんだろうけどね。もっとも、今日みたいな試合でしっかり3点目を獲るっていうカウンターの精度をブラッシュアップするってのも手の一つなんだけど。


んでまあ、最後に粘られて地味に失点はしたものの試合終了。これでACL組を連続で粉砕して連勝。ただ、こんなんで満足してる暇など一切ない。こっからは毎年苦しむ夏の戦いだ。それをサクッと乗り切るためには、この連勝の勢いを萎えさせないことだ。それに必要なのは言うまでもなく勝ち点3。ただそれを積み重ねる事だけだ。まだまだまだまだ。もっと行くぜ。目指すはもっと上だ。