【レビュー】09年第18節 マリノス戦@日産スタ
横浜Fマリノス 1-1 アルビレックス新潟
スタッツ
鈴木淳監督 試合後コメント
いやあ、暑かった。今思い出しても汗かきそうだもの。久々に声出してて、唇の先が軽く痙攣するあの「酸素が足りない状態」感じたもんなあ。しんどかったぜ。結局、この試合の結果を最も左右した要素ってこの「暑さ」だったしね。そしてその大きな課題に、今後どうやって挑んでいくかっていう学習材料を得た試合だったと思う。
立ち上がりから新潟ペース。ペドロがドリブルでバイタルに侵入した所で倒されて得たFKを松下が蹴る、ってシーンをきっかけにペースを握る。しかしあのキック悪くなかったよね。現状で直接FKを期待できるのはマルシオしかいない印象だけど、そこに松下が絡んできてくれると実にうれしいな。がんばれわんちゃん。
マリノスは小椋と松田のボランチに、トップ下に水沼、トップに渡邊千真で、その両端に兵藤と山瀬と山瀬、って形だったのだけど、新潟の守備陣は千代の代役だった千葉ちゃんも落ち着いていて、相手の前線3枚に4バックがしっかり対応してスペースを与えないし、中盤とそしてプレビューで最も強調した「サイドバックの攻め上がり」も、中盤3人+両ウイングがしっかりプレスに行く。ゴートクも守備のタスクはほぼ完璧に完遂。
12分にはCKから、マリノスが前節山形戦で見せた明らかな弱点である「セットプレーの時のゾーンの大外の位置」に待ち構えてたオオシが決定的なヘッドを放つというシーンを作り、15分にはペドロが右サイドバックの天野を振り切り、単独突破で局面を打開しに行くシーンを作り、19分には永田さんの完璧なフィードを受けたうっちーが切り返して左足でクロス→松下ヘッドも惜しくも枠を外れる決定的なシーン、などなどゴールの匂いをぷんぷんさせる展開。
あ、余談だけど新潟のサイドバックにとって「両足で蹴れる」ってのは物凄く重要な条件だよね。ビルドアップに参加して、そこからクロスを放り込む仕事を託されてるのが新潟のサイドバックだし。このうっちーのクロスと、後半のヒロシとジウトン見てて思った。ヒロシとジウトンは右足を使う練習を重点的にして欲しい。
その後は松田に決定的なヘッドを許すっていうピンチもあったのだけど、その新潟の流れは変わらず、24分に試合が動く。
中盤でのパス回しから千葉ちゃんにボールが渡る。その瞬間、真っ先に田中裕介の背後を突いて、ラインの裏にダイアゴナルに走りだす貴章。そしてそこに千葉ちゃんから、球威、タイミング、コースともに完璧なフィードが貴章の胸に渡り、貴章がそれを冷静にコントロールして左足で流し込んで先制!二人とも見事!!
しかし超絶糞スタジアムの日産スタのゴール裏からでも、これはハッキリ見えたんだよね。丁度前節の松下のゴールみたいに、選手が明確にゴールへの軌道を頭に入れて動き出すのが見えて、そこに完璧なパスが通る。またしても鳥肌。素晴らしい。
その後次第に流れはイーブンな流れに。ここでマリノスが流れを引き戻し始めたのは、やっぱりサイドバックの位置だったと思う。このゴール以降から、天野と田中裕介の位置がジリジリと上がり始め、かつその二人が余るってシーンが目に付くようになった。29分にペドロがその上がった天野を狙い打ちにしてボールを奪い、ドリブルで駆け上がってシュートを打つってシーンがあったけど、ああいう天野に対する「こっちのカウンターの脅威」っていうプレッシャーを中々与えられなくなった。そして、これは後半にさらに明確になる。
37分にはその位置を上げてきた田中裕介がうっちーと競り合いながらPA内に侵入し、超決定的なシュートを放つもギリギリで右に切れる、ってシーンがあったけど、これがある意味では後半の布石だったかもしれない。
後半、ほとんど機能していなかった水沼ジュニアに替えて坂田。渡邊のトップに両端が坂田と山瀬で、兵藤が中盤に降りる。
後半開始からマリノスが明らかに狙ってきたのは、前線をワイドに使って揺さぶりをかけるという戦い方。いきなり田中裕介が掛け上がって上げたクロスのこぼれ球を坂田がシュートしたのをきっかけに、マリノスが攻め込む。
なので、この戦い方に早く修正を!!、と思っているうちに同点弾が生まれる。47分、右の山瀬→左の坂田と振って、その落としを拾った松田の右へのフィードを大外で余っていた天野がヘッドで折り返し、左右に振られて新潟がマークを完全に見失っていた坂田がフリーで押し込む。1-1。
このゴールをきっかけに、一気にペースはマリノスに傾く。その原因の一つはやっぱり運動量が落ちたということだろう。今シーズンで一番と言っていいくらい、目に見えて新潟の運動量が落ちた。これは中澤やオオシもハッキリと明言してるしね。
そしてもう一つは、やっぱりサイドバックの位置だと思う。これ、プレビューでも書いたけど今年の新潟は「ウイングがサイドバックにプレスを掛け続ける事が出来ると強い」のだ。ただ、後半はペドロのサイドで殆どこのプレーが出来なかった。それは単純にペドロの運動量が落ちたってのもあるけど、大きかったのは「ペドロと天野が直接対峙するシーンをマリノスが作らせなかった」って事だった。
個人的に、この試合の影の主役は小椋と栗原だったと思う。いくら運動量が落ちていたとはいえ、後半のロスタイムでもそうだけどペドロがボールを持ってドリブルを開始した時の威力ってのはやっぱり凄い。だからこそ、ペドロがボールが持ったら、いや「ボールを持つ前から」小椋と栗原あたりがペドロが天野の位置まで到達させないようにしてたんだよね。
俺、後半の苦境を打開してくれるのはペドロが天野に突っかけて、その位置を下げさせるしかないと思ってたから、ずっと新潟の左サイドを注視してたんだけど、本当に小椋と栗原がペドロにボールが渡る前からその危険を消すポジションを取り、そのリスクマネージメントがしっかりしてたんだよね。あれは感服した。それがあったから、天野があれだけ前でフリーになる為のポジション取りを繰り返す事に専念できたんだよね。
そうすると後半の立ち上がりと同様に、左右のスペースをうまく使われて苦境に立たされ続ける事になった新潟。その結果、ラインはスペースを埋めるためにガッチリと引くことになり、中盤はどんどん空洞化していく。俺正直言うと、プレビューで書いたことがこんなに悪い方向にドンピシャで的中した時って、大抵ポイントゼロで終わることが多いので、これヤバいかなあ、って思ってたんだよねwwつーかこういう方向でドンピシャになるなよ!!!ww
ただ、この試合ではどんなにサイドを自由に使われようが、絶対にセンターの守備が瓦解しなかった。千代の替わりの千葉ちゃんは本当に素晴らしかったし、永田さんも北野も凄かった。多分選手・ベンチもこのコンディションと試合の流れではポイント1を確保するのをまず念頭に置いていたんだと思うんだけど、その目標を達成するには失点しないことが必須。それに向かって素晴らしいプレーを見せてくれた。
74分、ヒロシ→ジウトンという交代があったけど、あれって攻撃面での期待もあったと思うけど、その意図の90%はその4分前に投入された193cmのキム・クナンに対するものだったと思うんだよね。あれだけのターゲットがサイドに流れてクロスを折り返す、っていうプレーを危惧したんじゃないだろうか。
そもそも淳さんって、以前からこういう高さのある選手が途中投入された場合にしっかりと手を打つことが多いよね。交代をあまり使わない監督としては異例なくらい、こういうシーンでは交代策を打ってくる気がする。藤井や慶治あたりが投入されたりね。今回もそれだったと思う。
結論から言うと、その「ポイント1を確保する」ってタスクは達成する事が出来た。試合後の淳さんの評価や、最後のゴートク→マーカスの交代、そしてこの交代を見てると、やっぱりこの試合は勝ち点1を取ったという事を評価すべき試合なんだと思う。
でもまあ、ジウトンの投入で左サイドにやっと起点が生まれて新潟がボールポゼッションをして相手に攻め込んでいく、ってシーンが増えたんだよねwwジウトンいい仕事。前節の汚名を返上するには全然足りないけどなwww頑張れジウトン!
でもそれを見ても、やっぱりこの試合はサイドの戦いとイコールだったんだと思う。正直言ってそこは完敗だった。だけど、そんな状況でもセンターだけは絶対に譲らずにポイント1を手に入れた。そういう意味では、この順位にいるべくしているチームであるという事をある程度は証明出来た試合だった。
ただ、こういう状況で攻撃的なオプションを打って様子を見る事が出来なかったのも事実。ヨンチョルがいないと、そういう交替が全く打てなくなってしまう。これを打開するには、ベンチに入りながらも使われなかった選手たち、特にアトムとフミヤが頑張れなくちゃいけない。こういう状況でも使われなかった、という意味を熟考してほしい。彼らの台頭なしに、この夏を乗り切ることなどできないのだから。
・・・・って3日前までは締めくくろうと思ってたんだよねww
でもフロントが「毎年失速する夏場以降を乗り切るために連れてきた」という補強が来たと。すげー。フロント本気だぜ。もちろんみんなとっくに本気だろうけど、その本気をさらに増幅させる補強が来たよ。
OK。勝つぜ。これからも勝っていくぜ。本気でトップ狙おうぜ。大きな事をやってのけようぜ。フロント、チーム、サポーター。この3者がすべて同じところを向いた時にタイトルは獲れる、とかつて淳さんは言った。だからこそ、こっちが遅れてるわけにはいかない。だって、ヤツらは本気なんだから。