【レビュー】09年第29節 浦和戦@スワン

アルビレックス新潟 0-1 浦和レッズ
スタッツ
鈴木淳監督 試合後コメント


今の、というか今シーズン残り試合で新潟がやるべきサッカーはどんなものか?4-3-3の時のような、相手にとって理不尽なまでの破壊力を湛えたチームではない。ただしチーム全体でコンセプトを持って素晴らしく緻密で屈強な守備を構築出来るチームだ。そして何より、これまでずっとブラッシュアップしてきた「奪ってからの速攻」という武器をしっかりと持っているチームだ。それがハマれば、鹿島だって沈める事が出来るのだ。
つまり、今年は「相手の攻撃をしっかり理解してコンセプトを持って守り、そこから相手の急所を突く速攻を繰り出す」チームとして、残り試合を戦うべきなのだろう。となれば、とにかく先制点を取られないこと。0-0の状態をしっかりキープすること。それが求められるって事だ。
もちろん、この試合でもそうだったはず。ただ、開始30秒足らずでそのコンセプトがあっという間に崩れた。その結果、攻めるしかなくなった。しかも攻めた後での攻守の切り替えとリスクマネージメントに問題を抱えるけど、リードを後ろ盾に引いて守ると屈強な浦和相手に、である。



試合は永田さんのとんでもない大ミスから始まる。開始30秒、北野へのバックパスを選択するも、そのパスはあまりに短く、後ろから追走してきたエジミウソンに掻っ攫われる。エジはそのボールを見事なタッチでコントロールして北野を外すと、後は必死に食らいつく千代の足先で触ってゴール。
さっきも書いたけど、これで完全にプランがぶっ壊れたと思う。試合開始たったの30秒で。浦和をスカウティングして導いたのは、多分、というかほぼ間違いなく「相手がポゼッションしてくるのを我慢して、どこかでボールロストさせて速攻」って形だったと思う。今年の浦和は本当にそういう形が多いからだ。で、そのコンセプトって鹿島を破った時とまったく同じ。それに広島に勝ったのも、相手のサイドアタックにまずアジャストして守備を安定させたところから効率よく攻めて2点を奪い取った、って所だし、やはりまずはどうやって守備をするかっていうのを準備して入ったはずだろう。
しかしそれが崩れた事で何が待っていたかと言えば、浦和が期待通りのポゼッションを前面に押し出すサッカーではなく、引いてびっちり守備を作ってスペースを与えないという戦い方をしてきたという事。そりゃそうだ。先制点取ったんだから。
この試合ではとにかく浦和の4バックがしっかりとラインを作ってギャップやスペースを潰し、その前の鈴木啓太と阿部のボランチ2枚キッチリとフィルターを掛けるポジションを取り続け、その前ではエジの後ろの3枚(ポンテ、田中達也、原口)が動きまわってボールをチェイスしまくる。そういう意味じゃ、結果的に堀之内の右サイドバック起用はドンピシャだったよね。しっかりポジション取って守るなら、彼以上の適役はいなかった。
そして攻撃に移ったらとにかくシンプルにDFラインの裏に送り、エジ、達也、原口あたりがそのボールに食いついて行くという、縦へのダイレクトプレーを多用してくる。
つまり「しっかり守備組織をセットして守り、縦へのシンプルな速攻を仕掛ける」という事。そう、これは完全に新潟が狙いたいサッカーそのものだった。はっきり言ってしまうと、新潟はこういう戦い方をしているチームに極端に弱い。今年、というか去年から一つも逆転勝ちの試合がないのは偶然じゃないと思う。このチームは0-0の時間帯を大切にしないと勝てないチームなのだ。この試合はこれ以上ないほど、その課題をハッキリと浮き彫りにしたと思う。


前半はほぼ新潟ペースだったと言っていいだろう。引いてくる浦和をパスワークとランニングで切り崩していく意思と、相手の縦へのダイレクトプレーへのケアをしっかり同居させながら試合を進めていく。
それでもやはり浦和のスペースをきっちりと埋める守備に苦しむことになるのだけど、その中でもうっちーやジウトンが高い位置を取って起点を作り、そこで中盤の選手が走ってパスを引き出す、っていう一連の流れは非常に可能性を感じさせるものだった。特に前半の三門はこれまでで一番攻撃面でのタスクをうまくこなしていたと思う。しっかし本当によー走るね。そしてマルシオが真ん中に入った時に、右のスペースに三門が走りこむっていう形は、完全に新潟のスタイルになったと言っていいだろうね。
とは言え、貴章がプレス掛けた結果、坪井がトラップミスしたのを松下が拾ってGKと1対1になるっていうシーン以外は、これといった決定機を作れずに時間は進む。淳さん曰く「松下のシュートが阻まれたあたりが、勝負の分かれ目だった。」という事だけど、その通りだろうね。全体的にプレスは利いていて相手の攻撃は上手くシャットアウトしていたけど、決定打がほとんど打てなかった。
そして最初の勢いが落ちると、次第に堀之内とポンテ、原口が絡む浦和の右サイドに若干左サイドが侵食されるようになる。結局、この辺で流れを停滞させられてから、流れを完全に引き戻すことができなかった。
結局のところ、淳さんのコメントの「うちがボールを動かし、推進力があった。チャンスも作っていた。その状況だったので、浦和の方は手堅く守りを固めたのでは。想定できなかったのは、最初の失点」ってのがすべての前半だったと思う。



後半は浦和ペース。前半に比べるとラインが上がり、前線の選手がワイドな展開を見せて新潟の守備陣にプレッシャーを掛け続けると、新潟の運動量がどんどん落ちてくる。それに加えてトゥーリオが上がってくるシーンがついに出始めると、新潟は上がれない、ボールが収まらない、という状況に陥ってしまう。それにこの時間帯で増えてきたCKで、ポンテが蹴るキックがこえーのなんの。ストレート系でグイーンと伸びてくるあのキックはやはり別格だった。
うーん、やっぱりはっきり言ってしまおう。後半は書くことなし!!!!!以上!!!!!!!
結局、後半のシュートはうっちーのクロスからの貴章のヘッドが大きく枠を外れた1本のみ。相手の圧力を前に、まずは自陣で守備を強いられる展開の中で、何度かカウンターを繰り出していたけど、勝負パスがほとんど乱れてチャンスを潰す、という形が山積してしまった。その中でも67分のカウンターで、松下が真ん中でボールを持った時に、右サイドに広大なスペースがあってそこに貴章が走ってきたのに、シュートを選択してしまってチャンスが潰れた、ってのが最大のチャンスだったか。あれパス選択してれば完全にGKと1対1だったからね。わんちゃんは縦パスを正確にトラップするのと、こういう場面での視野の広さが備われば完璧な選手になれるんだと思うんだ。がんばれ。
77分にヨンチョル→松下で4-3-3にシフト、その後83分に三門→エヴェルトンと交替したものの、特に大きな変化は得られず。最後まで得点の匂いをさせる事なく試合終了。




重要な試合を落とした。内容も良くなかった。だけど話はシンプルだ。残り5試合。最大勝ち点15。これを積み上げるために次の神戸戦に向けて最高の準備をすること。もう一度言うけど、「相手の攻撃をしっかり理解してコンセプトを持って守り、そこから相手の急所を突く速攻を繰り出す」事が出来れば、俺たちは強いのだ。
そう、毎年そうだよ。毎年後半戦に活きてくるのは自分たちの基本、これまで積み上げてきた「アグレッシヴな守備と速攻」というスタイルそのものだ。今こそブレずに勝ちに行くしかないよ。だってそれがこのチームの戦い方そのものなんだから。さあ、次だ!