わかめ

立ち食いそば屋が好きだ。俺の行動範囲の某駅の近くに、JRの駅のどこにでもある某チェーン系ではない、インディな立ち食いそば屋があるので重宝している。やっぱり立ち食いそば屋はフランチャイズされ、オートメーション化された時点で大抵は終わりだな。
で、立ち食いそば屋の何が良いって、食券を買って渡して提供されてごちそうさまーと言って出てくという、それだけの行為を5分足らずで淡々とこなす場所であるって認識が、客側にも、店側にもあるってのがいい。
顔馴染みになるのは、基本的に面倒くさい。俺にも顔馴染みの店はそれなりにあるけど、「味が良くて、人も良い」から顔馴染みになるんであって、「味が良いのに人がダメ」だと不幸だ。そういう店には「味が良い」のみで行きたいのだけど、半端に顔馴染みになってしまうと、味を楽しむ以外の面倒が発生する。そうすると「味が良い」のに行けなくなる。何たる不幸。
その点、俺が行く店の店主のオヤジはそういう顔なじみを一切排除したスタンスだから良い。間違いなく俺はその店の常連として顔馴染みだろうけど、そういう素振りをちっとも見せないのが素晴らしい。だからこっちも特に会話を交わす努力なんてしない。それでいいって言う暗黙の了解があるからだ。


で、俺はよく山菜そばを頼むのだけど、先日そこにわかめがどっさり乗っかってたんだ。あれ?俺わかめオプションつけてないのに間違えて乗っかっちゃった?とかそういうレベルの分量じゃない。間違えて乗っけるのは不自然な量だ。間違いなく、これは常連に対してのサービスなのだ。
だけどそこの店主のオヤジは「サービスしときましたよ」なんて当然言わない。だから俺も「あ、サービスですか」なんて言わない。そう、暗黙の了解。分かってる。俺もオヤジも分かってる。交わす会話は向こうの「はいお待ち」とこっちの「ごちそうさまー」だけ。



で、俺ここでコント思いついた。



こっそり常連にサービスする寡黙な立ち食いそば屋と、これまた寡黙な山菜そばをいつも頼む常連。最初は店主がこっそりワカメを山菜そばにどっさり入れて提供する。「はいお待ち」。だけど常連客はそれを淡々と食って「ごちそうさまー」だけ。
次に店主は、山菜そばのオーダーに対して、ワカメに加えて天ぷらも乗せて提供。「はいお待ち」。だけど常連客はそれを淡々と食って「ごちそうさまー」だけ。
じゃあってことで店主は、山菜そばのオーダーに対して、ワカメと天ぷらに加えてあぶらあげを乗せて提供。「はいお待ち」。だけど常連客はそれを淡々と食って「ごちそうさまー」だけ。
こうなったらもう意地。店主は、山菜そばのオーダーに対して、ワカメと天ぷらに加えてあぶらあげを乗せて提供した上に、カレーといなり寿司も一緒に提供。「はいお待ち」。だけど常連客はそれを淡々と食って「ごちそうさまー」だけ。
ふむ。そう来たか。それじゃ次はこうだ!ってことで店主は、山菜そばのオーダーに対して、思い切ってカップヌードルのシーフードを提供。「はいお待ち」。だけど常連客はそれを淡々と食って「ごちそうさまー」だけ。
ほうほうほうほう、そうかそうか。それじゃこれはどうだってことで店主は、山菜そばのオーダーに対して、近所の吉野家で買ってきた牛丼特盛を提供。「はいお待ち」。だけど常連客はそれを淡々と食って「ごちそうさまー」だけ。
はっはっはっは、そうかねそうかね、じゃあこれはどうだこの野郎、ってことで店主は、山菜そばのオーダーに対して、ポッキーを提供。「はいお待ち」。だけど常連客はそれを淡々と食って「ごちそうさまー」だけ。
あーっひゃっひゃっひゃっひゃ!!そうかねそうかね!それじゃこれだこの野郎!!ってことで店主は、山菜そばのオーダーに対して、ニトリで買ってきたソファーを提供。「はいお待ち」。だけど常連客はそれに淡々と座って「ごちそうさまー」だけ。


こうなると今まで冷静を装ってきた店主ももう限界。店主は、山菜そばのオーダーに対して、近所の小学生4人を提供。「はいお待ち」。だけど常連客は彼らと淡々とウイイレで遊んで「ごちそうさまー」だけ。ごちそうさまーって何じゃああああ!!とニトリの時に言いたかったツッコミを思わず叫んでしまう店主。
それならってことで店主は、山菜そばのオーダーに対して、レゴを提供。「はいお待ち」。だけど常連客は淡々とレゴを組み立て、見事な城を作り上げて「ごちそうさまー」だけ。うおーこいつ何も見ずにウインザー城を組み立ておったでえええええええ!!!
次に店主は、悲壮な覚悟を持って、山菜そばのオーダーに対して、自分の嫁を提供。「はいお待ち」。だけど常連客は淡々と嫁と性行為に及んで「ごちそうさまー」だけ。ごちそうさまーはこの場合あってるじゃねえかこのヤロォォォォォォ!!てかお前ウチの嫁で満足なんかーい!!なんかすまんな・・・泣き叫ぶ店主。
もう半狂乱の店主は、山菜そばのオーダーに対して、倉科カナを提供。「はいお待ち」。常連客は淡々と倉科カナと性行為に及ぶ・・・・としたその瞬間、倉科カナファンが乱入して常連客をボッコボコにし始めるともう店内は大変。ドッカンドッカンやってるうちにそば屋のセットがズカーンと崩れて、例のドリフの転換曲が流れてドカーンと大爆発。
で、髪がチリチリ、顔はすすだらけの倉科カナが「だめだこりゃ!」というまさかのドリフオチ。


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でお送りします。