マイマイ新子と千年の魔法

かつて原恵一は「クレヨンしんちゃん モーレツオトナ帝国」で「過去にとらわれず今を生きる」という事を描いた。対して、いや同じく、か。この作品は「ただ今を生きる」という事を描いてる。そう、これは過去がどうのこうのとかノスタルジーだとか、そういう事では一切ない。圧倒的な進行形の物語。子供が生きる、物事を知っていく過程の記録なのだ。
この作品が観る者の胸を締め付けるのは、過去の郷愁ではなく、過去を捨て去って人は変わって行かなくてはならない、という事をひたすら描いているからだと思う。変わっていく事は悲しくて不可避だって事を、経験していれば経験している程、胸の締め付けは強くなっていくのだろう。
あと、主役・新子の声を担当した福田麻由子の素晴らしさについて、声を大にして絶賛したい。俺は以前から彼女の魅力は声にあると思っていたけど、これを観て再確認。この声はもっと色んな所で使われるべきだと思う。素晴らしいよ。


この作品、配給元の宣伝のやる気の無さのために、その存在自体が知られていないにも関わらず、観た人たちに強烈な印象を与えて口コミで広がっているという理由が、よく分かった。これは必ず何らかの形で評価されるべきだね。今、東京ではラピュタ阿佐ヶ谷という凄く小さい劇場のみでやってるけど、全国行脚が終わった後、もっと大きな劇場でかかってくれるといいなあ。