【プレビュー】10年第1節 川崎戦@等々力

まずは去年全ての日程を終えた後で書いたエントリーから引用。

淳さんの退任が決まってからずっと考えてる事がある。それは「淳さんがアルビレックス新潟にもたらしてくれた最大のギフトは何だろう?」って事。

それは例えば、アグレッシヴなプレスと奪ってからの効果的な速攻、サイドバックがビルドアップに絡む分厚いサイドアタック、センターバックボランチのトライアングルで作る屈強な真ん中の守備、ラインが下がって袋叩きにあっても絶対に失点を許さない精神的な強さ、そして粘り強いプレーをやりきるスタイル…などなど、いくらでも挙げられるだろう。

だけど、一番のギフトは「自分たちのサッカーを表現すれば勝てない相手はいないという自信」だと俺は思う。

淳さんに代わって劇的に変わったのは、もはや監督の代名詞でもある「ぶれない」ということ。ぶれないって事はつまり、自分たちのスタイルに覚悟を持つということ。自分たちの力を信じるということだ。

戦力・資金力を考えれば、実際強豪チームと比べて新潟が劣っていることは否めない。だけど、そんな中でも自分たちのサッカーをじっくり構築して確固たる軸を作り、その軸の上に相手のスカウティングから導いた答えを毎試合乗っけて戦うというスタイルを、4年間の全ての試合でやり通した。たった一つのぶれもなく、4年間での170試合近くの全てを、相手が下位チームであれ、ガンバ大阪であれ、鹿島アントラーズであれ、全く変わらずやり通した。

そしてそのスタイルで勝利を手に入れてきたんだ。生存競争をそのスタイルで強かに生き残り、今年に至っては首位争いをずっと演じることができた。相手への過度の畏怖や、不細工なコンプレックスなんて、もう僕たちには必要ない。それを教えられたのがこの4年間だったと思う。僕たちの相手はあくまで日本の同じカテゴリーの中のチームだ。鹿島にダブルを食らわせちゃうことだってできるのだ。カンプノウバルセロナと対戦しろって言われてるわけじゃない。そう、そんな中なら不可能なんて何もないはずなのだ。

だから僕たちのこれからの使命は、その記憶をただの甘美な思い出にしないことだと思う。淳さんの残してくれたこのギフトを、遺産を、自信と誇りを、これから続くアルビレックス新潟の歴史の礎にしなければならないと思う。

もしかすると来季以降、戦力が削がれてしまうこともあるかもしれない。財政面がもっと厳しくなっていくかもしれない。だけど、今年手に入れたこの自信と誇り、間抜けなコンプレックスを全て一掃させてしまうこの財産だけは絶対に失っちゃいけない。どうあがいてもトップに追いつけない戦力だったとしても、この心構えだけは失っちゃいけない。


このエントリーの内容は、あの劇的な天皇杯の清水戦、つまり淳さんのラストゲーム後の感傷的な気分が完全に抜けた今でも、心からそう思う。アルビレックス新潟に関わる全ての人が、今年絶対に忘れてはならないのは、去年のスリリングな上位争いの経験、どんな強豪でも自分たちのサッカーに信念を持ってぶつかり、勝利を手に入れてきたあの自信と誇りの記憶だと思う。
あれはもはや「いい思い出」では一切ない。俺たちの貴重な経験だ。相手がどこだろうが、こっちが勝利しか求めない姿勢を崩さない限り、このチームが何かを達成することなんて未来永劫無いと思う。


それはこの開幕戦の川崎戦だってそうだ。勝つぜ。勝つしかねーぜ!!!!!!!




さて、今年の川崎のシステムは4-3-3がベースになるだろう。3トップと言っても、去年の新潟のように両ウイングが常に相手のサイドバックにプレッシャーを与える位置を取っているようなスタイルではなく、もっと横に自由にスライドする事を許容する形だろう。
これは川崎の前線の選手たちの特徴、特に1対1で仕掛ける事が出来る個性が揃っているという事を全面に押し出すための形であるのは間違いないだろう。でもそれ以上に、これは川崎らしいカウンターをよりスムーズに仕掛けるための形なんじゃないかと思う。
川崎のカウンターはとにかくピッチを広く使って、相手が守備の際にポイントを絞りにくい攻撃を仕掛けてくる。そうやって相手の組織を曖昧にさせて、その結果できた守備の穴を狡猾に人数をかけて突いてくるという寸法だ。何でも、関塚元監督は川崎のカウンターの秘密を聞かれて「ヒミツだけど、ヒントを上げるとすればポジショニングかな」って言ったらしい。それは多分、相手の守備の絞り込みから逃げるポジションを取って、出来るだけ相手の守備に広大なスペースをっ作らせてしまおうって事なんだと思う。
先日のACL城南戦で顕著だったけど、カウンターの時はとにかくこの3トップがワイドに位置を取って、相手の守備の隙間を狙って前へと突進してくる。そうやってパスコースに選択肢をたくさん作ることに専念し、カウンターの効果を高めている印象だ。
なので、カウンターになった時はとにかく前の3人の動きを見落とすことなく、こっちが今作ってしまっているスペースを把握する事が重要だろう。多分相手の3枚に完全にガッチリとマークに付くことは不可能だ。だけど、危険なスペースを把握して、最終的に相手がフィニッシュに持ち込むであろうポイントをしっかり抑えることは、集中力と視野で達成できるはず。これはもう新潟のチーム全体としての守備意識とスペースを埋める意識が問われる事になる。
そして何故この意識が重要かと言えば、実はこの今年の川崎型4-3-3のカウンターにおいて最も重要なポイントは、3トップの後ろから飛び出してくる2枚のセンターハーフ(おそらく谷口と田坂の2人)の攻撃参加だからだ。さっき川崎のカウンターは「相手の組織を曖昧にさせて、その結果できた守備の穴を狡猾に人数をかけて突いてくる」ものだと書いたけど、その穴を突く役割こそがこのセンターハーフ
なので、前の3人だけに気を取られて後ろから飛び込んでくる2枚を注視しなければ痛い目にあうだろう。つまり、前の3人の攻撃を跳ね返しても、その後ろのフォローを重視してくる川崎の攻撃はそれで終わらないという事だ。
このセカンドボールの対処や、バイタルにスペースを作ってしまうという課題は、先日のPSM清水戦で最も目立った点。特にサイドバックの前のスペースを埋めるサイドハーフの役割、三門が前にポジションを取った時に、そのスペースをオートマティックに埋める役割って部分を、明確にして試合に臨みたい。この辺はこの1週間で修正してきた所を、存分に見せるべき所だ。
あ、あとこっちのセットプレー崩れのカウンターには十分気をつけること。去年からそうだけど、川崎はこのポイントをものすごく狡猾に、チームとして狙ってくる。セットプレーは最大のチャンスであると共に、最大のピンチとも隣合わせだってことを認識すべきだろう。



対して攻撃で狙いたいのは、川崎の今の最大の弱点である「攻撃から守備に移り変わった時に、DFラインと中盤の間にスペースを作りがちになる」って点を上手く突いて、そこに素早くポイントを作って縦に速い攻撃を仕掛けていく、って所。
これまた先日の南城戦の話になるけど、あの試合で城南がひたすらやったのは、ボールを奪ったら中盤のおいしいスペースにボールを運んで起点を作り、そこから一気に相手のDFラインの裏へとボールを送り込んでアタッカーが走り込むって形。それをとにかく繰り返しやっていった結果、川崎の守備にギャップが出来た所を上手く突いて得点を挙げて勝利した。
新潟がやりたいのも全く同じだろう。先日のPSMの内容や選手・監督コメントでもハッキリ示されてるけど、今年の新潟の攻撃の原動力は、アタッカーがとにかく裏を狙うランニングを繰り返すって所だ。この試合ではマルシオが欠場の見込みで、多分4-4-2で臨むことになりそうだけど、重要なのは4-2-3-1で戦った時と同じく、特に両サイドハーフがとにかく裏を狙ってボールを引き出す動きを繰り返す事だ。多分サイドは河原とヨンチョルが選択されると思うけど、彼らが起用されている理由は、そういうアタッカー的な動きが出来るからだろう。そして、これがクロさんの戦い方の中で、今のところ最も顕著に表れているスタイルだと思う。
なので、この試合のポイントは攻守両面でサイドハーフだろう。多分ずっと走りっぱなしの試合になると思う。相当しんどいだろう。だけど、オールアウトになるまで全力で走らなければ、この試合の勝利は見えてこない。今年はこのサイドハーフの位置に面白い補強が出来た。マサルミシェウや、三門がサイドにスライドするってこともあるだろう。だから恐れることはない。河原もヨンチョルもとにかく走ってくれ。そして俺たちは全力でそれを支援することを怠っちゃいけないだろう。彼らが勇気と意志を持って走ったら、しつこいくらいの拍手を送り届けるべきだと思う。



というわけで新たな船出のスタート地点。そこには勝ち点3以上にふさわしいものはない。勝とうぜ。絶対に勝とうぜ。川崎叩いて好発進するぞおっらああああああああああああああ!!!!!!!