【レビュー】10年第1節 川崎戦@等々力

川崎フロンターレ 2-1 アルビレックス新潟
スタッツ
黒崎久志監督 試合後コメント


やっと風邪が落ち着いたのでこれが書けます。はーきつかったぜ。
注目されたシステムだけど、新潟はマルシオの不在もあってかオオシと貴章の2トップの4-4-2でスタート。
試合はいきなり動く。前半の28秒、チョンテセのキープから、左の黒津へとスルーパスが出ると、ヒロシがそこに付き切れずに黒津に裏を取られてシュートを許すと、黒河はパンチングを選択。しかしこのパンチングは、よりによってレナチーニョの真ん前にこぼれ、そのリバウンドを拾ったレナチーニョが巧みなタッチで切り返してシュート。黒河一歩も動けずに失点。
これ、黒河もコメントで出してるけど、ゲームのファーストタッチがいきなり相手の決定機と言う死ぬほど難しい中で、雨もあって最初にパンチングを選択したのは凄くよく分かるし、開幕戦の一発目からこういうピンチを迎えるって事が精神的にも凄く難しかったのはよく分かるんだけど、あの位置にこぼすのはマズかった。こういうプレーは、この試合だけでなく、今後の話として、相手がスカウティングで「シュートがこぼれるから必ず詰める事」ってのを設定して戦う事につながる可能性があるのが怖い。得点をたくさん取る選手はすべからくそういうリバウンドを狙っているものだけど、そういう選手がいないチームでも、「ここを必ず狙う」って意識付けをされた状態で試合に臨まれるのはやっぱイヤだ。
だからそうならないためにも、セービング、特にパンチングに関してはこの反省をしっかりやって精進してほしい。超頑張れ黒河。超頑張れ白井さん。


いきなりのゴールでアドレナリンが出まくったのか、川崎はイケイケで攻めてきたのだけど、いきなりの失点に浮足立つ事もなく、その後数分間の新潟は冷静に試合を進める事が出来ていたと思う。ゴール裏が仕切り直しでもう一回w、ド頭からPRIDE OF NIIGATAのコールを切ったのもすっごく正しかったよね。たいしたこたーない。もう一回仕切り直し。
この時間帯から目立っていたのは(そしてこの試合の新潟の原動力となったのは)ヨンチョルとうっちーで構成された右サイドのユニット。川崎は前からかなりプレスをかけてきて、新潟のDFラインのボール回しからの縦パスを狙い続けていたのだけど、ヨンチョルが上手くポジションを取り直してボールを受ける事が出来ていた。後述するけど、この動き直しの有無が活性した右サイドと死んでしまった左サイドの違いの正体だったと思う。
6分にはオオシのポストプレーとバイシクルのパスに反応した貴章が、寺田を背負いながら右サイドでフリーで抜け出したヨンチョルへとヘッドで流し、ヨンチョルが溜めてセンターの貴章へとパスを出すもオフサイド、っていう良いシーンを作り出し、8分には相手の3枚のセンターハーフの横のスペースで上手くボールを受けたヨンチョルがフリーで前を向いて、そこにすかさずうっちーがオーバーラップを仕掛ける、って形で起点を作ることから始まった攻撃で、最後は左サイドからヒロシのクロス→オオシがヘッドも上に大きく外れる、っていうこれまた良い形を作ることに成功する。
そして13分。これまた中盤のスペースで上手くボールを受けたヨンチョルがドリブルでキープしながら前を窺う。そのドリブルの行く先をセンターへと移行し始めた所で、右の空いたスペースにうっちーが走り込んで、ヨンチョルからのパスをワンタッチでクロス→貴章がドンピシャのヘッド炸裂!!!も、わずかにオフサイド、っていう決定的なシーンを作りだす。
これはまさに鈴木淳体制でもやってきたサイドアタックの形であり、黒崎体制でも攻撃の核となる要素が存分に詰まった攻撃だったと思う。そしてこのヨンチョルとうっちーの関係は、後半の圧倒的な新潟ペースの布石そのものだった。


しかし17分の黒河の致命的なキャッチミスと、こぼれ球をチョンテセが押し込むだけのシュートを失敗したあたりから、流れが再び川崎に移行し始める。この時間帯から、川崎はとにかく前からプレスをガシガシ仕掛けてきた。特に真中の3枚=稲本、谷口、田坂がぐいぐいと網を仕掛けてくるようなダイナミックな守備を見せ、それに呼応するように川崎のDFラインも高い位置を取り始めると、新潟が使いたいスペースがどんどん狭まっていく。
そして21分、中盤の低い位置でボールを受けた河原がルックアップすると、前へのスペースへと勲が走りだす。河原はそこへのチャレンジングなパスを選択するのだけど、その時間帯で川崎が仕掛けた網に完全に引っかかり、そのパスをカットした稲本が、河原を交わして一気に前へと突進。勲が前に上がってる、河原も最初のタイミングで稲本にいなされるという、パスミスの後で考えうる最悪のプレーで後手を踏んでる、って状態でスッカスカになったバイタルエリアに攻め込んだ稲本から、右の黒津へ勝負パス→完璧なシュートで2-0。川崎が欲しかった2点目を奪うことに成功する。
このシーンもそうだけど、河原はこの試合で何度自陣のスペースに気を払って守備に参加したか。何度しんどい動き直しを繰り返してスペースを作ってボールを受ける動きをしたか。何度体を張ってチームに貢献したか。そして何故自分が明らかに相手のプレスの標的にされたのか、って事をもう一度考えなくてはならないと思う。この試合でどうして右サイドが活き活きしたのか。そして新潟の得点シーン、うっちーが流れの中で中にポジションをとっていたのを見て、オーバーラップを仕掛けた小宮山を見逃さずに貴章が猛然と併走して彼への選択肢を潰したことで、千葉ちゃんがテセに対してチャレンジングなスライディングを選択できた、って事の意味。もう一度熟考しなくちゃいけないと思う。超超超頑張れ河原。


そのあと前半終了までは川崎ペースが続く。そのあとの新潟の守備は、クロスの対応、セットプレーの対応にもろさを見せるシーンはあったものの、川崎の最も得意とする速攻に対しては落ち着いた対応を見せる事が出来ていた。そして千葉ちゃんは千代の不在なんて完全に忘れさせてくれるような素晴らしい出来だったと思う。対人の強さと、体の入れ方のうまさは存分に見せてくれたし(37分の黒津のカウンターへの対応なんて最高)、そしてフィードや縦へのもパスも凄くよかったと思う。千葉ちゃんと永田さんのコンビはこれからもっと上がっていくだろうし、新潟のストロングポイントの一つとして成長していくのを期待していいだろうね。ま、問題はそのバックアップなんだけども。




そして後半。何でもハーフタイムにクロさんが「球際!!!!てめーるぁぁぁっぁ!!球際もっと行けやこのボケェェェッェェ!!!!!!」という喝が入ったとのこと。さすがだぜクロさん!
後半は川崎のFKからテセのヘッドで幕を開けたのだけど、返す刀で48分、右サイドからのFKからクリアボールが貴章の背中に当たったのを川島が掻き出したのをきっかけに、そこからは圧倒的な新潟ペースへと移行する。何でも最終的なポゼッション(ニッカンスポーツ調べ)だと、58:42で新潟が勝ってたらしい。たしかに後半はほぼハーフコートマッチの様相を呈していたしね。
これは川崎がACLの影響もあって運動量が落ちたのが一つの要因。そしてもう一つは、クロさんのコメントでもあるけど、前半ヨンチョルが上手い事突いていた稲本の横、つまりバイタルエリアのスペースに上手く選手が入り込んで、セカンドボールを拾い、相手の守備を後ろへと追い込み続けたって所だと思う。
これはクロさん、監督デビュー戦からナイス指導って所だろうね。前半のよかった部分と相手の弱点をしっかり精査したって事だし。
53分にはCKから貴章と伊藤の競り合いで決定的な形になりかけ、その次のCKで千葉ちゃんが決定的なヘッドを放つも川島が掻き出す。
54分にはヨンチョルのキープ→うっちーが右を走る貴章へスルーパス→クロスにオオシと河原が飛び込む、って良い攻撃の形。
56分にはこの試合でバイタルのスペースを誰よりも的確に把握して、後半のハーフコートマッチの立役者となった勲のミドルシュートのトライ。やっぱ今年も勲は天才だ。
58分には相手のバイタルを前半から突き続けたヨンチョルが、右からそのバイタルへのドリブルを選択して切れ込んでそこからミドルシュート
60分には左の河原のクロスから、センターのオオシが伊藤に競り勝って高い打点からのヘッドも川島がキャッチ
・・・・とまあ、怒涛の攻撃を見せる。やっぱりこの時間帯で大きかったのは、バイタルに選手が入って、その結果川崎の選手が真中に引っ張られて出来たサイドのスペースに選手が入って分厚い攻撃が出来たって所だよね。これは前半もそうだったけど、やっぱりこの形は鈴木淳黒崎久志の歴史で受け継がれてきたものだろう。そしてそのサイドの縦のユニットが機能しないと攻撃も守備も上手くいかない、ってのは結果的にこの試合の左サイドが証明してしまったよね。逆に言えば、それが機能すればこのチームは強いって事だ。それが明確になった意義はとても大きいと思う。

で、その攻勢を見てベンチが動く。61分、河原に変えて秘密兵器ファグネルがリフトオフ。オオシとファグネルの縦関係っぽい2トップに、左が貴章、右がヨンチョルという構成に。


そしてその直後、ついに新潟が試合を動かす。圧倒的な新潟ペースから川崎がカウンターを狙って上がった所で、千葉ちゃんがテセに完璧なタックル。そのこぼれを拾ったうっちーがルックアップしながらドリブルで持ち上がると、相手のラインが乱れているギャップを突いたヨンチョルに完璧な勝負パスを通す。完全にフリーで抜け出したヨンチョルは、若干角度が厳しい位置ながらも右足を振りぬき、そのボールは川島の手を弾いてネットに突き刺さる。2-1。
これ、現地で観てた時も鳥肌が立って、スカパーでもバッチリ映っててまた鳥肌が立ったんだけど、ボールが天井のネットを揺らした時にネットに溜まってた水滴がぶわーっと水しぶきとして上がったんだよね。黒崎久志体制のアルビレックス新潟の門出を祝うべく、ずっと空けるのを我慢してたシャンパンのコルクを、快哉を叫びながら抜いたような、そんな印象的なシーンだった。


そうなると後はもう同点弾を狙うのみ。65分には中盤で谷口をまた抜きで交わしたヨンチョルを起点に、ファグネルから完璧なスルーパスが三門に通る→右からクロス→オファーのオオシがバイシクルで折り返して、最後は貴章ヘッド!!も、寺田に弾かれる、という決定的かつ流麗な攻撃を繰り出す。
あーそうそう。ファグネル。彼は凄く面白い存在だよね。噂通りのフィジカルの強さと強靭なバランスとドリブル、そして何よりそのスルーパスや、66分の左の貴章へのスルーパスのトライもそうだけど、公式戦1試合目からいきなり状況を把握して的確な選択が出来るセンス。このフィジカルとセンスってのは、間違いなく計算できる選手には必須の条件だよね。あれならトップでもちょっと低い位置でも使えそうだし、オプションって観点から見ると、もしかすると今年のキーマンになるかもしれないね。楽しみだ。


この状況を見て川崎は70分、レナチーニョに代えて登里。この登里って選手はこの起用、そして先日俺が麻生グランドへ練習を観に行った時の印象もそうだけど、結構期待されてる選手っぽいね。この試合ではさしたるインパクトは感じなかったけど。その交代の後も新潟ペースは続く。その勢いをさらに乗せるべく、クロさんも78分ヒロシに代えてゴートクを投入。
79分、ファグの果敢なドリブル突破で得たFKをうっちーが素晴らしいボールで川島を強襲。ファグのこれは武器になるね。

そのあとも相変わらずの新潟のハーフコートマッチ。これ、永田さんと千葉ちゃんの完璧なファーストディフェンス、それと勲の的確な状況判断と、三門の尋常じゃない運動量をベースにした踏ん張りが大きく寄与していた事は強調しておきたい。こういう守備が出来るなら、今年もセンターラインは全幅の信頼を置いて良いってもんだよね。
90分、オオシに代えて慶行投入。これはずっと相手のDFラインが低い位置になって、バイタルに選手が入れていた状況を見て彼が得意とするミドルシュートに期待したってのと、あとは最後の一発のセットプレーに期待したって事なんだろうね。
しかしその後、決定機を作ることはできずにロスタイムの4分を終えて試合終了。2-1。黒崎監督の船出は黒星でスタートすることになった。



でもこの試合は、「黒崎久志体制のアルビレックス新潟が何を目指しているか」を明確に見せてくれた凄く意義のある試合だったと思う。だからこそ、さっさと一勝目を挙げておきたい。「惜しい」が続くのは好ましくない。となればそれはもう次の試合しかないよね。ジュビロ戦、絶対に勝ちましょう。そこがこのチームの、本当のスタートだ。
あ、あとイマイチだった前半から、後半あれだけ怒涛の展開を見せたのは、やっぱりこのチームの経験がものを言ったところだよね。やっぱこういうのが「経験の有無」ってやつの差だよね。これはあまりに安易な比較かもしれないけど、06年の6-0と10年の2-1の差は、やっぱり経験の差だと思う。うん、やはり俺たちは過度に恐れることなんてないんだよ。俺たちは色んな経験を積んできてるんだ。少しずつだけど、このチームとチームに関わるすべての人たちには蓄積があるんだ。もうやるしかねーよね。うん、やってやろうぜ。