【レビュー】10年第2節 磐田戦@スワン

アルビレックス新潟 1-1 ジュビロ磐田
スタッツ
黒崎久志監督 試合後コメント

勝ちたかった。本当に勝ちたかった。このチームにとって、2試合連続で「良い試合」が出来たからこそ、黒崎体制になった船出であるからこそ、そしてマルシオ不在のジンクスを吹っ飛ばす意味でも、本当に勝っておきたいゲームだった。


試合開始の1分、いきなり新潟がチャンスを作る。右サイドラインギリギリにヨンチョルがボールを持ち出すと、相手の2枚のマークの間を縫って素晴らしいクロス。それに貴章がドンピシャのヘッドで合わせるものの八田がナイスセーブ。この一発を切っ掛けに、序盤は新潟がペースを握る。
前線からのプレスと的確なファーストディフェンスでセカンドボールを拾って磐田にペースを与えず、ボールを奪ったらバックラインと勲を中心としたボール回しでポゼッションを高めつつ、期を見てオオシへの縦パス、両サイドハーフへの展開を加えて相手を押し込んでいく。ジュビロも12分に前田のポストから那須のシュート、15分にCKの崩れからイ・ガンジンのシュートなど単発での攻撃は仕掛けるものの、ヨンチョルとうっちー、河原とゴートクのコンビで構築するサイドの守備、そしてイ・グノの飛び出しを完璧に把握していた両センターバックは凄く安定して試合を進める事が出来た。
そうなると新潟のポゼッション率はどんどん上がるのだけど、この試合で最も2010年アルビレックス新潟の特徴を発揮したのは、DFラインを含めたビルドアップの部分だったと思う。左右にボールを振り分けながら、全員が連動して、ポジションを取り直しながらパスを回し、前述したようにオオシに入ったタイミングやサイドハーフが触ったタイミングで一気にスピードアップして攻撃を仕掛けていく。
で、この試合で最も輝いたのは千葉ちゃんだったと思う。守備面での貢献は当然のことながら、バックラインでのパス回しから、一発で縦にスピードアップするパスのクオリティは見事だった。やっぱりバックラインでのパス回しとビルドアップってのは、どこかで一気に縦にスピードアップしないと脅威にはならないんだよね。特に新潟は、オオシというターゲットに入った瞬間に攻撃のスイッチが入るようなところがあるので、そこへのパスのクオリティとタイミングが重要になる。
これ、今までは勲やうっちーがよくやってたと思うんだけど、今年はそれに千葉ちゃんと言う出し所が確立された印象を受ける。ああやってダイレクトに前に叩ける選手が一枚増えるだけで、あれだけビルドアップの質が上がるというのはちょっと目から鱗だった。もちろんそれは、チームとして動き直して連動するって言うコンセプトを重視してるからこそ、ってのもあるんだけど、その中で千葉ちゃんと言う「個」が輝いてるってのも大きいだろうね。(そういや解説の淳さんもすげー褒めてたよねwwてか淳さんの解説めちゃくちゃよかったなあ。下田さんとのコンビは抜群だ。もう古俣完全アウトでお願いできないかなあ。無理かな。)

モバアルや色んな情報から伝え聞く「2010年のアルビレックス新潟のテーマ」っていくつかあって、それは例えば「ゴール前でのパワー」だとか「若手の突き上げ」だとか色々あるけど、その中でも「バックラインからのビルドアップ」ってのを、この2試合でまず見せてもらった感じだね。ま、あくまで「見せてもらった」だけであって、完成しているとはまだまだ言い難いんだけど(そしてそれがこの試合を勝ち切れなかった原因の一つだと思うけど)、これは凄くポジティヴにとらえるべき所だろうね。


で、それに加えて、18分の河原が左サイドで切り返してシュートを放ったシーンのように、相手のボールを跳ね返した後での速攻時の連動も非常に上手くいっていた。その18分のシーン、千葉ちゃんのヘッドをヨンチョルが胸でオオシに落とし、オオシが勲へ流すと、勲がそれをワンタッチで左に流れたヨンチョルにパス→左に走った河原にパスで、切り返してシュート、って流れだったけど、これは全員のポジション取りと連動が結実した見事な形だったと思う。
19分の、勲の天才的なパスカットから、ヨンチョル→うっちーと繋いでクロスが入り、最後に河原がフリーでヘッドを放つも枠外、ってシーンもそれだよね。河原、あれは「うっしゃー!!」って思っただろうなあ。俺もガッツポーズ作って椅子から立ち上がりかけたものww。あれ決めてりゃヒーローなのに!


そのチャンスの後、磐田も少しずつペースを取り戻し始める。しかし前田はピッチ条件もあってか、ボールがまだおさまらずにフィットしきれていなかったし、イ・グノの飛び出しも相変わらずセンターバックが抑えているので、磐田の生命線である2トップは機能せず。34分にCKからイ・ガンジンにヘッドを打たれるものの、千葉ちゃんが体をつけていて難を逃れる、って形以外は決定的な形を作らせない。
それとやっぱりこの試合のプレビューでも書いたとおり、この試合の守備のポイントはサイドだったと思うんだけど、前述の通り、左右ともサイドハーフサイドバックのユニットは上手く機能していたし、左に勲、右にミカっていうボランチのフォローも良好。それに攻撃面でのサイドの連動も良好で、相手のサイドアタックは殆ど有効な形を作らせなかった。


そのイ・ガンジンの決定的な形から前半終了までは、またしても新潟が素早いプレスと、連動したパス回しでポゼッションを高めてゲームを支配する。36分、37分、38分の連続CK、41分には、これは俺がプレビューでも書いて河原も「スカウティング通りだった」と明言している、「相手のバイタルが空く」という悪癖を突いた、河原のミドルシュートのトライ、43分には3対2の決定的なカウンター・・・などなど形を作って、良い雰囲気で後半を迎えることになる。




後半、磐田は左の船谷に代わって山本脩斗。うっちーとヨンチョルに散々やられまくった左サイドに手当てをしてくる。そういや去年は山本脩斗がやられまくって前半でお役御免だったよね。この辺に磐田の苦しい所を感じるな。
後半も序盤から新潟が前半のようなポゼッションを見せてペースを握る。
52分、ゴートクと河原の絡みで左サイドに起点を作った結果、ぽっかり空いたバイタルに勲が走り込む。そこで溜めて溜めて、三門がラインの裏に走ったタイミングで勝負パス。三門がGKと1対1になりかけるも若干窮屈で、八田はCKに逃れる。勲天才。
そしてそのCK、河原のキックはゾーンで守る磐田の隙に飛び込んだオオシの頭にドンピシャで、フリックオン気味に流し込んだヘッドは右サイドネットを揺らす。新潟先制!!あれさ、淳さんが前半にちらっと言ってた「前田の前を狙っても面白いんじゃないですかねえ」のまんまだよねwww淳さん流石すぎるwww


そのあと数分間は一気に熱が上がったスワンの雰囲気に呼応するかのように、圧倒的な新潟ペース。55分、ヨンチョルがセンターに流れた河原とのワンツーで一気に左へと持ち出し、それをゴートクがフォロー。得点のCKにつながった勲→三門の時と同様、その絡みで左に起点を作ったことでまたしてもぽっかりと空くバイタル。そこに流したボールを三門が完璧なインパクトでミドル!!しかしそれは八田のグッドセーブに弾かれる。見事な連動と、スカウティング通りの素晴らしい狙い。


61分、磐田は西に代えて松浦。この攻撃的な交代のメッセージを受けてか、63分、新潟は河原に代えて慶行。三門が左サイドにスライドする。クロさんのコメントにもあるように、これはこれまでの時間通り、ポゼッションを高めてゲームをコントロールすることで試合のクローズを図ったんだろうね。
65分にイ・グノのミドル、66分に前田のヘッドと、磐田の攻撃の圧力がちょっとずつ増して来るのだけど、そうやって流れを奪われかけても、この試合の新潟は後ろ5人のパス回しと、そこからの素早い縦への展開で相手をいなす事が出来ていた。ただ、この時間帯からその「縦」が性急に行き過ぎる感があったのは否めないと思う。1-0でリード、残り20分くらいって状況なのにね。
それは今日鹿島の試合を見てて、よーく分かった。鹿島はこういうシチュエーションなら、絶対に生き急いでボールロストを増やす事なんかしないんだよね。この「リードしている時の縦への性急さ」って、実は去年の課題の一つでもある。あの悪夢の川崎戦、山形戦を思い出すまでもなく。結果的に、この試合ではそれが大きな事故にならなかったけど(というか別の事故がこの後起こってしまうのだけど)、それは考えなくてはならない所だと思う。慶行の投入だって、それを防ぐ手立ての一つだったはずだしね。
多分、2点目が獲れなかったのも結局ここが一つの原因。もっと広くビルドアップして、高い位置にサイドバックを張らせるという、前半良い形を作った時のような形をもっと作っていれば、磐田はもっときつかったんじゃないだろうか。それともっと前でアクセントを作れる存在の必要。この辺は、マルシオの復帰によってずいぶんと変わってくる所だとは思うけどね。ポゼッション能力のアップは間違いない。動き直し、連動も良い。そこまでのベースはこの2試合でしっかり表現できるようになった。だけど、それだけじゃ殺傷能力はまだ物足りない。相手を殺せる武器がもう一枚必要。となるとそれはマルシオしかいないよね。まあだからこそ、マルシオ不在のこの試合で勝てれば本当に大きかったと思うんだけどね。自信と言う意味で。



とは言え、新潟がペースをまだ握った状態で試合は進んでいたのだけど、69分、この試合を左右する事故が起きる。相手のFKを跳ね返した所で貴章のスパイクが黒河の顔にヒットして負傷。ずいぶんと長いインターバルが出来てしまう。結局黒河がダメで東口投入。東口にとっては、勝ちたい試合で1点だけのリード、そしてものすごい雨と難しいピッチコンディションの中で、急遽途中出場、というデビュー戦としては考えうる最悪の状況で出場となった。
こういう状況でGKにとっては、ファーストタッチがとても重要になる。なので出来るだけ早く東口がプレーに関与するシーンが来ればなあ、出来れば「そんなに難しくないんだけど、見た目が派手なセーブが出来るシュート」が飛んでこないかなあ、なんて思ってたんだけどw、不運な事に最初のタッチはGKにとってはノーチャンスのCKをニアで完璧に合わせた那須のゴール。これはもう本当に不運としか言いようがない。


そのゴールを分水嶺として、試合は膠着することになってしまう。結果的には、黒河の怪我の治療と言うあのインターバルが、ゲームの流れをリセットしてしまったのは間違いないと思う。そして1-1になったことで、磐田が開き直って守りに入ったのもあると思うけどね。つくづく不運としか言いようがない。
結局、この後の試合終了までの15分強は新潟のシュートは一本もなかった。86分、ヨンチョル→ファグネルという最後のカードを切るのだけど、それも大きな影響を与えることはできず。



これまで以上に、いやもしかすると、過去最高レベルでビルドアップの部分は熟練したチームかもしれない。そこまではOK。それが出来るって事は、そのあとにどんなサッカーをも実践できるベースが出来てきた、って事だからね。だけどまだまだクロさんが就任して最初に言及していた「勝ちきるチーム」そして「ゴール前でのパワー」って部分は見せてもらっていない。間違いなく進む方向はいい方向に行ってる。「いい内容」って言える試合を実践できてるのは間違いなく素晴らしい。だからこそ、その「いい内容」をチームの推進力にする自信に変えるための勝利が欲しい。
1勝、1勝、1勝!!!!今必要なのはそれだけだ。出来るだけ早く、その1勝を手に入れるしかないよね。
そしたらそれは来週だね。来週万博でそれを獲ろう。1勝を手に入れれば、このチームはもっと成長するはずだよ。間違いない。