第9地区

俺様採点:3
うーん、期待したほどじゃなかったなあ。せっかくのエイリアンっていう設定を最後まで上手く使えず終いだよね、これ。特にクライマックスの戦闘シーンが、エイリアンが絡んでる意味が殆どない「銃撃戦」になってしまってるのが残念。エイリアンしか使えない武器を被弾した時の、パチーンと肉片を飛び散らして破裂する演出は、おおっ!となったけど、それは最初のインパクトだけだし。ラスボスを倒す時に銃撃戦じゃなくてエイリアンが飛びかかって八つ裂きにするけど、ああいうのをもっと見たかった。銃撃戦じゃないだろう、ここは。
もちろん、エイリアンがステレオタイプなエイリアンとして描かれるのではなく、これまでの人類の歴史に必ず存在する「虐げられた人種」として描かれてるわけだから、人間社会的な銃撃戦に終始するのも分かる。だけど、この最初の大風呂敷がどんどん矮小化されて、それなのにちょっとずつ冗長になっていく後半の展開は、正直退屈だった。冒頭のありえない設定に疑問を感じる暇を与えずに、どんどん突き進む前半の演出は素晴らしかったんだけど。惜しいなあ。
だから南アフリカを舞台にして、いわば「新たなアパルトヘイト」を描いたってのも、ちょっとあざとく見えちゃったんだよな。最初の設定を固持してどんどん強化しながら、胡散臭さ満点の疑似ドキュメンタリーを邁進する流れで、そういう示唆的な要素を提示してくるならまだすんなり入ってくるんだろうけど、その着地点が恐ろしく中途半端だったので、ただの異物になってしまっている印象。
ああ、それと「人間の男同士の友情」じゃなくて、「エイリアンと人間の男の友情」になることで、エイリアンを登場させた意味や効果はあるかもしれないけど、結局ここでのエイリアンはあくまで「人」としての扱いだから、結局よくある「友情モノ」に収斂されてしまうんだよね。何と言うか、結局どっちつかずなんだ。半端な着地点なんだ。最後まで。
惜しいよなあ。本当に。



とりあえずピーター・ジャクソンは今こそ素直に「ブレインデッド」の魂で映画を1本撮るべき。今回は総指揮の立場だけどさ。