【レビュー】10年第17節 京都戦@西京極

京都サンガ 0-2 アルビレックス新潟
スタッツ
黒崎久志監督 試合後コメント


鬼門?何それおいしいのしらねーどうでもいーそもそもサンプル数少なすぎるからもう関係ないぜー!


まず注目だったのは京都がどういうシステムで来るか。これまでは3バックだけど限りなく5バックになってる形で戦ってきたのだけど、この試合では戦前の予想通りに4バック。で、その前に3枚のボランチが並んで、その前に宮吉を頂点にディエゴとドゥトラが並ぶ4-3-3。
だけど、結論から言うとこれまでの5-2-3みたいになって中盤スッカスカ、そしてバイタルに入ってくる選手を捕まえられない・・・という悪癖はそのまんまだった。3枚のボランチが本当に無意味に横に並んじゃうので、前節の東京の前半のボランチのように、前と後ろのスペースがガッツリ生まれてしまう。で、そこに入ってきた選手を捕まえられないので、全くプレッシャーを与えられないままDFが新潟のアタッカー陣の攻撃を被弾し続ける事になる。
しかも、京都のその3枚の中盤はひどく関係が曖昧で、時には過剰に密集してしまうのでサイドにこれまたぽっかりスペースが出来ちゃう。なのに前線のドゥトラとディエゴがそこをしっかり埋めてくれないので、新潟のサイドバックが簡単に高い位置を取り、そこで自由にボールを持って起点になれる、というシーンが続発。
なので、新潟が左サイドで起点を作って攻め込んだ時に逆サイドの大伍がガッツリ余って自由に攻撃的センスを発揮出来たり、速攻時に全く相手のプレスを受けないまま決定的なチャンスを作る、という形が前半を通して続く事になった。


試合の流れに話を戻すと、2分のマルシオの直接FKがゴールを強襲したのをきっかけに、ポゼッションする新潟と引いて守ってカウンターを狙う京都という構図。10分くらいまでは京都が前線3人の縦への推進力を活かして速攻を狙い、それに追随してサイドが上がって人数をかけて分厚い攻撃を仕掛ける形が何度か見えりる。実際、その勇気を持った縦への展開が脅威だったのは間違いない。
しかしそれをしっかりとブロックを作って、的確にアタックに行くセンターバックボランチの守備で凌いで一気に縦に速攻を出すと、あっけなく前述の京都の守備のマズさが見えてくる。
11分、そんなカウンターから、上手い事スペースに入ってボールを受けた貴章がミドル、12分には裏に抜け出したヨンチョルがキープしてクロス→マルシオがどフリーで飛び込んできて超決定的な形、とチャンスを連続で作り出す。これに限らずとにかく京都の守備が物凄くゆるい!!前半、新潟が守備から攻撃に素早く切り替えて速攻を出すシーンは、ほとんどゴールの匂いがするチャンスになっていた。
時間が進むと京都のカウンターは影を潜め、新潟がDFラインを中心にポゼッションする時間帯に移行していくのだけど、前述のように京都が新潟のサイドバックに対してほとんどプレッシャーに行けないので、自由にサイドで起点を作れてしまう。前半の大伍はダニエウ・アウベスみたいだったもんな。プレッシャーがかからないのでほとんど右ウイングみたいな位置取りで相手に脅威を与え続ける。で、これは全く京都が新潟に対してのスカウティング出来てなかったのか、やっぱり秋田監督は自分たちの事をどうにかする時間しかなかったもんなあ・・・って思ったんだけどについて角田は

「そうですね。相手のサイドバックがボールを持った時、ファーストディフェンダーがうまく決まらなかったから、後手後手に回されてしまった。でもそれは、戦術の上で、相手のサイドバックに持たすという感じだったので。でも、あれだけサイドバックに時間があれば、やっぱいいボールも出てくるし、いいボールも出てくるし。混乱があの失点にもつながったと思う」

って言ってるんだよな。戦術上、サイドバックに持たせるのはもう仕方ないって開き直って、ガッツリ守ってカウンター、って戦術を選択したってことなのかな?でもこれ、本人も言ってるけど完全に失敗だったと思う。
というか、サイドバック云々もそうだけど、根本の問題はやっぱり前述の通り3枚の中盤の横にスペースを作りすぎてるって所だろう。27分に、マルシオのシュートがDFに当たり貴章にすっげー美味しい形でボールがこぼれてきたけど、貴章がシュートじゃなくてクロスを選択してチャンスを逸したシーン(あれはアレッサンドロなら「はいどうもー!」ってドカーンと決めてるな)も、攻守が切り替わった所で右サイドでマルシオが全くプレッシャー受けずに前を向けたからだしね。
だから今京都に必要なのはシジクレイだよな。中盤で気の効いた守備をしてスペースをしっかり埋めてくれる選手が必要だと思う。中山、加藤、角田。全員そういうタイプじゃないもんなあ。あ、そういえば安藤ってなんで使われなかったんだろう。そうだそうだ、何故だ?怪我?ああいう「え?本当にシズガク出身?」って疑問に思っちゃうくらい、テクニックよりも気合と献身とハードな守備で貢献する選手を上手く活用するしかないよな、京都。まあ人の事はいいか。


そしてゴールの匂いがぷんぷんし続ける中、28分にようやく得点が生まれる。左からのビルドアップからヨンチョルとミシェウがパス交換。その前にはヨンチョルもミシェウも追い越してウイングみたいな位置取りをしてるゴートク。で、そのゴートクがマークに付いてるまっすうを引き連れて降りてくると、すかさずミシェウから裏に走り出すヨンチョルへと必殺の勝負パス。それにまっすうが気付いた時には時すでに遅しで、必死に方向転換して食らいつくまっすうを、一発で中に入るドスケベなトラップでいなしたヨンチョルがPA内に侵入。あとは全くプレッシャーを受けないままゴール右サイドに叩きこんで先制!!!相手の戦術上のミスを見逃さないサイドバックの攻撃参加、何度となくプレッシャーを与え続けたサイドでの展開、ミシェウのひらめき、今年顕著なヨンチョルのドリブルのファーストタッチの上手さと決定力。全てが見事。しかしまっすうがいる時は大抵まっすうの所で何かが起きるよね。きっと新潟の事とか大嫌いだろうなあ。でもこっちは愛してるよ!


そのゴールの後、京都は4-3-3からディエゴとドゥトラの2トップの4-4-2に変更。これでようやくサイドのスペースをシステムで埋められるようになる。33分には角田がミドルで新潟ゴールを強襲したり、まっすうが右サイドからクロスを上げたり、というシーンを作ってペースを取り戻して行く。
しかし新潟もしっかりポゼッションを取ってサイドを上手く使って攻め込み、32分にはマルシオから右ウイングばりに飛び出した大伍にサイドチェンジが入り、相手のDFと交錯してよもやPK、ってシーンを作ったりして簡単にペースを渡さずに試合を進めて前半終了。正直言って、理想としてはこれならば1点じゃなくて2点目、3点目を奪って前半で試合を終わらせるべき試合だったんだろうね。



後半、京都が前半の問題点だったサイドの主導権争いの敗北を覆すかのように、一気にサイドでの圧力を高めてくる。左の中村、右のまっすうの両サイドバックが高い位置を取り、新潟のサイドを押し込む動きを見せると、47分、その圧力を前にちょっとラインが引いた新潟に対して鬼のようなコントロールミドルシュートを放つのだけど、これを黒河がこの試合の分水嶺と言っていいような素晴らしいセーブで弾き出す。あれが決まってるのと止めるのとでは全く意味が違っただろう。素晴らしい仕事。
京都はその立ち上がりの攻勢でペースを握る事に成功。51分には左のクロスから最後はPA内で角田があわやの左足シュート。
そして54分、アクシデント発生。4審の数原武志レフェリーの指摘で、カク・テヒと交錯した後での一連のプレーのどこかに「乱暴な行為」があったとの判定でレッドカード。録画見直してみたんだけどよくわかりません。ともかく、劣勢で後半の立ち上がりを始めてしまった新潟にとってはかなりの痛手。
その直後の56分一発の縦パスに抜け出したドゥトラが折り返して、飛び込んできたディエゴが無人のゴールへと流し込む・・・と思ったら派手に宇宙開発だし、そもそもオフサイドだった、という、この試合で最も肝を冷やすシーンを作られる。前半からこの縦への推進力は脅威ではあったのだけど、一人少なくて前線のプレッシャーがこれまでよりどうしても軽くなったり、体力的な面で落ちてくる事を考えると、これを連発されるとかなりヤバイだろうという思いに駆られる。
だけど結論から言うと、この試合の新潟の守備は全く集中を欠く事がなく、見事に守備を構築して試合を終わらせたと思う。
まず素晴らしかったのはゴートク。まっすう、そして65分からは斜めにも動ける嫌な選手である渡邉大剛(正直この交代が遅かったのは秋田監督の失敗の一つだと思う)に対して、素晴らしい対応を見せて左に蓋をする事に成功。あれでまず京都の狙いであるサイドアタックの片方を殺した。
それと10人になってからのシステムの変更の仕方、選手交代も見事だった。最初は貴章1トップの4-4-1、60分にはヨンチョル→ミカで、3ボランチの前にマルシオと貴章が縦に並ぶ4-3-1-1。で、右を殺す一方でちょっと浮き気味だった左の中村に対しては、途中から貴章を右サイドに置いてマルシオ1トップの4-4-1。それで貴章が間違いなく世界レベルのサイドでの守備を見せて中村に圧勝。77分に、大伍が中村に交わされて突破しかけた所で、後ろから貴章が猛追して追いついてチャンスを潰したシーンは本当に感動した。彼はやはりバケモノだ。で、77分に慶行→うっちーでさらに中盤でのプレスを強化し、4-4-1でトップのマルシオがキープして時間を使ったり、プレスに行く時は必ずミカやうっちーが所定の位置から前に飛び出してフォローする、でもしっかり後ろはリスクマネージメントする、っていう形をずっと崩さなかった。
結局、相手にポゼッションは取られる形になったけど、ディエゴのゴールかと思ったらオフサイドだったシーン以外は本当に決定的だったシーンは殆どなかったと思う。


京都は74分にドゥトラ→森下で、カクテヒを前に上げてパワープレーやってくるのだけど、結局それを上手く使う事もなく奏功せず。ちょっと引いた新潟相手にスペースで勝負するドゥトラよりは高さで勝負、ってのは良く分かるんだけどね。

そして78分。マルシオが単独でドリブルでサイドに逃げて、さーこい、さーこい、さーこいで上手く相手に触らせてCKゲット。で、これ家で友達と観てて「これ入るんじゃねwww」って半ば冗談気味に大騒ぎしてたら、京都が嘘みたいにニアを空けまくっている。これを見て「おいおいおいおい、これ入るぞ!」とマジモードになる俺と友人の二人は、4秒後に大爆笑する事に。マルシオの蹴ったボールは期待通り過ぎる弾道でニアを突き、完全に対応が遅れたカクテヒの頭に当たってゴールに突き刺さる。マルシオの魔法を甘く見た京都に大きな罰が下る事になった。やっぱスカウティングする時間なかったんだろうね、京都。
こうして、後半1本もシュートを打たないまま追加点ゲットに成功。


あとはもうその2点のセーフティーリード(2点差は危険な得点差じゃない。逃げ切れなかったら恥ずかしい得点差だ。)を後ろ盾に、しっかりとブロックを作って守り、フレッシュなミカやうっちーはとにかく献身的に走ってくれる。あとはロスタイムにマルシオお疲れ様で、明堂デビュー。おめでとう!!!そしてこれまた明堂が献身的なプレスプレスプレス!で相手に息をさせずに試合終了。それにしても明堂は確かにテベスに見えるな。あの体は南米っぽいもんな。



という事で完勝。これから来る運命の3連戦を迎え撃つ準備は出来たと言っていいだろう。まだまだ止まれないよ。上の尻尾はもうすぐ掴めるんだ。行くぜ行くぜ!!!!!