【レビュー】11年第10節 大宮戦@ナクスタ

大宮アルディージャ 0-0 アルビレックス新潟
スタッツ
黒崎久志監督 試合後コメント
9 / 9.15 = -0.15

勝つべき試合。こういう試合で勝たないと、赤字になるわけだね。てか、今の順位を見ると、やっぱ3位以内の基準ってこの1.83という数字になってると思わない?この試合勝って1.83ペースを超えてれば3位だもんね。
勝つべき試合。だけど、非常にワクワクした試合ではある。もうちょっと。もうちょっとだね。これ勝ってれば物凄いノレた気もするけど、まあ仕方ない。あーでも勝てたよな、ってしつけー!!



試合はいきなりどでかいトラブルでスタートする。ヨンチョルがこの試合で初めて自らドリブルで仕掛けた開始2分、どうやら腿の筋肉系のトラブルのようでピッチに倒れこんでしまう。大宮はこの試合、予想された形である左=村上と東・右=渡部と藤本ではなく、左=村上と渡辺大剛・右=渡部と東という形だったのだけど、これは恐らくヨンチョル対策もあったのだと思う。それだけ、この試合は両チームにとってヨンチョルが大きなカギだったはずなのだけど、そのキーがいきなりピッチを去る。それを受けて4分、フミヤが交代で入る。超超超超祈・早期回復!
これによって、左でヨンチョルが相手を押し込んでくれるという武器を失った事も少なからずあったのだろう、前半は大宮がペースを握る。この時間帯、大宮はコンパクトな状態を保ち続け、青木と上田のボランチ2枚の位置がぐぐっと前に位置する。これによってセンターバックボランチの間でミシェウブルーノ・ロペスへのプレッシャーが上手い事かかるシーンが頻発し、対面の勲と慶行の二人もこの時間帯はリズムが掴めないまま我慢を強いられる。
そして大宮はそこでの優位性をベースに、サイドバックの高い位置取り、そしてその前でポジションを変えながら動く前線4枚の圧力でペースをがっちり握り、新潟を押し込んでいく。
しかし新潟も踏ん張る。前線で起点が作れずターンオーバーの山を築いてしまうし、ラファエルがビルドアップに対してもガッツリプレッシャーを仕掛けてくるので、ずっと息が抜けない時間帯が続くのだけど、とにかく集中を切らさず踏ん張る。何気に3試合ぶりにスタートから勲と慶行のコンビだったけど、この二人が過剰に位置を下げることなくノリノリの相手の中盤にも食らいついて自由を与えず、センターバックもそれに連動して致命的な破綻をきたすことなく踏ん張る。サイドも相手に起点を作られるものの、アタッキングサードの位置ではスペースを与えずに決定的な形は作らせず踏ん張る。フミヤもいきなりの投入、しかも左サイドでの起用だったけど、状況をよく判断して踏ん張ってくれたと思う。さて、何回踏ん張ると言ったでしょう?5回です。5回も使っちゃうほど、この時間帯の新潟はよく踏ん張った。あの流れの中で致命傷は喰らわなかったのだから。
すると29分の千葉ちゃんがカットからブルーノへ縦に素晴らしいスルーパスを通したあたりから、大宮の足が若干止まり始めた事もあって、新潟が次第にペースを取り返し始める。それまで影を潜めていたブルーノとミシェウの位置でボールが収まるシーンが増え、両サイドハーフも相手の守備に突っかけるシーンが出始めると、ボランチ2枚も優位な体勢で前を向けるシーンが増えてきた。
そして40分、左サイドで千葉ちゃんが跳ね返したボールをフミヤがワンタッチでアウトサイドで前に流したボールを、その前のゴートクがこれまたワンタッチのヒールキックでリターンを返すという、物凄いかっこいいワンツーで一気にフミヤが前を向く。そこからボールを受けたミシェウから、見事にラインを攻略して裏に飛び出したゴートクにロブの勝負パスが通るものの、わずかにキックはヒットせず。この試合最初の決定機。ゴートク凄い。長友みたいになって来たマジで。
そのプレーを切っ掛けに一気にペースを掴み返した新潟。直後の41分には、ロングボールをCBを背負いながら収めたブルーノをミシェウがフォローし、フミヤ→勲→セイヤと繋いで、最後はセイヤの素晴らしいクロスをブルーノがフリーでヘッド!!も、枠を超える。連続の大チャンス。そしてこのフリーのヘッドを外した事が、not his dayの始まりだったのだけど。
44分、ミシェウからの縦パスに、キム・ヨングォンとの走り合いを制して右へと抜け出したブルーノが手に入れたCKのセカンドボールから、セイヤのクロス→ブルーノがまたしてもヘッドで合わせるも枠外というシーンを作る。not his day!

と、そんな感じでラスト10分ほどはペースを掴み返して、前半を終える。



そして勝負の後半。後半初っ端からガッツリプレスに走る新潟と、それを受けて前半のようなバランスを保てない大宮という構図に。新潟は前半とは変わって全体が高く押し上げる事が出来るようになり、新潟の中盤が高い位置でボールを奪って攻撃を仕掛けるシーンが頻発するようになる。
大宮は今年後半15分の失点が多いらしいけど、今年はこの試合みたいにいい時間を過ぎた後にペースを握り返せないままズルズル行く事が多い印象がある。まー多分体力的なマネージメントの部分が大きいんだろうね。ラファエルなんて後半途中から目に見えて前半厄介だったチェイスが出来なくなって、攻撃でも影響出ちゃってたもんね。もっとも、これはかつてウチでもチラホラ見た光景ではあるのだけどwwなんて言うか、改めてクロさんが鈴木淳体制から自らの体制になった時に変えたかった事って、こういう事なんだろうな。良くも悪くも。そういう意味でも、やっぱりこの試合は面白い試合だった。明確に出たもんね。

で、そうやって一気にペースを握った新潟はいきなり大チャンスを迎える。48分、高い位置でのプレッシャーの結果ボール拾った慶行から、千葉ちゃんを経由して左のゴートクへ。そのゴートクを追い越したフミヤが左サイドから完璧なグランダーのクロスを入れると、PA内で待ち構えていたのは完全にフリーになったブルーノ!!しかし、そのシュートは枠を大きく外れてチャンスを逸する。not his day!!
50分にはミカが東からボールを奪い、一気にカウンターへ。その攻撃はフミヤからミシェウへのパスが通らずに潰えるものの、その反撃を跳ね返した形からセイヤが一気にタッチライン際を駆け上がり、ブルーノとのワンツーで抜け出しかけるも、ラファエルがギリギリで抑えるという熱いシーンを演出。セイヤかっちょいいじゃないか!
で、このプレーもそうだけど、今日はセイヤがサイドをグイーンと駆け上がってくるシーンが結構多かった。で、これを誘発したのは間違いなく、ミカが攻撃時にギュッと中に絞ってブルーノとミシェウの近くでプレーするという形を何度も繰り出したからだよね。守備時には基本サイドに張ってスペースを消しつつ、攻撃時には一気に真ん中へと走り込んで、何度も動き直して攻撃に厚みを加えていた。これによって、サイドのスペースが空くし、相手のセンターを押し込む事も出来る。運動量が物凄く必要な仕事だったけど、素晴らしく見事にやってくれたと思う。
これは左サイドでもほぼ同じで、フミヤもしばしば中に絞ってミシェウと共に脅威になる事が出来ていたので、その脇をバケモノになりつつあるゴートクがジリジリと前への圧力を仕掛ける事が出来ていたと思う。戦前、この試合はサイドの戦いになると思っていたけど、ヨンチョルを欠いてしまっても、センターにおける圧力を利用してサイドを制圧してしまったという事実はとても大きいはず。間違いなく今後の戦いの大きなヒントになるだろうね。
そうなると新潟のチャンスのオンパレード。52分、フミヤが青木からボールを刈り取ってカウンター。最後はミシェウミドルシュートも外れる。54分には、右サイドでミシェウ、ミカ、セイヤの3枚でパス交換しながら起点を作り、最後はゴールラインぎりぎりでミシェウがクロスを上げてブルーノが合わせようとするも、寸前で大宮の選手がクリア。
59分、大宮も東がラインを攻略して裏に飛び出し、渡辺からのパスに左サイドからシュートを放つも東口の正面→こぼれ球を上田がミドル、という後半最大のチャンスと言えるシーンを作るも、流れは変わらず。
64分には左サイドでのパス交換から、センターに入り込んだミカ→バイタルに入ったブルーノがキープ→ラインの裏へダイアゴナルに走ったゴートクへ勝負パスも、深谷がギリギリクリア。このこぼれ球をミカがシュートも弾かれる。この時点で2回もラインの裏を完全に攻略しかけたサイドバック。すげえぞゴートク。
そして70分に大大大大チャンス到来。セイヤからの縦パスを、右のタッチライン際でキム・ヨングォンと争って抜け出したブルーノが完全にフリーになって、ゴール前2対2の状況。ブルーノが中にグランダーのクロスを入れて、あとはフリーのミシェウが押し込むだけ・・・と思ったら、なんと渡部がその寸前の所、オウンゴール覚悟のギリギリの所で足を出して、コーナーキックに逃れると言う奇跡のプレー。not our day!!!

その後の73分にも、大大大チャンスがまたしても到来。高い位置で奪った慶行から、ミシェウを経由して右のセイヤへ。イ・チョンスとの1対1は、彼が最大の得意とする縦に抜けてクロスを上げるプレーによって勝利。その素晴らしいクロスに、またしても完全にフリーになったブルーノがヘッド!!!!!しかしその叩きつけたボールは角度を完全に誤り、ゴール目の前のピッチを叩いてクロスバーを越えていってしまった。not his day!!!!!!!!!!!こうしてまたしても大宮の息の根を止めるゴールを逸してしまった。


それにしてもこの試合の藤田征也のクロスは凄まじかったね。蹴った瞬間にあーあ、って天を仰ぐようなクロスは皆無。それどころか上げたクロスはほぼすべて大チャンスを演出するという精度。まるでベッカムみたいだった。サイドバックとしてのプレーの整理、チームの中の順応、チームとしての彼の組み込み方。これが上手くいけば大きな武器になるのだと、改めて証明したと思う。福岡戦で感じた、今年の楽しみの一つがさらに膨らんだ気がする。


その流れを受けて、大宮は75分に東に代えて石原。石原とラファエルの2トップ、左にチョンス、右に渡辺という形に。しかし流れは変わらず、続けて83分に渡辺→藤本。
しかしそれでもまだまだ新潟ペースは揺るがない。この時間帯になると、さすがに運動量が落ちてきてはいたのだけど、それでも大宮を上回るだけの体力を残して戦う事が出来た。85分にはCBが弾いたボールを拾ったミシェウからセンターライン付近から一気に裏に抜けたブルーノへ勝負のスルーパスが通って完全に1対1になりかけるも、判定はオフサイド。リプレイで観たらあれオフサイドじゃなかったけどね。not his day。
88分には左サイドを突破した村上からラファエルに合わされそうになって肝を冷やすも大事には至らず。
その直後には慶行に代えて酒井宣福デビュー。おめでとう。偉大なる道への一歩目だな。ミカがボランチへ入り、ノリヨシが右サイドハーフに。
90分にはそのノリヨシが早速シュートを放ってCKをゲットするなど見せ場を作るも、結局得点は入らずスコアレスドローで終了。勝てる試合。しつこいけど、勝てる試合。勝たなきゃいけない試合。


ヨンチョルという武器をいきなり失った中で、最大限の事は出来た。これは自信にしていいはず。次は首位の柏。勝たなくちゃ。1.83ペースを黒字に持ってくるには勝つしかないからね。まだまだ。まだまだ上行くよ。