かいわれ

かいわれって好きですか?俺は好きでも嫌いでもありません。多分そこのあなたもそうだと思います。
大体、かいわれって主役に成り得ることが絶対にない食材だよね。何かイメージとしては永遠の脇役、永遠の下手キャラという感じだ。他の派手な食材に対してへこつらう事が処世術、みたいな。
冷やし中華に乗っかってる時は「いやいやいやいやすーいませーん。何か私が皆さんの上に乗って1番上になってまして。いや、でもまあ、私はあくまで飾りですから、ええ、あっ、キュウリさんどうもどうも!やっぱりキュウリさんがいないと冷やし中華成立しませんよね、あ、もっちろん焼き豚さんも錦糸玉子さんも同じですよね〜。あ、今回はトマトさんまで!いやーオールスターだー!はっはっは!ホントこんなところに私なんかがいていいんですかねー?ホントすいませ〜ん。」みたいな。
魚フライのあんかけ添えに乗っかってる時は「いやー餡さん!相変わらずツヤツヤですねー!キレイだなぁ〜。うらやましいなぁ〜。」みたいな。
でもさ、私たち気付いてしまった訳じゃないですか。例のO-157の事件の時に。「あれ?かいわれって言われてみればいらなくね?」って事に。
きっと、かいわれはその時死ぬほど狼狽したはずなんだよ。「あー!もうなんだよー!こうなるのが嫌だったから今までヘコヘコして目立たないようにしてたのに!俺の努力返せよ!管!!あーもう俺終わりだマジで。世間にばれちゃったよ。俺実はいらないってこと。」って。


んで、今日の朝。いつもの道を歩いていたら、向こうから仰々しいスーツ姿の集団がやってきたんです。その人たちは真ん中の男が手に抱えてるモノを囲んで、喧々諤々の議論を交わしながら歩いてたんだけど、その真ん中の男が抱えているのが紛う事なきかいわれなんですよ。新種のかいわれを開発するグループか何からしいんです。
そして俺は見たね、そのときのかいわれの顔を。いつもの弱者の顔からほど遠い、自尊に満たされた顔を。「わかる?俺って、結構デカイビジネスになるんだぜ?」ってね。


そこのあなた、でかいビジネスの中心になって、スーツ姿の男たちにちやほやされた事ないでしょ?もちろん俺もそうです。
かいわれ以下なんだよ、ほとんどの人間は。