それでもボクはやってない

観てきましたよ。「それでもボクはやってない
前もちょっと言及したかもしれないけど、俺は「shall we ダンス?」大好きなんですよ。恐らくちょっと悲惨で情けなかったであろう監督自身の青春時代の悶々とした記憶を、チンカス臭さを残しながらも非常にソフィスティケイトした形で昇華させた名作だと思うんです。だから周防正行の11年ぶりの新作となればそりゃ観るしかないでしょーって事で行って参りました。あ、極力ネタバレはしないように以下言及しますね。
今回は一言で言えば事前に伝え聞いていたように「社会派」。今まで彼が描いてきたコメディのタッチは殆ど影を潜め、2時間近くに渡る張り詰めた緊張感、そしてひんやりとした憤怒を、とにかく丁寧に描いた非常に良質な作品だと思う。
映画的なカタルシスとかは、はっきり言って殆どない。ただ、加瀬亮の素晴らし過ぎる演技を眺めているだけで全て事足りる。そういう映画だと思う。例えば小日向文世の詰問に対する壊れ方。本当に感服した。留置所でうつむく姿、鳴きそうな声で証言する被害者の女子中学生の壁越しに鎮座する姿、久々に友人に対面した時の小さな笑顔。恐ろしく地味な話の中でも、強烈に残る彼の存在感。加瀬亮、いいなあ。俺もああいう髪型にしようかな。もっさり。
それともたいまさこはいつ観てももたいまさこだなwwいい役だわ。それと一緒に観たドラマーも言ってたけど、光石研の「なんか裏があるんじゃないか感」も良かったなあ。結局「味方」に終始しててある意味で肩透かしだったんだけど。
それと今回笑えるシーンが3箇所ほどあるんだけど、その一つのためだけに竹中直人を使うという贅沢。あれを蛇足だと感じる人もいるだろうけど、俺は支持しますよ。嵐の前の息抜きだ。


何でも周防正行は「このテーマはどうしても撮らなくてはならない」という気概の元、この作品を制作したそう。そんな意思がひんやりとしながらも猛烈に伝わってくる作品だと思います。ピーポ君を傘で殴りそうになりながら、寸止めしてしまうような怒りと冷静。そのアンビバレンツを加瀬亮という名優を通じて発信しているというかね。やっぱり、この人は信用できる監督だと思いましたよ。是非ご覧あれ。