【レビュー】第6節 ガンバ大阪戦@スワン

アルビレックス新潟 2-1 ガンバ大阪
弱者か、強者か。この試合が分岐点の一つになるとプレビューで言及したけど、ちょっと大口を叩かせてもらえば、この試合の新潟の醸し出す雰囲気は確実に強者のそれだった。ほんのりだけど、確実にその雰囲気はあった。素晴らしい。
まずこの試合の立ち上がり、両チームとも驚くほど慎重にゲームを進めていたね。ラインを少し高めにキープしてリスクを犯す事無く、堅実なパス回しで時間を進めるという状態が続いた。それを先に崩し始めたのがガンバ。これで新潟のラインが下がり気味になって、失点の40分前後の猛攻に曝された。でも1失点はしたものの、2トップをCB2枚がしっかり対処するという狙いは機能していたし、相手の2列目・バイタルエリアへのケアを勲を中心に中盤がしっかり遂行していた。それに今日素晴らしいセーブを連発していた北野の連続のビッグセーブはチーム、そしてスタジアムを盛り上げるには十分だったね。
この試合の勝負を左右した大きな要素は前半で追いついたと言う点。今年の攻撃のパターンとして確立されつつある「サイドに開いたエジ→リシャ」という連携からシルビーニョが見事なシュートをぶち込むと言う形。エジのキープ力、りしゃこの動き出しと粘り強さ、シルの状況判断とキックの威力というそれぞれの特徴が活きた素晴らしいゴールだった。(後半も見事なFKもあったし、川崎戦でも凄いシュートあったし、今年のシルのシュートはちゃんと枠にとぶな!前節も見事なゴールだったし。自陣にwww)
そして後半は前半の慎重さが嘘の様に両チームともフルスロットルの殴り合い!(後半は第3者が見ても楽しい試合だったと胸を張って言えると思う)前半同様、千代反田がマグノ・アウベス、永田がバレーを見るという基本的な約束事をしっかり遂行し、勲がバイタルを支配してしっかり守備を構築した上で、両サイドバックがガンガン攻撃参加し、何度も流麗なカウンターを見せた。
後半開始早々に坂本が抜け出したシーンだとか、リシャが右の角度がないところからシュートを放ったシーンだとか、この試合では去年から磨いてきた新潟の最大の武器であるカウンターを何度も見せてくれたね。そしてそれに加えて、去年と比べて段違いに増えたサイドバックからのクロス、遅攻でも崩せるだけのパスワーク、セットプレー、矢野貴章の成長、エジ⇔リシャの連携の熟成、河原・深井・松下といったベンチに控える個性的なオプション・・・・・といったように攻撃面での充実は見事だと思う。いつのまにかリーグ戦とナビスコを含めて今シーズン最も多くのゴールを挙げてるチームになったんだけど、それにはこういった確固たる理由があるんだよね。得点は水物だから、この調子の良さがプッツリ途切れる可能性は大いにあるけど、とりあえず今はその充実さを褒めたいと思う。



そしてこの試合の最大の分岐点はガンバが播戸を投入して2トップ→3トップに移行したところだったと思う。ここから数分間、間違いなく新潟の守備は混乱した。しっかりケアしていたマグノとバレーを捕まえきれなくなり、播戸に裏を取られかけた。しかしここで新潟はその対処法として引くのではなく、坂本が果敢に攻め上がって高い位置に張り、残った3枚のDFと勲で相手を集中してマークするという方法を取った。それが相手の3トップ移行後の新潟の守備の混乱から新潟の優勢とガンバのDFラインの後退に繋がる。結局、ゴール直前の連続のCKを奪ったのも坂本だったし、このチームとしての勇敢な判断が逆転ゴールを生んだのだと言えると思う。この辺のチームとしての咄嗟の判断が「強者」の雰囲気を醸し出していた部分だったね。結局その後ガンバは寺田を投入して新潟の左サイドをケアせざるを得なくなるという後手を踏むわけだし。
しかし今日の勲は素晴らしかった。J1に上がってから、いや、J2時代を含めても彼のキャリアにおいてベストの出来だったんじゃないだろうか?試合を通してCBのフォロー、バイタルのケアを完璧にこなし、永田も試合後のコメントで語っているけどガンバの3トップへ誰よりも早くアジャストした。それが坂本の勇猛果敢なオーバーラップを誘発したし、結果的に逆転ゴールを陰から演出したと言える。それに状況をしっかり把握したドリブルのキープと正確なパスワーク!今日は何度となく長短織り交ぜた攻撃的なパスを送っていたね。すごいぞ勲!どうしたんだ勲!一人のタメの男として誇りに思うよ(だから光もがんばれよ!!)
そして貴章の充実。間違いなく彼にとって代表へのモチベーションってのは大きいんだろう。明日代表のミニ合宿のメンバーが発表されるのを前にこのアピールっぷり。前線から鬼の様に走りまくるプレーはもはや当然として、動きがシュートから逆算したプレーになってるのが本当に頼もしい。ターンしてドリブルしながら角度のないところからシュートを放ったシーン(あれ貴章ゾーンだから入るんじゃないかとワクワクしたw)、内田のクロスが流れて大外で受けたシーンでの最初のトラップでのDFの外し方とシュート、強引なミドルシュート、とまあ本当に積極的だった。だからあのゴールは必然だったと言えるだろうね。もっともっと伸びるぞ。だからもっと要求したいね。
それと攻撃面で最近目立つのがエジがサイドに開く展開。今日アトムが素晴らしいプレーを見せていたけど、あれはサイドではなく彼が最も活きるセンターでの仕事が多かったからだと思うんだけど、それを可能にしたのがエジのサイドでの絶妙なキープとドリブル。マルシオ・リシャルデスもサイドプレイヤーと言うよりは、色んな所に顔を出すタイプだけど、そういった個性を持つサイドハーフをしっかり活かすエジの頭のよさが最近の攻撃の充実(特にエジ⇔リシャのライン)を支えていると思う。やっぱ凄いヤツだよ、エジは。



さあ、これでキツイ連戦はとりあえず終わり。やっと1週間の休息。ここでしっかり休んで(慎吾も千代反田もケガをしっかり治して)、来週は新潟にとって非常に大きな鬼門である広島アウェー。今の好調さを、スワンじゃない所で発揮できるか。最初の分岐点で勝者への歩みを進めたチームが後退したり、道を間違えないように、しっかり準備して臨んで欲しいね。