自虐の詩

summerwasting2007-10-31

原作が大好きなので、公開を知ってからずっと楽しみにしてたコレ、観てきましたよ。
結論から言うと、素晴らしい!と感嘆する部分もあり、そうじゃないだろー!と歯がゆい思いをする部分もあり、って感じかな。でも総合的に見れば凄く楽しめたのは間違いない。
前半部分のちゃぶ台返しの応酬はバッチリ良く出来てると思う。カルーセルちゃぶ台返しじゃなくて夫婦の営みを別にカウントしてるってのもちゃんと拾ってくれてて良かった。でもそれ以外がちょっと冗長な所もあったかなーって気がするんだよね。結構頻繁にギャグがすべるのもちょい辛かった。
というのも、中学校時代を振り返るシーンがちょっと中途半端だったのが一番この映画で歯がゆい部分だったからなんだよね。前半の冗長な分をここに回して欲しかった。特に一番不満だったのは裏切られた熊本さんがこっそりと涙を流すシーン。あれは原作の様に散々幸江に裏切られても、しゃんと胸を張って凛と生きる姿が描かれた上で、たったひとコマだけ路地裏で泣いちゃう熊本さんが描かれる、ってのに意味があったと思うんだけどなあ。
しかし、それにしても中学校時代の熊本さんのキャスティングは素晴らしかった!あの子凄いな。だってどう見ても熊本さんそのものなんだもの。あの子を発見したからこの作品の製作が決まった、って言われたら絶対信じるよ。
あと全般に音楽がイマイチだった。なんか過剰じゃね?あんなに派手なストリングスいらんよ。
それとラストシーンの熊本さんのアジャも、あんなにエキセントリックな感じじゃなくて良かったのに。原作どおり妙に大人になってどっしり構えてるおかあちゃんの熊本さんと再会して欲しかった。抱きしめ合った二人をぐるぐるパンニングするカメラで撮影する必要もなかった。
・・・・・と色々書くと不満だらけに見えるけど、観終えて不満よりも満足が上回ったのは、間違いなく中谷美紀の存在があったからだろうね。中谷美紀ホントすげーわ。演技上手すぎる。ウキウキと弁当を作る姿はたまらなくキュートだし、傍若無人イサオに振り回されてる時は本当に不幸な女に見えるし、疲れた顔をする時は本当にブスだし、娼婦になってる時はギリギリで生死をさまよう娼婦に見えるし、母親の時はこの上なく幸せな母親の顔になる。
特にイサオに「どこか遠くに逃げよう」って言われた時の「あんたバカでしょ!」はちょっと背筋が寒くなるくらいの感情に満ちてるし、色々と不満があったラストシーンでウルウルきちゃったのは、10数年ぶりに昔から今までの自分を支えてくれた最大の親友と出会った、という感情を爆発させる「熊本さん!!」があったからなんだよな。中谷美紀、本当にすげーわ。
という事で中谷美紀という素晴らしい女優さんを存分に堪能できる、ってのがこの作品で最大の魅力かな。だからこそ、原作ファンとしては若干歯がゆいんだけどね。