小さな悪の花

summerwasting2008-02-12

  • 「小さな悪の花」ジョエル・セリア @バウスシアター 33/100

砕けて言っちゃえば、中二病をとんでもなくこじらせちゃったフランス人少女2人の話なんだ。
15歳。大抵の人にとっては「なんて青かったんだろう」なんて気恥ずかしさを覚えながら振り返る年齢。みじめで、情けなくて、バカ丸出しで、未熟で、不完全なくせに、抗いたがる年齢。
そして、もう一つ重要なのは「世間や大人が俗悪なモノとしているモノ」っていうのが何なのかを一通り知ってしまっている年齢であるという事。
この作品で描かれるのはまさにそこ。この15歳の二人が15歳という年齢を過ごす生きがいとして設定したのは、自分達が知っている「俗悪」を何でもやってしまおうというもの。タバコをふかし、小鳥に毒を盛って殺し、学がなく貧しい牛飼いの男の前で股を開き下着をずりおろして誘惑し、その間に牛を農場から逃亡させ、キリストの全てを捨て去ってサタンと契りを結び、知的障害者をボートから突き落とし、農場の牧草に放火する。
でも、問題なのは、やっぱり15歳であるという事。15歳の彼女達は「俗悪なモノ」が何かは知ってはいるつもりでいるのだけど、それが自分に降りかかってくるという危険をまだ知らないのだ。だって、15歳の下着姿の美少女と男が部屋で二人きりになったらレイプされるかもしれない、という危険さえ分かっていなかったのだから。
その結果、彼女は殺人を犯してしまう。小鳥の喉元を指で締め上げて殺す事でさえ、その後で泣きながら後悔する様な脆弱な女の子であるというのに。
そして、この「俗悪なモノ」を求め続けると言うのがこの物語の主題なのだけど、もう一つの大きな要素は、映画全体を支配する退廃的な雰囲気とデストルドー。二人は死を持って永遠になれると信じ込んでいるし、彼女たちなりの「儀式」で破壊の象徴でもある悪魔と契りを交してしまっているのだ。
そして、その殺人という事件によって彼女達が苛まれる焦燥感や混沌と、デストルドーという彼女達の根幹を貫く哲学とが相まって、衝撃的なラストシーンへと収斂していく。
俺がこの作品が見事だと思うのはこのラストシーンへの持って行き方で、今まで彼女達がやってきた様々な行動と哲学が、最後の彼女達の学芸会のステージでの「宣言」に繋がり、「地獄でも、天国でもいい、未知の世界が見たいの!」という悲痛な叫びとともに、親や先生たちが見守る中の焼身自殺という結末を迎える。
これには本当に震えた。久々に映画を観て鳥肌が立った。見事だと思う。



という訳で、本当にめちゃくちゃ面白かった。間違いなく早くも今年見た映画でベスト候補だわ。最近DVDも出たようなので、是非とも見て欲しい。焼身自殺する、というラストを知ってても間違いなく楽しめると思う。だって俺もそのオチ知ってて観たしね。
しかしまあ、これあまりに不道徳な内容なのでフランスでは上映禁止、欧州各国への輸出もNGで、アメリカと日本でしか公開されなかったらしいのだけど、見たら納得。だって15歳の女の子が股開いてパンツ下ろしてケツプリーン!だもん。しかし乳首とか毛とか大丈夫なんですかアレ。

これ観て久々に「観終えた後に寝たらすっげー怖い夢を見て真夜中に飛び起きる」という経験したわwwこえーよ!!
でもこの作品のフィルムがMoMAに保管されてるってのは凄くよく分かった。これってストーリー性とか一切排除してひたすら殺人鬼に命を狙われるという恐怖だけにスポットを当てた作品だけど、椅子に縛られて殺されそうになるシーンの目玉のドアップとか、所々に挿入される人骨の映像のカットアップとか、薄暗い家の中のライティングとか、ラストのレザーマスクのダンスの後ろの朝日とか、そういった目に残る映像の強さがあるよな。それに猟奇的なシーンが多いのに血がどばー!と全くならないのもお上品でいい。でも、あくまで死ぬほど怖いってのが何よりいい。
あとレザーマスクのキャラもいいな。気持ち悪いマスクしてるし、馬鹿でかいし、いきなり男の頭をハンマーで殴りかかり、倒れて痙攣してるそいつの頭を無慈悲にボコボコにしちゃうし、泣き叫ぶ女を生きたまま金属のフックに吊るしちゃうし、車椅子の男をチェーンソーで切り刻んじゃうし、奇声上げながらチェーンソー振り回して追いかけてくるけど、彼は(この言葉が正しいのか分からないけど)「キュート」だよな。もしくは「コケティッシュ」?これはちょっと違うか。
じいさんを二階から下ろすときの動きとか、大男なのにジャストサイズのぴったりした小奇麗なシャツを来て可愛いネクタイとかしちゃうあたりとか、その辺は凄くステキだ。彼のキャラクター性自体が今でも愛されてるってのは良く分かる。まあ、殺人鬼なんだけどw

これは素晴らしいよ。なんせ出てくるのが全部ダメなキモヲタってのがいい。邦題以外は全ての面で大好きだ、これ。ていうか原題の「ナポレオン・ダイナマイト」って最高に格好いいじゃねえか!
で、何より素晴らしいのは出てくるのはみんなヲタだけど、みんな恐ろしく行動的でポジティヴだという点。みんな目標をしっかり達成してハッピーエンドなんだよな。それが素晴らしいよ。あと写真家を目指してる女の子、俺の好みど真ん中だったりする。超カワイイ。
という訳で、この動画を貼ろうか否か迷ったのだけどとりあえず貼っておきます。この一番いいシーンだけ観ちゃうってのもどうかと思うけどね。Vote For Pedro!!