【レビュー】08年第13節 神戸戦@ホムスタ

ヴィッセル神戸 1-1 アルビレックス新潟
スタッツ
うーやっと書くタイミングが確保できた。つーことで神戸戦でございます。
この似たもの同士の試合は、最初から相手の出方を伺いあう展開になった。序盤は神戸が石櫃をガンガン上げてきて起点を作ろうとするものの、そこを松下と松尾がしっかりケアするとその攻めあがりは終息するし、新潟がマルシオを起点に右サイドから侵攻しようすれば、神戸がそこを重点的に潰して中々形を作らせない・・・というお互いがお互いの狙いを慎重・丁寧に潰していく流れ。
特に新潟はその「相手の特長を潰す」という意味で言うと、明らかに相手のカウンターを警戒してバックラインとボランチでのボール回しを中心としたポゼッションを重視するという、丁度去年のホーム神戸戦と同じ戦略を採用してきた。で、中盤でのボールロストを防ぐという意味もあったのだろうけど、いつもより前線へのロングボールが大目。また、神戸のディフェンスもそれを見て無理をせずにリトリートしてしっかりゾーンディフェンスを作るので、局地戦では激しいプレーが多く見所はかなりあったのだけど、試合の動きとしては拮抗してクローズしてると表現してもいいような展開になる。
対する神戸の攻撃は、戦前の予想通りレアンドロと大久保の前への推進力を前面に押し出す形。奪ったらとにかく縦に早く展開して行くという、彼らの真骨頂といえる攻撃を繰り返す。ただ、前述の通り新潟は徹底的にカウンターを警戒している事もあり、神戸の2トップが前に動き出すタイミングでは必ずチェックに行ってチャンスを作らせない。そういえばテラがあからさまにボッティを後ろから引っ掛けてイエローを貰ったシーンがあったけど、あれは中盤でのボールロストからの縦への速い展開を何よりも恐れたからこそのプレーだったのだろうね。
とまあこんな感じで、神戸がゲームを動かそうとしても新潟がプラン通りに守るので、結局要所ではクローズな展開になって時間が進む。大抵の場合、こういう展開を動かす要素は3つ。システム弄ったり選手変えたりという無理をして犯す攻撃的なリスク、ミスや事故といったアクシデント、そしてセットプレー。
で、この試合をまず動かしたのは一つの事故だった。
神戸がボールキープしてリトリートした新潟の守備を切り崩そうとしている所で、マルシオバイタルエリアまで下がってカットに行ったボールが、あろう事か大久保の前に転がってしまう。そうなると後はセンターバックに寄せられる前に素早く左足を振り抜くまでのこと。神戸にとっては願ってもない形で先制点が生まれた。
しかし新潟は慌てる事無く、その後もビッタリと組織を作る神戸のディフェンスに対して、最初のプラン通りの「じっくりポゼッションして相手の出方を伺う」という形を徹底する。そして先制点を献上してから前半の終わりまでの10分間の新潟のポゼッションで、それまでとは明らかに違ったのは両サイドバックの位置が一気に上がったという点。それに加えてサイドバックからサイドバックへのサイドチェンジという、最近の新潟のいいリズムを作り出してるファクターの一つが増えてくると、相手の組織を崩す為のパス回しが一気に活性化する。
そんな流れで41分。うっちーの浮き玉を受けたアレッサンドロが上手くボールを持ち出して、GK榎本と1対1のチャンス。そこまで来たら後はアレのストライカーとしての資質がまざまざと発揮される。
「ほれ、どうすんの?どうすんの?えーか?えーか?えーのんか?一個右にフェイント入れるで?ほれっ!!・・・・はーい、やっぱりそっちにコケたな!んじゃ、はいどうも〜♪」と右に倒れた榎本の左にぽーんと流し込んでゴールゲット。3試合連続の「はいどうも〜」ゴール炸裂。こうやって平温のままボールをゴールに流し込むという単純作業をずっと繰り返してきた男なんだろうな、このアレッサンドロ・ヌネスという男は。見事だ。
で、後でこのゴール録画したの見直してみたんだけど、これ実はめちゃくちゃ素晴らしいゴールだな。うっちーが勝負パス送る前に、右サイドでパス交換からマルシオがポストになってるけど、そこに北本が前へとアタックに行ったので、キレイに4-4-2のラインのゾーンディフェンス作ってたはずの神戸のディフェンスが、その瞬間は組織がずれちゃってるんだよな。最終ラインが3枚になっちゃってる。その結果石櫃が中に絞らなくちゃいけなくなるという本来神戸の守備のやり方では避けなくちゃいけない状況が生まれるし、おまけに貴章が右へのスペースに動き出す事でセンターバックの小林が釣られたので、そこにぽっかりスペースが出来たんだよな。で、後はそこにうっちーがパスを送り込んで、慌ててフォローに行った石櫃をアレが上手くいなして、GKとの1対1を作ってよいしょ!っと決めるだけ、と。いやー見事だ。もし録画してたら是非見直していただきたい。
淳さんが就任してから一貫して、新潟の伝統である「奪ってからの縦へと早い攻撃」に加えて、「基点を随所に作ってポゼッションを高めて攻撃を仕掛ける」というエッセンスをチームに注入する事に腐心してきたけど、それがここまで完璧に機能したゴールってなかったんじゃないかなと思うくらいだ。しかもそれが「ポゼッションしてじっくり相手の出方を伺う」というコンセプトで戦ってる試合で発揮できたのは素晴らしいの一言。このゴールシーン編集して、スワンでちょっとでもバックラインでのボール回しが始まったら「早く攻めろよー!」とかクダ巻いてるおっさんに見せた方がいいんじゃねーかな。これすげー画期的なゴールだぜ。
えーとまあ以上、後半は殆ど攻撃面で見るべきところがなかったのでこの素晴らしいゴールで引っ張りまくりましたよ、とwww


で、後半。開始から神戸がペースを握る展開に。ただ、新潟のディフェンスもアタックとカバーを徹底して決定的なチャンス作らせない。するとまたしてもクローズな展開へと戻っていく。
新潟の攻撃に関して言うと、いい流れだった前半の終わりとは決定的に違うのは、中盤での基点がほとんど作れなかったという点。後半に貴章がラインの裏に走って右サイドからシュートを放ったシーンがあったけど、新潟の狙いとしてはああいう形だったんだろう。そんな展開を作るには中盤で基点を作れる選手が不可欠なわけで、そこへのテコ入れという意味も恐らくあったのだろうけど、64分にテラに替えて勲投入。キャプテンマーク授与式@神戸。
しかしその投入も流れを変えるには至らず。おまけにボールを後逸して危うく大久保とGKの1対1を作られそうになるなど、今日の勲はイマイチ。コンディションも試合勘も、もう少し調整する必要がありそうだ。
で、繰り返すけどこういう試合展開を動かすのは、システム弄ったり選手変えたりという無理をして犯す攻撃的なリスク、ミスや事故といったアクシデント、そしてセットプレー、という3つの要素。で、その中から神戸は内山を下げて鈴木ノリオを投入して、かつレアンドロを右に置いて3トップ気味の形に変更するという「リスク」を選択してきた。
で、ポジションチェンジの結果、松尾とこの試合を通してちょっと身体が重そうだった永田さんはレアンドロの突破にあたふたするシーンがちょこちょこ目立ったのだけど、最後は必ず千代がすっ飛んできて完璧にフォロー。千代がエヴァ初号機にそっくりだという事は世界の常識だけど、この試合の千代はゼルエルをぶっ倒して食ってる時の初号機みたいなもんだな。凄かった。開幕4試合の千代は歩く事さえままならずにサキエルにボコボコにされてる初号機だったけどな。
で、そんな試合展開の中で新潟がどう動いたかといえば、82分にアレに替えてアトムというカードを切ってきた。前述の3つの要素のうちのどれかを促進させるのではなく、「ミスや事故といったアクシデント」という要素が起こる可能性を低くさせるという決断。恐らく監督としては1対1の引き分けもこの時点ではっきりと視野に入れていたのだろう。
ただ、もしベンチに計算できる攻撃的なカードを持っていたのならば、もう少し早い時間にリスクを取るという決断も出来たのだと思う。淳さんは強化部にアタッカーの補強を要求したらしいけど、何故そういった要求があったのか凄く分かる試合だった。
で、ここで誰よりもこの試合の交代カードの切り方の意味について考えて欲しいのは、他でもない河原だ。もし彼が監督の信頼をもっと勝ち取れていれば、こういう展開ならきっと投入されていただろうと思う。ただ、そうじゃなかった。この試合ではベンチの攻撃のクオリティと守備のクオリティを天秤にかけて、守備を選んだのだ。その意味を、しっかり考えて欲しいと思う。
というのも、恐らく河原は今週末のナビスコ予選突破をかけたマリノス戦で先発が回ってくるからだ。個人的にはナビスコ予選残り3試合こそが、今年の中断までのハイライトだと思ってる。ノックアウトラウンドの経験が絶望的までに乏しい新潟にとっては、絶対に今年こそナビスコ予選突破してホーム/アウェイの準々決勝を戦いたい。その経験を手に入れたい。その為には一つも負けは許されない状況なのだ。そして、河原にとってもこの試合はきっとここまでのハイライトになるはず。このチャンスをフイにしたら、今後の立場は厳しくなるかもしれないという気概のもとで戦って欲しいと思う。頑張れ、河原。頑張れ。
とまあ、話が脱線したけど古賀セージさんの「あれ?どこかで観た事ある・・・( ;´・ω・`)ぎゃああああ!!!」という大ピンチもあったけど、そこはポストに助けられるという幸運もあって1-1で試合終了。ずっと互いの出方を伺って拮抗しまくった試合の結論としては至極妥当なスコアだといえると思う。



さあ、とりあえずリーグ戦は小休止。でもまだ中断じゃねーぞ。中断期間ってのは6月9日から6月27日までの事を言うのだ。前述の通り、ナビスコ3連戦こそ死力を尽くす時だ。大体今年で5回目の挑戦なのに一度も突破してねーなんてありえないからな。今年はナビスコに関しては全力で戦ってどこまでいけるかを知るべき年なんだよ。今の守備のベースをどうやって攻撃に転じさせるかとか、アウグストの投入もあるかもしれないとか、後半戦を戦うための武器を手に入れるという意味でも、3戦とも全力注入すべきだ。休むのは6月8日の試合が終わってからでいい。走って走って走れ!!勝て!!