【レビュー】08年第14節 川崎戦@スワン

アルビレックス新潟 2-1 川崎フロンターレ
スタッツ
俺だけの永田さんついにきたあああああ!!!
やっぱりホーム川崎戦は何かが起こるな。今年は永田さんの新潟での初ゴールだったか。それじゃあ来年は貴章のハットトリックでよろしくお願いします。

この試合、コイントスで川崎が選んだのはコートを逆にするというものだった。前半はそれぞれが自チームのゴール裏に向かって戦う事に。これは日差しの問題もあったのだろうけど、恐らく最大の理由はこれまでの負の流れ−スワンで9連敗中−という事から、何かを変えたいという川崎の意図が大いに含まれていたのだと思う。
ただここで俺の脳裏に浮かんだのは「奇策といわれるあらゆる作戦・・・・そのほとんどは相手のことを考えすぎて本来の自分を見失った姿に過ぎない」という高頭力の言葉だった。そして、結局それはその通りになるのだけど。



この試合の立ち上がり、まず目に付いたのは川崎の守備に対しての新潟の攻撃陣の対応の上手さ。川崎の3バックは基本的に井川と伊藤の2枚がアレッサンドロと貴章の2トップにマンツー気味について、真ん中の横山が余るというクラシックな形。で、この戦術はそこでしっかり潰せればいいのだろうけど、この日のアレも貴章も早めに送られるボールをそこでしっかり収めてくれるし、しかもその二人はそれぞれ左右のサイドに流れてボールを受けるので、真ん中のバランスが崩れて川崎の組織があっけなく機能不全に陥る。
しかし磐田もそうだけど、こういう前時代的な3バックには滅法強いなウチは。アレと貴章にとっては格好の獲物だもんな。
その結果、活性化したのが新潟のサイド。3バックの両端が苦戦しているのでウイングバックはフォローに戻らねばならず、その結果新潟が使うべきサイドのスペースが生まれてくる。
で、こうなったら淳さんが中断期間で重視してきたというサイドを活用した攻撃の一端が見えてくる。右はこれまで同様、マルシオが真ん中に入っていくポジションを取ればうっちーがするすると上がってビルドアップに参加するという形。で、うっちーがパスの配給どころとしてゲームを作るという、実に新潟らしい、というか「いい時の新潟」なプレーが出てくる。
注目の左は、松下が縦に走ればヒロシから浮き玉のパスが供給されて、相手のウイングバックと3バックの間という最も美味しい部分を突けるし、ヒロシがサイドをえぐるという形こそ無いものの、何度かアーリークロスでファーの貴章への狙いという形を作り出す。
それと頻繁に行われるサイドチェンジ。そしてその都度動き直す2トップ。この辺は中断前の攻撃陣のちょっとした停滞感とは違う、はっきりとした意識が見えてきたと言えると思う。その辺は淳さん本当にいい仕事だな。
で、こうやってサイドを上手く使うことで攻撃の活性化を図り始めたチームにとって、松下は最大のキープレイヤーになると言っていいだろうね。この日も素晴らしかった。結局先制点はその松下が3バックの横のスペースに動き出し、それを見逃さなかったヒロシのロビングパスから松下が得たFKから。
そのFKを松下が、清水戦の様なGKを強襲するキックで狙うとこぼれ玉が永田さんの頭に渡ってプッシュ。ずっといい流れで来ていた新潟の攻勢がようやくゴールという形で実を結んだ。しかも永田さんのゴールってのがオツすぎる!!てか永田さんゴール後に叩かれすぎwww次から次へとチームメイトが集まってフルボッコ。いい光景だ。


んで新潟の守備に関して言うと、川崎の2トップが中盤まで下がって受けたりって言うシーンが少なかった事もあり、積極的に前にアタックに行くというよりはどっしり構えてチョンテセと我那覇に送られるボールをブッチンブッチンと潰していくという形。
で、この試合で印象深かったのがDFラインがその前へのボールが送られるタイミングで、すっと前に出てオフサイドを奪うシーンが何度かあったという点。このハッキリとしたオフサイドトラップって今までの新潟のDFには殆ど見られなかったプレー。これは川崎の分かり易すぎる拙攻ってのもあったのだろうけど、新潟の守備陣の更なる成長の伸びしろを感じさせるプレーだった。
それとサイドは前述の通りウチが主導権を握ってたのでちっとも怖くなかったし、川崎の中盤の飛び出しも勲と千葉ちゃんが、一回谷口に完全に裏を取られたシーン以外はしっかり潰す。
という事でほぼ新潟ペースで前半を終える。



そして後半も流れは新潟。開始早々の52分に井川がびっくりするくらい不用意にアレを引き倒してPK。これをアレがドカーンとど真ん中に決めて2-0。そしてアレはこれで4試合連続ゴール。凄い男だぜ。

これを受けて川崎は横山に替えて大橋を入れて4バックに移行。で、57分にこの試合を左右するプレーが起こる。
憲剛からのスルーパスに抜け出した我那覇をヒロシがPA内で引き倒してPK。そしてレッドカード。57分という時間、2-0という状況、我那覇がえぐって来た角度、真ん中の千代のフォローのタイミング、ゲームのリズムを作っていた最大の要因が左サイドの攻めであったという事、そして左サイドバックがもうヒロシしかいないと言う状況。そういうのを全て考慮すれば、絶対にやっちゃいけないプレーだった。猛省を促したい。


そしてこの後の北野のPKストップこそがこの試合を決定付けたと言っていいと思う。こっから若干手前味噌モード入るけど、北野のPKセーブの瞬間の爆発的な北野コールは、明らかにあのPKストップに影響したと思う。俺は色んなFAのうち、Fanatic Audienceが一番重要だってプレビューで書いたけど、このプレーはまさにその通りだったと思う。リマのあのFKの時を思い出したわ。
俺はバックスタンドの住人としてバックスタンドからの拍手や歓声こそが、スワンのホームアドバンテージを完成させるものだと思ってるから、我那覇がキックの準備を始めたタイミングを見計らってキ!タ!ノ!!ってコール始めたんだけど、どうやら俺と同じ事を考えてる人があちこちにいたみたいで、俺がコールし出したのとほぼ同時にEからも万雷の拍手と北野のコールが始まったんだ。それに釣られてその10分後に「あれ?新潟が一人少なくないか?怪我でもしたか?」とか言い出した「ニワカにも程があるww」な、俺の後ろのおっちゃんまでもが北野コールしてたもんなあ。いいじゃないいいじゃない。
で、そうなったらサッカーの神様PKストップさせるでしょ。そりゃそうよ。やっぱこれが川崎の10連敗の大きな要因なんだと痛感したわ。
それとこれって普段通りの自陣の取り方してたら起き得なかったことだと思うんだよな。だってそうなら北野の背中ってフロンタサポだったわけだし。やはり冒頭の高頭力の言葉は正しかったのだ。


そのPKストップの後の新潟のシステムは、まず左サイドバックに千葉ちゃんが入って、中盤が右から貴章、勲、マルシオ、松下でトップにアレという形。で、その後中盤を右からマルシオ、勲、松下、貴章に変える。
で、CKから我那覇に合わされて1点差になったあたりで、松下を左サイドバックに入れて中盤が右から貴章、勲、千葉、マルシオ、トップにアレという形。そしてこのDFラインを最終形として残り約30分を最後まで戦うこととなった。
そしてそれを見てすかさず川崎ベンチは菊地に替えて黒津を投入。その新潟の左サイドに張らせて勝負を仕掛けさせに来た。しかしここで落ち着き払って縦をほぼ全て切った松下の守備が素晴らしかった。もちろんそれをしっかりフォローする貴章やマルシオのプレーもあって、川崎のベンチの意図がまず外れたってのが大きかった。
で、その後はずっと圧倒的にポゼッションする川崎。しかしこういう状況で覚悟を決めてビッタリ引いて守備が出来るっていう自信をベンチも選手も持ってるのが今の新潟なんだろう。相手が予想以上にバックを後ろに残してポゼッションしてるのも考慮して、カウンターを狙うのをほぼ放棄してリスクマネージメントを最優先する形にシフト。
その間川崎が常に3枚がPA内に入り込んでDFとの駆け引きを繰り返す。それに対しては去年からの積み重ねの成果とも言える、千葉ちゃんが3人目のセンターバックになってPA内でボールをはじき返す仕事を手伝う形を取って対処。で、その分バイタルが空いた所にはアレに替えてテラを投入することで埋めていく。
いくつかのミスもあって危ないシーンもあったのだけど、そこはピンポイントで身体を張る貴章やテラやマルシオの運動量もあってゴールを絶対に許さない。なんせあの貴章が足を痙攣させるほどの運動量発揮したら、そりゃ川崎だって攻め手を失うだろう。
で、その貴章に替えてアトムを投入する万全の構えでそのまんま試合終了。川崎に対してホーム10連勝を飾った。


この試合は中断明けに誰もが期待した「前半戦の課題をどう消化したか」って事に対して、ある程度答えを見せてくれた試合だったと言えると思う。特に攻撃面。ずっと物足りなさを感じていた攻撃に、サイドの活用というトレーニングの成果の一端を見せてくれた。まあ、途中からファウルトラブルでそれは中途半端な形で幕を閉じてしまったけど、それは次の試合に楽しみにする事にしよう。
しかも次節は今のJリーグで最もサイドを上手く活用すると言ってもいい名古屋だ。こっちは松尾の怪我の具合もあるけど、左サイドバックが壊滅状態。そんな中で、サイドの攻防にどういう手を打って来るか。さあ、淳さんの腕の見せ所。頼みますよー