【レビュー】08年第32節 大宮戦@スワン

アルビレックス新潟 2-2 大宮アルディージャ
スタッツ
試合の立ち上がり、ビッグゲームの雰囲気に飲まれたか、新潟は全体的に動きが固くミスがちょこちょこ生まれる展開。特に千葉戦の怪我から久々復帰の松尾と松下の左サイドの連携がイマイチ。その辺は松尾の試合勘とかもあったのだろう。ただ、時折見せるサイドバックとは思えないタイミングの鋭い縦パスとかはさすがだったけどね。
んで、それに対して大宮は最近の試合で機能しまくってたラフリッチの下の三人=内田智也、藤本、金澤が予想通り動きまくって守備を引き剥がしにかかる。この試合での新潟の守備の基本的な形は、ラフリッチには千代、藤本には永田さん、内田智也はうっちーとマルシオ、金澤には松尾と松下…だったんだけど、やっぱ藤本が超めんどくさい。彼が永田さんとの1対1を挑んだと思ったら、次には一気に引いてバイタルにスペースを作って金澤の飛び出しを誘発したり…などの嫌らしいプレーを繰り返す。
それがあって最初の20分くらいはどちらかと言えば大宮ペースだったと言えるだろう。不安だった松下と松尾の間を塚本(だったかな?)に割られて決定的なシーンを作られたりしたし、その三枚が一気に前を向ける形ができてたので中盤での横パスのミスからカウンターに走られたりしたしね。
ただ、この試合の最初のターニングポイントは20分に藤本が負傷退場するという意外な形で訪れる。これで藤本に替えて吉原あたり入れて来るかと思ったのだけど、樋口監督の選択は小林慶行を入れてボランチに置き、小林大悟をトップに上げるという形。結論から言うと、これで前半の大宮のペースは終息したと思う。大悟は中盤に下がってボールを捌くプレーではさすがって所を見せていたけど、トップとしてセンターバックの永田さんと1対1気味に対峙するプレーに関しては永田さんの圧勝。そらそーだ。今の永田さんは本職以外には破れないだろう。そこでボールの流れがぶっち切られる事が、大宮からペースが離れていく一因になった。ただ、新潟のパスミスが相変わらず目立ってペースをこっちが握るまでは至らなかったのだけど。
しかしその辺から新潟の攻撃は奪ってからトップ一気にスピードアップ!って形も随分スムーズにできるようになる。前半の13分頃にアレとマルシオのワンツーでマルシオがシュート!ってシーンがあったけど、あれを単発でなく繰り出せるような形。ただ、勝負パスやサイドチェンジにミスがあったりしてなかなか決定的な形までは至らず。
あ、そうそう、話が前後するけど、やはりボランチの二人、特に千葉ちゃんは明らかにここ数試合で前に絡むプレーを意図的に増やしてるよね。何分だったか忘れたけど、塚本とレアンドロの間を縫って裏に飛び出して松尾からのパスを引き出すってプレーがあったけど(結局パスが長くてゴールラインを割ったけど)、ああいうのは明らかに9月とか10月の頃にはなかったプレー。うむ、これは絶対今の新潟の閉塞感を破る一手になりうるはずだ。まだまだそのプレーがゲームの流れを変化させたりするには至ってないけど、ブレイクスルーのきっかけになりうる形だと思う。てか千葉ちゃん、もう少しで次のフェイズに行けそうな感じがしなくもないんだよなぁ。惜しむらくは今年残された公式戦が二試合しかないって所なんだけど。

んで、試合の流れがどちらかと言えば大宮ペースだった所からフラットに戻って、どちらに転ぶか互いに出方を窺っていた34分、クロスに走り込んだ貴章がレアンドロに倒されてPKゲット!微妙な判定かなあとも思うけど、見直してみると、貴章に完全に前に入られちゃってるのと、レアンドロの貴章への後ろからの絡み方が印象悪いかもな。んでそれをアレがズバーンと決めて先制。相変わらず読まれても関係ない弾道と勢いのキックはお見事。
で、先制に成功した事で、新潟が僅かながらペースを奪い返す事に成功したまま前半終了。勝負は怒涛の後半へ。



後半の立ち上がり、これはもう明らかに新潟がフワフワしたまんま試合に入ってしまったのが分かる試合展開。この時間、大宮は前半崩れつつあった二枚のラインをもう一回整備して作り直して試合に臨んだのに比べ、新潟はそれにアジャストできずにパスミス(特に前線への縦パス)を繰り返す。ってかやっぱこのチームってまだこういうビッグゲームの異様な雰囲気にアジャストするような老獪さってないんだろうな。だからこそアウェイゴール穫られたら終了!みたいなゲームをもっと経験しなきゃいけないんだよね。改めてナビスコ予選敗退は残念過ぎる。
で、やばいなぁ…これ早くアジャストするか、誰かがセットプレーもぎ取るなり、シュートするなり、前線でキープするなりして嫌な流れを切らないと…って思ってたら、新潟の攻撃が潰えた次のタイミングでぽこ〜んと蹴られた単純なロングボールが、何故かドフリーで裏に抜けた小林大悟の足元へ。ええぇぇ!うっそおおぉぉ!!って思う暇もなく、北野が飛び出してアタックに行った所で大悟に上手く倒れられてPK献上。嫌な予感的中…。現地で観てた分には北野がボールに間に合ってるようにも見えたけど、録画見ると右手がボール行ってる反面、右足が足に行ってるのと、飛び出しを一瞬逡巡したのが印象悪かったか。で、それを小林慶行にしゃらくせーキックで決められ同点。

ただ、今年の勝ちパターンとして、先制→同点→突き放す→逃げ切りってのがあるし(コメントを読むとワンちゃんも同じ事考えてたみたいだね)、多分この一発で目を覚ますだろうし、次だ次!と思った矢先、松下のロングレンジのフリーキックがすんばらしい起動を描いてDFとGKの間に飛び込み、それをアレがヘッドでドンピシャ!素敵ぃぃぃ!!ワンちゃんのあのレンジのキックすげーな!これがあるだけで相手DFへのプレッシャーは全然違うもんな。
しかも時間も同点から僅か3分という理想的なタイミングだし、嫌な流れをぶっち切るには、どんなプレーや声援よりもゴールってのはもはや定石だし、死ぬほどデカいゴールだぜアレ、ナイス!
…と思ってたんだけど、皆様ご存知の通り、握り締めた拳を振り上げながら送った視線の先には青いアレが。うっわぁぁぁぁぁぁ!ハーフタイムに携帯で確認した前半のアレッサンドロのイエローの記録が脳裏をよぎった瞬間、ここ数年で最大のバンザイなーしよ!に襲われる事に。そして完全にトチ狂った俺はさっき振り上げた手で頭を抱えながら「隠せ隠せ!アレを隠せ!ってかうっちーあたりが村上に話しかけて視界を遮れ!『村上ちゃーん、最近どうよ〜?』みたいな。あ、もしくは後ろから『だーれだっ?』って目隠ししろ!てか塗れ!その青いのオレンジに塗れ!」とか一人狼狽。てかネタでもなんでもなく、瞬時にそれを考えてた俺の脳みその明日はどっちだ。
しかし、完全にモロバレだったアレの行為に対して主審はこの試合二枚目のイエロー提示で退場。アレの馬鹿!!キミのゴールパフォーマンスは、手を耳の横にかざして「ああん?聞こえねーなー」ってやるヤツが一番格いいんだよ。全く。
とまぁせっかく全ての要素が勝ちパターンに向けて動き出した所で唐突に訪れたどでかいアクシデント。何よりゴールという最高のカンフル剤を、ゴールを手に入れたのに打ち損ねてしまったのが痛すぎた。何にせよ、チームを救う2つ素晴らしいゴールと、チームを窮地に追い込む1つの大きな愚行を残してアレッサンドロはピッチを去ることに。まーあれだ、アレッサンドロ・ヌネスという男はこれまでのキャリアを通してゴールを積み上げる事で、自分の価値を証明してきた男だ。だったら今出来るのは最終節のガンバ戦でゴールを決めて汚名を返上するための準備をすぐに始める事だけでしょ?やるしかないよ!


そしてリードを手にしながらもトップを一人失ったチームが出来ることは二つ。もう一人のトップの負担を倍にしてこれまで通り戦うか、相手が自由に動くためのスペースを潰すために守備に専念するか。新潟が選んだのは後者だった。てか、アレが攻守の切り替えで最初に触るプレーの多さもあるし、そもそも「これまで通り」戦おうとしても、これまでの流れ自体も決して良好じゃなかったのもあるし、それにホーム川崎戦やアウェイマリノス戦みたいに、ガッチリとリードを守りきってきた経験もあるし、ってのを考えれば後者の選択は妥当だろう。30分近くあったとはいえ。
そして攻撃はほぼ放棄して、8人でスペースを埋めて、その前で貴章(+マルシオ)がひたすら走ってプレスを掛ける形で逃げ切りに入る。
で、スペースがなくなったピッチの状況に対する大宮の攻撃は、ほぼ全て前線へのロングボールに終始。スペースが無い状況では内田智也や金澤のテクニカルなサイド突破は影を潜め、ベンチを見ると、斎藤が入ったので残りは佐伯か吉原か森田って事を考えると、やっぱ気をつけるべきはロングボールとハイボールだろう、っていう流れ。吉原はスペースがあってナンボの選手。実際金澤に代わって入った吉原はやっぱ20分間空気だったし。桜井とか土岐田がいれば他の脅威もあったんだろうけどね。で、そのハイボールを新潟の守備は集中してほぼ全て跳ね返し続けるし、大宮の攻撃も決して巧妙って訳ではなかったので、ジリジリと残り時間を減らしていく事に成功する。
となると、あと怖いのはどこかで大宮が開き直ってやってくるであろうパワープレー。富田やレアンドロと言った高さに自信のある選手をどこかで上げてくる事が予想されたのだけど、やはり85分前後でレアンドロが前に張り付く形が目立ってくる。で、最近の新潟のパワープレーに対する逃げ切りの常套手段って、慶治をバレーで言う所のワンポイントブロッカーみたいにロングボールの跳ね返し役として起用するってモノだけど、淳さんがまず選んだのはマルシオに代えてテラ。クロスの出所をまず潰すって目論見があったのだろう。
ただ、あくまで結果論だけど、あとはひたすらどんな状況からでもロングボールを放り込むしか手がない大宮に対するんだったら、これまで実績を上げてきた慶治を入れてとにかく跳ね返すのが先だったのだと思う。(繰り返すけど)あくまで結果論だけど、ベンチは勝負のタイミングを見誤ってしまったと思う。なんせ慶治を入れようと準備した所で、一番の脅威、っていうかほぼ唯一の脅威だったレアンドロのパワープレーを被弾して同点にされてしまったのだから。あああああああああああああ
いやこれはもうマジで椅子から滑り落ちてしまった。誇張でも比喩でもなく、本当に椅子から転げ落ちてしまった。サッカー見ててここまで激しく崩れ落ちたのいつ以来だろう。永田さんとアレが次節サスペンション、今後の相手、残り時間とにらめっこしながらようやく辿りついた88分であると言う事、仮に同点に追いつかれた場合にその後逆転するための余力を捨て去ってまで守り尽くす事を決めたチーム状況、そしてこの試合の勝ち点3の意味。追いつかれちゃダメだった。本当に。そして2-2のまま試合終了。




しかし1ポイントは確保したのだ。この1は残り2試合であるということを考えれば本当に大きい。そして今こそ、サッカーの苦しみを知った今シーズンの経験値を活かす時だ。いや、今年だけじゃない。アルビレックス新潟はずっとギリギリの戦いをしてきたチームだ。J1昇格争い、J1生き残りの戦い。ぬるいシーズンなんて一つもなかった。そしてその極限の状態から必ずその先の光を掴んできたチームだ。その経験を今こそ活かす時なんだ。ぜってえええええええ勝つ!!!!!!!!!