【レビュー】09年第2節 鹿島戦@スワン

アルビレックス新潟 2-1 鹿島アントラーズ
スタッツ
MORE!!MORE!!!!!MORE!!!!!!!!!
まだまだまだ。全然まだまだ。こんなんで満足なんてしてらんないよ。まだ勝ち点6を取ったに過ぎないんだから。このチームが目指すべきはもっとはるか先だってことが分かった今、求めるべきはもっともっと、だね。全ての予定と計画に上方修正を。全ての妥協のスポイルを。そしてこのチームに対してもっと貪欲に、意地汚く、要求を。


試合開始から新潟ペース。前半は停滞した開幕戦に比べ、今日は最初からエンジン全開。相変わらずウイングがちょっと深い位置を取る4-5-1気味の守備ブロックをまず作って鹿島に立ち向かう。
で、プレビューでも書いたけど鹿島戦と言えば相手のサイドバックとの戦い。だからここをどうやって対処するかをまず観てたんだけど、これはもうウイング二人がすっげーいい仕事。貴章はその壮絶な運動量と、FWとしては文句なしで日本人ナンバーワンの守備力、いやアジアナンバーワンだな、ん?いや下手すると世界屈指?wな守備力で、アライバに全く、文字通りほんの一つも攻撃での仕事をさせない。だって、試合通して何度かあったけど、油断してると超高い位置で貴章にボール奪われて高速ドリブル始められちゃんだから、前に出れるわけないよね。
そして一方のペドロはしっかり守備をしながらも、貴章と同様に常に縦へ一気に抜けていくカウンターの脅威をちらつかせてる。こうなっちゃうとやっぱり内田篤人も簡単には上がれない。
なので、鹿島がボール持ってビルドアップする時に一番狙いたいサイドバックへのチャレンジングなパスってのがまず死ぬ。単純に足元に通すパスはウイングがマークしてて出せないし、じゃあ前のスペースに出して走らせようとしても、当然そこには新潟のサイドバックが待ち構えてるので出せるわけがない。
じゃあサイドハーフは?ってなると3トップの両翼がそれだけ前への意識をちらつかせながらも積極的に守備をするので、サイドでのチャレンジングなプレーが出来ないんだよね。なので、サイドバックの前で右往左往するか、ちょっと中に絞ってビルドアップに参加するしかないのでちっとも怖さがない。
となると、センターでの勝負になるのだけど、前半のアンカー勲と、センターバック2枚の真ん中3人はまさに盤石。今年の鹿島の選択として、長めのボールをトップに一気に当てて展開するって形が多い印象だけど、今日のセンターバック相手だとそれは無理。となるとコウロキあたりはサイドに流れて右のアツトあたりと崩していこうとするんだけど、懸念だったジウトンの守備がちっとも破綻してくれないwwてかジウトン1週間で守備上手くなりすぎwwそれに加えてすすすっと永田さんがフォローするもんだから、ホント盤石。
そしてセンターの前目ではマルシオと松下、そしてオオシが、どこから攻略すればいいか分からずに攻めあぐねるボランチセンターバックに対してガッツンガッツンプレスを掛けまくる。それはそれはもう壮絶なやつを。で、その後ろではセンターバックのフォローもやってる勲がこの前二人のセンターハーフのフォローにも本当に気を使っていて、ココ!ってシーンでは必ず顔を出してボールをフォローする。これぞまさに「マケレレ・ロール」ってやつだよね。この試合の勲はホント凄かった。
あ、そうそう。それで勲が前に行った時は鹿島のトップをマークしてない方のセンターバックがちょっと前に出てバイタルを埋めてたんだよね。そんなに数は多くなかったけど、こういう連動も見られたんだよ。これって開幕戦の反省を活かして修正したって事なんだろうね。淳さんすげーよ。ホントすげーよ。


・・・・と長くなったけど、要は「鹿島がセンターもサイドも、どこにも攻め手を見つけられない状態が続いた」って事。だって前半の鹿島のシュートって野沢がヤケクソ気味にミドル打った一本だけだよね。まーたスラムダンクを引き合いに出すけど(これ多過ぎるよな、俺w)、これって完全に山王工業の伝家の宝刀=フルコートゾーンプレス状態だよねwwどこにも攻略の道が見つからない状態。守備の面から完全に試合を支配することを可能にする形だよ。
結論から言うと、このエンジン全開の連動は後半にガス切れしてストップしちゃうんだけど、結果的にそうやってゲームを圧倒的な支配下に置いてる時間帯で2点獲ってしまったんだから、これは完全に試合巧者っぷりは新潟が上回ったって事だよね。てか、恐らく前半でフル稼働して3点目獲りに行ったんだよね。結果的に2点でOKだったけど、どう見ても3点獲って前半でゲームを決めてしまうつもりだったんだと思う。
すげー。どう考えてもすげー。何よりこれを鹿島相手に平気でやっちゃうのがすげー。そして開幕戦の後半、この試合の前半と、このチームは「勝負所で一点集中して、ゲームを決めるゴールを奪ってしまう」って事が出来るチームになりつつあるようだ。うん、強いよ。こういうことができるチームは間違いなく強いよ。これをシーズン中で何度出来るチームか、ってのはまだ分からないし楽観はあまりに早計だけど、これがコンスタントにできるならば、このチームは相当やるはずだよ。



で、そうなると鹿島のパスミスのオンパレード、ビルドアップ時のボールロストが山積するのは当然の帰着。ここを見逃さずにサクッと奪って一気に攻守を切り替えのスピードを上げて攻め込んで行く。これは淳さんがこの試合に向けて口を酸っぱくして言ってきた事そのものだね。素晴らしい。

試合の流れに目を移すと、そうやって超ハイプレッシャーで早々に流れをつかんだ新潟は最初のセットプレーをモノにする。やっぱ今年のセットプレーは脅威だよ。ヤバイよ。これまではファーへのボールが多かったけど、この試合の一発目はニアへのボール。それを貴章がぐにゃっと柔軟なフリックオンかますと、ボールはソガハタの手を掠めてゴールを飛び込む。貴章かっけええええ!!!これを決めちゃうのが貴章なんだよな。
そうなるともう止まらない新潟。最初からプレスプレスプレス!の意識全開のマルシオが、鹿島のDFラインでのパス回しでイノハがトラップする瞬間にプレスに走ると、ものの見事にイノハがトラップミス。あれさ、イノハがトラップミスしてからマルシオが詰めたんじゃ遅いんだよね。相手のミスが起きることを想定の中に入れてプレスに走ったタイミングで、ご丁寧にトラップミスしてくれたのを一気にスピード上げて頂戴したんだよね。凄いぜマルシオ
で、超高い位置でボール奪取に成功したのを見て、一気に攻守の切り替えを行って、奪ったボールをコントロールするマルシオを貴章とオオシが追い越して走る。3。鹿島のDFはそれに釣られる。そこでマルシオはキープを選択。2。
で、マルシオがそのタメを作ってる間に、さっきまでオーバラップを始めたアツトに追従して守備に戻ってたペドロが、攻守の切り替えが遅れたアツトを置き去りにして猛然と左サイドを疾走してくる。1。
そしてペドロがDFラインの横をするっと抜けるタイミングでマルシオから相手の息の根を止める、文字通りのキラーパスが出る。0。
あとはペドロがそれをゴール隅に流し込むだけ。2-0。マルシオが積極的なプレスでボールを高い位置で奪う。それを見て3トップのうちの2枚が走って相手の守備を引き付ける。そして残りの1枚のペドロが上がってくるのを分かっていたマルシオがキープして、想定通りの完璧なタイミングで勝負パス出して、ゴールゲット。完璧。これぞコミュニケーション。これぞチームだ。

その後もいい守備からの速攻を繰り返す新潟。サイドをえぐって中で勝負!って形が少なかったのでオオシの存在感が目立たなかったって見方もあるだろうけど、やっぱオオシの存在はでかい。彼が気の利いたところに顔を出して、すっとシンプルかつ的確にボールに触って捌いてくれるので、その後ろの4人(ペドロ、松下、マルシオ、貴章)が楽に前を向けるんだよね。



と、ほぼ完璧な内容の前半。凄かった。痺れた。音楽で言うならエレクトリック期のマイルス・デイヴィスみたい。みんなそれぞれ複数のリズムを持ってて、それぞれが状況によって違うリズムを叩いてるんだけど、ここ!ってところでは全員の拍の頭がピタッと合うんだよね。ジウトンなんて32拍子をBPM250くらいで叩いてる感じだよなwあーそうか、つまりこれポリリズムじゃん。混沌とした要素が複合して厚い層を作りながらも、決めるところではピタッと合うポリリズムだ。あー!そっかそっかそっか、三つ子の曲のセレクトはこれを暗示していたんだなwwww
09年のアルビレックス新潟は、ポリリズムである。





後半、オリベイラは全くダメだったアライバとコウロキに替えて、小笠原と田代を投入。左サイドバックにはなんとダニーロを下げる!うそーww
で、後半は前半のような超ハイプレッシャーがガス切れして影を潜めたこと、それと小笠原がさすがのクラッキっぷりを発揮した事もあって鹿島ペースに。ここで前半と決定的に違ったのはやっぱり新潟のセンター3枚の位置取りとプレスの機能性だよね。小笠原が低い位置でキープできるので、それに中盤がプレスに行った所でキレイに縦パスを出されて、ターゲットになるべく投入された田代やマルキにボールが入る、ってシーンが増えたので、中盤3人のところでのプレスが上手くいかなくなったんだよね。
この試合で完全に「崩された」ってのは55分の、センターからの右へロングパスを受けたマルキがスライディングに行った永田さんを交わして(永田さんの明確なミスってこれくらいだったかな?)、中に勝負パスだして中で野沢が触るも、千代がぎりぎりで触って難を逃れる、っていうこのシーンくらいだったと思うんだけど、この原因って中盤のど真ん中の守備がゆるくて、するするとボールを通されちゃったからなんだよね。
やっぱ今年のチームは真ん中3人がキモだね。たぶん貴章もペドロも深い位置を取って守れるので、単純にサイドは2枚並んで2段構えの守備が出来るので常に計算は立つと思うんだけど、真ん中は常にポジションの修正を繰り返してアジャストしていかないとだめだね。
でもこうやって、はっきりといい時/悪い時の理由が分かるのっていいことなんだよね。何となく勝ってる、何となくうまく行ってる、じゃないわけだから。本当に強いチームは、ロジカルにその理由を説明できるものだと思うんだよね。あとはそれの微調整とブラッシュアップを繰り返せばいい。


で、こうやって全体の運動量が落ちてきたところで一気に目立ってきたのが貴章。岡田監督の目の前だってのもあるだろうけど(だって貴章は代表発表前になると途端に凄くなるじゃん、毎回w)、なんかもう凄いことになってるよね。彼の驚異的な身体能力、ポテンシャルってのは誰もが知ってることで、多くの人に期待されて来たんだと思うんだけど、これまでチーム編成の部分もあってそれが発揮されてなかったってのはあると思うんだ。てか、淳さんも彼がウイングとしてサイドを任せればその真価を発揮するだろうってのは分かってたと思うんだよ。でもチーム編成上、これまでそれはできなかった。でも今年、補強が上手くいったことでこの英断が出来たんだろうね。
彼の驚異的な運動量、スピード、守備能力、ドリブルのセンス。それがついに開花し始めている。彼がホンモノのバケモノになりつつある。後半にバック2層目から見てた俺の目の前を猛烈なスピードでアップダウンしてた彼を観てたら、俺プルプルしちゃったもの。髪をぐしゃってやってプルプルしちゃったもの。矢沢、観てるか?お前を超える逸材がここにいるのだ状態だったもの。またスラムダンクネタだもの。安西先生だもの。人間だもの。おがさわらみつを。


で、後半にすごく興味深かったのが、時間帯によって貴章が右サイドバックの位置に入って、うっちーがフリーマンみたいな感じで勲の隣でバイタルケアしたり、左サイドバックダニーロをケアしてたりしたこと。これさ、開幕戦の後半でもやってて、その時は流れで何となくそうなったのかと思ったんだけど、これで確信。これ、今年淳さんが用意したチームの戦術の一つだわ。うっちーと貴章が並んでマークを受け渡した後で、貴章がそのまんまサイドバックの位置に残って、うっちーが前をフォローすることを許容する戦術。
いやーしかし、「ウイングが時にサイドバックになって(千代が傷んだらセンターバックもw)、もともとのサイドバックが中盤の薄い所を埋めていく」サッカーなんて、ほとんど見たことないよw何これwwすげーよ淳さんww
でもそれも矢野貴章という極めて特異な選手がいるから出来るんだよね。かつてジュビロ磐田は名波という圧倒的な選手を活かすために、彼を中心に4人の選手を配置してパスワークで相手を崩していくっていう通称「N-BOX」っていう革新的なサッカーをしてたけど、今の新潟は貴章ありきのサッカーやってる感じだよね。
だから、名前をつけると何だろう?ボックスじゃねーからK-BOXは全然違うよねw。イメージ的には右サイドの貴章が図太い軸になって、そこを中心に左に大鉈が存在してる感じ?なんか木こりが持ってるでっかい斧みたいなイメージ。じゃあK-AXとか?wwwだせーwww
でもね、貴章これで満足してもらっちゃ困るよ。08年だって最初はついに覚醒か?!!なんて思ったけど、チーム事情があったとはいえだんだん凹んできちゃったからね。今度こそ、本当に覚醒・躍進の時にしちゃおうぜ!頑張れ貴章!アルビレックス新潟とはつまりキミのチームだ。


で、前述のとおり鹿島ペースの後半だったんだけど、千代と永田さんの二人が相変わらず盤石で真ん中ではすべて跳ね返すし、鹿島の左サイドは貴章とうっちーのおかげで死んでるし、右サイドにロングボール使いながら攻め始めたら、3トップの構成を割り切ってオオシ左・ペドロセンターに変えてオオシを跳ね返す役にしちゃうし(淳さんかっけー!)、そんなにヒヤヒヤするシーンもなく時間は進む。あとやっぱ前線の選手が常にカウンターの脅威をちらつかせてるってのが大きい。
ただ、これは絶対に修正してほしいんだけど、セットプレーで北野と新潟の選手が被るシーンが目に付いた。結局、最後の最後の失点も原因はそれだけど、あれは声を出し合えば問題ないところなんだから、そんなつまんないミスで失点するのはもったいなすぎる。今年の北野は2試合ともに安定してると思うけど、あれだけは修正を。今日は2点リードしてたからいけど、1点差のギリギリのシーンで起きたら目も当てられないからね。
その後、新潟がオオシ→ヨンチョル(ヨンチョルは試合に入れないまま終わっちゃったね。もう少しいい状況で試してあげたかった。)、松下→千葉ちゃん(とりあえず今千葉ちゃんは頼れるクローザーって感じだね)の交替。鹿島は本山→大迫デビュー。おおーここで使ってくるか、と思ったけど大勢に影響はなし、で、前述の通りつまんない連係ミスから失点したものの2-1で勝利。開幕2連勝。おけおけ。



しかし繰り返すけど、まだまだ。全然まだまだ。もっともっとやれるよ、このチームは。淳さんの開幕戦とこの試合のコメントを見てると、監督自身もかなり手ごたえを感じてるみたいだし、もっと要求していいよ。
それに、今後このスタメンが使えなくなる状況が出てくる。その時にどうするかって事もまだ不透明だ。てか、控え組は金沢と引き分けてる場合じゃないよ。もっともっと突き上げていかないと。淳さんやうっちーがベンチ入りのギリギリのラインにいる選手に対して、メディアを通してチクっと釘を刺してるのを、認識してくれよ。このチームの流れを止めちゃ駄目だぜ。