【レビュー】09年第6節 広島戦@スワン

アルビレックス新潟 3-3 サンフレッチェ広島
スタッツ


甘い。甘いね。青いね。こういうゲームで逃げ切れるチームになりたいよね。こういうゲームで勝ち点3獲れるようになったら本物なんだろうけどね。よく2点差って怖いって言うけど、俺あの考え方嫌いなんだよね。2点差は怖いスコアじゃなくて、勝ちきれなくちゃ恥ずかしいスコアだと考えられるチームになりたいよ。2点差をつけるってのは相当に努力しなくちゃいけないんだから、その努力の対価として勝ち点3をしっかり獲れるチームになりたいよね。
あとはまあ、これ俺が言うまでもなく、あの試合に関して言えば観客も青すぎたよね。審判へのブーイング、あれただのフラストレーションの捌け口でしょ?勝ってたら絶対ブーイングしないわけじゃん。自分の溜飲を下げるっていう、ごく小さく不格好な自己満足以外、何のメリットもないじゃん。ましてや、チームの勝利の加速装置とは完全に対岸にあるものだよね。成長しなきゃ。チームも、こっちも。
だって今年のチームは絶対にもっと上いける、もっと成長できるチームなんだから、それに遅れを取るわけにいかないでしょ。



試合の立ち上がりにまず注目だったのは、新潟が広島の1トップ2シャドーにどう対応するか。これ、多分同様の形で戦ってくるマリノス戦の戦いがヒントになったんだろうね。プレビューでも書いたけど、あの試合ではサイドバックが前の位置を取って時に中に絞ることで、中盤で余りがちになっちゃうアタッカーにプレスを仕掛けていた。それがこの試合の最序盤では何度も見られたんだよね。
その結果、マリノス戦みたいに中盤の選手に自由を与えなかったことで、広島のDFラインからのビルドアップも機能不全に陥るので、それに対面する新潟の前線のプレスがうま〜くかかるという好循環。
んで、それを見てなのか、元々そのつもりだったのか(多分、いや絶対後者だな)、広島はそのプレスに引っかかるのを避けるロングボ−ルを主体に戦う。特にミキッチと服部の両サイドをどーんと縦に走らせるロングボールで新潟のプレスをいなしていく。うーむ、やっぱ広島いいチームだな。こういうのをチーム全員が高いレベルで意識統一できるのは見事だと思う。
んで、先制点は広島。青山のロングボールに寿人が千代を追い抜いて飛び出す。このシーン、角度的にもタイミング的にも、北野と千代の中では「寿人は一端キープする」って選択肢が、恐らく最上位だったんだと思う。しかし、そこでシュートの選択を出来るのが佐藤寿人という選手なんだよね。実にあっけなく、すこーんとゴール左隅に流し込んでゴールを奪う。0-1。

しかし流れは新潟。その先制点にも慌てずこれまで通りプレスを仕掛け、広島のサイドへのロングボールにもめげずにジウトンもうっちーも積極的に上がってビルドアップに絡む。広島のビルドアップ!ビルドアップ!ビルドアップ!な戦い方なら、戦前は奪ってカウンタードーン!な形が当然想定されたんだけど、ロングボール主体で戦ってきた前半の広島に対しては、相手にプレスを仕掛けつつも、こっちがアタッキングサードでビルドアップを仕掛けるという形が頻出。わーお、こういうのも出来るんじゃない!っていうちょっとしたポジティヴな驚き。
で、22分。左でペドロが突っかけた流れから逆サイドの貴章を経由して、そのこぼれを千代が拾って上手くラインのギャップに飛び込んだペドロの頭めがけてクロス→流し込んで同点!いやーしかし改めて千代って新潟に来てからああいうボール入れられるようになったよな。福岡時代なんてあんなトライさえしなかったと思うんだけどw
で、そのプレーの際に交錯した広島のGKの佐藤が負傷退場。Jリーグデビューの中林が入る。ぶっちゃけ、広島の最大のアキレス腱ってGKだと思ってて、今正GKを張ってる佐藤自体も正直アレなのでその代わりって言うと・・・って期待してたんだよね。んで、そんな期待の中、交代後ほぼ最初のプレーと言える30分のCKを見事ファンブルして、それをペドロがうまーく流し込んであっという間に逆転成功。これはラッキー。
その後も流れは新潟。相変わらず前線が動き回って広島の守備に対して脅威を与え続ける。そして圧巻は43分。左サイドで得たスローインから約50秒間のビルドアップと広島の守備組織の攻略開始。右サイドで貴章とマルシオとうっちーが起点を作り、そこから中にボールを戻すと一気にスピードアップ!バイタルエリアでマルシオ→勲→ペドロ→勲→ペドロとワンタッチで繋ぎペドロが組織を壊しにしかけて一端はボールを失いそうになるものの、それをうまくオオシがフォローして柔軟なポストで数秒の為を作る。そこに引き寄せられる広島のDFをいなすように、そこから勲→うっちー、そして最後はぽっかり空いた右サイドを貴章が突いてクロス→ペドロがプッシュ!!!3-1。ペドロハットトリック達成。完璧。震えるぜ!
んで、ペドロは真っ先に淳さんのもとへ走りハイタッチ。ペドロと淳さんの蜜月関係が伺えるシーンだったね。てか、こりゃペドロは淳さん自慢のトマトスープ一服盛られてるなwwペドロはウチの子です。返しません。
そして前半終了。基本的に新潟ペースだったけど、広島はひたすら愚直にロングボールで新潟のDFラインの裏を狙って新潟の守備を走らせまくっていた。あとから考えれば、暑い気候条件の中で、ああやって走らされたのが後半の布石になっていたのかもしれない。広島、これ狙ってたんならマジで恐ろしいチームだぜ。


後半は打って変わって広島ペース。組織をセットした状態からのロングボールがメインだった前半と比べて、全体の位置取りが前掛かりになってポゼッションを上げて新潟の組織にプレッシャーを与え続ける。
で、後半にポイントだったのはジウトンのサイド。結論から言っちゃうと、俺この試合の新潟の守備で一番頑張ったのってジウトンだったと思うんだよね。なんかいろんな媒体読むとクリシェのように「ジウトンの攻め上がった裏を狙われて」とかいう表現が出てくるけど、そんなことねーと思うんだけどな。それあまりにイージー過ぎるでしょう。
問題はそうじゃないよ。てか、俺ミキッチという今年のJリーグでも指折りの右サイドアタッカーに対峙するって事で、抜かれまくちゃったらどうしようって思ってたんだけど、完全に入れ替わられてピンチ迎えたのって前半1回、後半1回くらいだったよね。残りは我慢してしっかり相手の攻撃をディレイさせる仕事をやってたと思うよ。かつカウンターの先陣になる意識も忘れてなかったのは評価されるべきだと思う。
でもジウトンのサイドから何度も攻め込まれたのは事実。じゃあなんでそうなったかって言うと、それはもう単純な話で、このサイドで何度も1対2の形を作られてしまったから。ジウトンの守備のクオリティ云々じゃなくて、広島が右サイドにミキッチを張らせてボールを送り込むのを繰り返す中で、そこに2シャドーの高柳(67分からは高萩)、柏木や寿人やボランチの青山や、CBの森脇あたりが必ずフォローに走ってたのを、新潟の選手が捕まえ切れなかったのが苦戦の最大の原因だったと思う。これ、試合後の選手のコメント見ると誰もが口にしてることだけど。
結局、柏木の55分のゴールはその歪な部分をまさに突かれた形だったしね。サイドで起点を作られた時点で、ミキッチに対してジウトン、高柳に対して勲が付いたんだけど、そこで勲が引っ張られた事で真ん中がぽっかり空いて、嘘みたいにフリーになった柏木がドカン、で3-2。めちゃくちゃ如実にこの試合の最大の反省点を炙り出す失点だった。


つーか、これって結局前節の京都戦でやられちゃったのと発想は同じなんだよね。要は、「新潟はサイドバックの前に一枚置かれてオーバーラップを封じられちゃうと機能不全に陥る」って事。4-3-3というシステムで戦う以上、サイドバックの前ってのはエアポケットになっちゃうのでそこを埋める存在がいなくてはならないのに、そこを侵略されて起点を作られちゃうのはキツイし、それに新潟の基本戦術は「サイドバックがビルドアップに参加するなど攻守の要になる」ってものなので、サイドバックが上がれないとボールの保持力も落ちるし、それにラインも上げられない。新潟のDFラインの上下動って実はセンターバックじゃなくてサイドバックの位置取りがキーポイントになるからね。
いや〜、この2試合を見てスカウティングしてきた相手チームは間違いなくこれを参考にしてやってくるだろうね。今の新潟の最大の弱点だと思う。これを今後どうクリアしていくかってのは、今年の最終成績を大きく左右する要素だろう。その課題に対しての回答を、是非とも早急に見せてほしいと思うよ。

で、広島が単純に狡猾だなあと思ったのは、新潟の左サイドを狙ってきたっていう点。だって右は矢野貴章という壮絶な運動量を誇る選手がめちゃくちゃ走るので、理屈じゃなくその問題を解決してしまうのを期待できるけど、左はそんな存在がいないのでペドロと松下と勲あたりが連動して組織を作らなくてはならないからね。でも、結局その組織を広島が作らせなかった。前半のロングボールの応酬という布石、そして後半も一気にサイドにボールを展開されて走らされてどんどんスタミナの残量を削られるという事実。その結果自由を謳歌する広島の中盤の選手。それが全部相まって後半の大苦戦が作られちゃったんだよね。うむ、やっぱ広島つえーよ。


ただ、66分過ぎの新潟の連続カウンター(左の松下のクロスからうっちーヘッドも力なく中林の手に収まる、ジウトンのクロスからマルシオが完璧なタイミングで合わせるも枠外)で決定的な形が作れたのも事実。やっぱこうやって相手がボールを保持してくれるってのは、逆に言えば新潟の伝家の宝刀=カウンターを抜いて4点目というトドメを刺すチャンスも同時に包括してるんだよね。

だからこの時間で守備偏重と攻撃偏重、どちらも選択肢があったんだよね。となると、この試合の問題であり続けた左サイドに運動量と言う刺激を与えるって意味でも、新潟で最強のジョーカーであるって意味でも、そして残り20分って時間を見ても、ヨンチョルの投入は自然な流れだった。ただ、ここでとんでもなく痛かったのは、ヨンチョルを投入して流れを変えようとしてピッチサイドまで彼を送り込んだタイミングで、CKからのオウンゴールという不運に見舞われちゃったって事。
これ完全にタラレバの妄想に過ぎないけど、リードした状態でヨンチョルを投入出来てれば、試合の流れは随分と違ったものになったんじゃないだろうか。ヨンチョルの投入で得られた影響を見て、アトム入れて攻撃的にシフトすることも、千葉ちゃん入れて守備を引き締めることもできる、っていういろんな選択肢が生まれたと思う。


で、これに関しては試合後の淳さんのコメントみたら全くそれと同じこと(「守備に回るか、攻撃に出るかをベンチで話していて、まだ時間があったので運動量を期待してヨンチョルを投入したら3点目を失点してしまった」)言ってるけど、やっぱここがこの試合の分水嶺だったんだろうね。う〜む、やっぱサッカーって難しいもんだな。


その後も結局そのまんま我慢してカウンターを狙う新潟と、攻め込むもさすがに運動量が落ちて最後の決定打に欠ける広島、って構図が10分間続いて試合終了。一言で言えば、上手くやれば絶対に確保できた2ポイントが手から零れ落ちた。そんな試合だった。



だけど下を向いてる暇はない。今は自分たちの武器と弱点に真摯に向き合い、いい準備をしてこれから始まる地獄のGW連戦に挑むだけだよね。まずは大宮、絶対に叩いてやろうぜ。