【レビュー】09年第7節 大宮戦@埼スタ

大宮アルディージャ 0-1 アルビレックス新潟
スタッツ

02年から始まった埼スタ大宮物語。
第一章は宮沢克行の左足炸裂のコメディ。第二章は「今の恋人」山口素弘が昔の恋人を狡猾に罠に嵌めて絶望に追い込むという愛憎劇。第三章は3人のブラジル人暗殺者が仕事を完遂するミステリー。第四章はブラジルから来た箱入り娘=エジミウソンドス・サントス・シウバちゃんの「ワタシが主役なの!大宮は引き立て役!」な一人舞台。
そして今回の第五章は、さしずめ皇帝=マルシオ・リシャルデスの、彼にしか使えないロイヤルな右足という魔法のタクトが振られたファンタジーって感じだろうか。

やっぱホーム埼玉スタジアムで負けるわけねーっつーの!

まずこの試合で何といっても大きく影響したのが雨。試合開始時から最後までずっと降り続いたこの雨の影響もあって、互いにミスが多い展開が続く。特に前線へのロングレンジの縦パスがDFに引っかかったり、ゴールラインを割ったりって形が多かったのだけど、これは殆ど上がらない大宮のサイドバックの位置取りってのも影響してたのもあるけど、やっぱり雨で普段のコントロールの感覚が発揮できないってのが大きかったと思う。
で、そうやってパスミスが増えるとやっぱり組織の連動もなかなか生まれない。淳さんはこの試合を厳しく評価して、特に「中盤でボールが動かせなかった」って点を繰り返し強調していたけど、前半はまさにそんな感じ。大宮らしい「選手が所定の位置から動かない」守備を前に、ボールの流れが停滞するシーンが目立つ。
結局新潟にとって、前半スペクタクルだったシーンって言えば、右からのうっちーのクロスから、ヨンチョルを超えて大外の松下に繋がってボレーを放つもクロスバーを叩いたシーンだとか、永田さんがびっくりするくらいオーバーラップして右からチャンスを作り出したシーンとか(あれはびっくりしたw)、そしてジウトンの連続ずっこけくらいかwwてかジウトン20歳になったばかりって嘘だろwwwぜってードリフ直撃世代だよあれwww

ただ、そんな展開でもゲームが壊れなかったのはひとえに守備陣の集中力のなせる業。選手のコメントを見ると、前節の3失点を受けて守備をまずしっかりやる、ってところから入るって言うコンセンサスを持ってこの試合に臨んだようだけど、大宮がはっきりとラインの裏を狙ってFWを走らせるという意図を持って戦ってきたのに対して、何度か裏を取られかけたのを除けば、ほぼ問題なく守る。ここ2試合は守備のマズさで惜しいポイントを落としたってのを考えれば、守備の改善を図る姿勢ってのは当然と言えば当然なんだけど、それをしっかり達成できるってのは、やっぱ力のあるチームである証左って言えるかもね。
ということで、あんまり書くことがなくてつらいww前半は0-0のまま終了。淳さんのハーフタイムコメントの「こういうゲームを勝とう」ってのは、何かすげー分かる気がする。天候も、コンディショニングも、あと相手もw、いろんな要素を考えると「いいゲーム」になるのが難しいゲーム。ただそれでも勝ち点3を拾う事ができるか、っていうね。


後半は劇的な変化はないものの、全体的なポジショニングが前半に比べると少し積極的な位置に変わる。前半はあまり見られなかった前からのプレスや、アタッキングサードに侵入するタイミングでの攻撃的なパス交換といったプレーがちょっとずつ見られるようになってくる。
特にその後半の立ち上がりはジウトン、ヨンチョルが絡む左サイドで基点を作ることができて、前半にはなかった中盤でのリズムが生まれてくる。やっぱこうやって手詰まり感全開になってしまった状態においては、ジウトンみたいな前を向いて基点になれる選手がスタメンにいるってのは効果を発揮するんだよな。淳さんがサイドバックに求めてる事を考えれば、やっぱジウトンを選択するよなぁ。と改めて思う。
で、そのリズムの変動によって、攻守の切り替えも前半よりスムーズになり、大宮の守備がセットする前に攻撃を仕掛けられるシーンがやっと作れるようになる。この試合の主役=マルシオが右サイドを駆け抜けてオオシにクロスをあげてヘッドをチャレンジするも左に逸れて行く、ってシーンは松下のシーン以来、久々のいい形だった。
んで、これを見てなのか大宮が動く。小林慶行に変えて土岐田。土岐田が右サイドバックパク・ウォンジェボランチにスライド。それと同時に前線の並びが、藤田と石原の2トップから、藤田1トップ、石原が右、藤本が左、で、中盤3枚に橋本、金澤、パクという並びに変わる。張監督はこの交代策の意図として「新潟の3枚のボランチに対して遅れてしまっていたから、こちらも3枚にする必要があった。」とコメントしてるけど、中盤の真ん中で支配されつつあったのを改善すると同時に、右サイドを活性化させて新潟の左サイドのジウトンとヨンチョルのラインを分断する、って意図もあったんじゃないだろうか。
で、それに対して淳さんは松下に変えてアトムを投入し、アトムが左ウイング、ヨンチョルがセンターハーフに入るという交代策を打って、そのケアをされた左サイドに更にカンフル剤を打つと同時に、ヨンチョルという個人で前を向ける選手を真ん中に持ってきて、中盤の新たな流れを作ろうとする。わーお、今日の淳さん積極的!
  正直、この交代が劇的な変化をもたらした訳ではなかった。ただ、この試合で何度も果敢にスライディングをかまして体を張り、かつボールの配給も中々だったヨンチョルをセンターに使うっていう実戦テストが良好に終わったこと、そしてスタメンを脅かす一番手を争わなくてはならないアトムが及第点以上の動きだった事、ってのを考えればこの試合だけでなく、今後にも大きな意味を持つ交代だったといえるかもしれない。ペドロ不在の功罪だろうね。

その後、大宮は藤田に替えてデニス・マルケスを投入するものの、全体的な流れは新潟。80分にはCKから永田さんが折り返して、オオシが決定的なシュートを放つもののゴールラインギリギリ手前でブロックされるなどなど、いい形を作る。
で、この試合のひとつのキーになったのは金澤の退場。てか、大宮戦で退場者が出ないなんて嘘だよな!大宮戦はこうじゃないと!!退場者が出ないとしまらねーよwwなんつーか、ソーセージ盛りにマスタード、みたいなもんだな!
ただ大宮も88分にまさに最後っ屁のように左で受けたデニス・マルケスが真ん中に持ち込んでシュートを放つも、北野がこれをギリギリで触ってクロスバーに逃げるってシーンもありつつ、埼スタ大宮物語の第五章のクライマックスである5分のロスタイムへと突入していく。つーかゴール裏もあの「5分」って表示見て明らかにテンション上がったよなwwでもまじめな話、それは「何か」を期待させてくれるチームだからなんだよね。いいことだ。

残りも2分を切った93分。ジウトンが粘ってゲットしたCK。キッカーのマルシオはアトムへのショートコーナーを選択する。アトムがそれを丁寧にマルシオにリターン返すと、マルシオは迷わずその魔法の右足を振り抜く。

PA外の角度のないところから放たれたボールは、降りしきる雨空にちょっと気の早い虹を描き、江角の手を抜けてゴール右隅にすっぽりと収まる。0-1。夢のような先制点と、爆発するゴール裏。唯一絶対の皇帝が操る魔法の威力は、こんなに凄いものだったのだ。


しかしあのゴールを「狙ったのか否か」なんて議論は全くの無粋だよね。マルシオ・リシャルデスという選手が、新潟に入ってからどんなプレーをしてきたか、どんなゴールを奪ってきたか、ってをずっと見続けている人なら、そんな議論が全くの不毛であるということはわかるだろう。


で、最後は千葉ちゃんをクローザーとして投入してマトのパワープレーをぶっ潰して試合終了。GWの連戦初戦を取ったという意味でも、ここ2試合の微妙な空気を払拭するって意味でも、すごく大きな勝ち点3だった。


最後に、マルシオのコメントを。
「ただの勝ちじゃない。首位を取るための勝利を狙う、そのためのゴールだった」
そう、選手たちはそういうモチベーションで戦ってる。こっちが遅れをとるわけにいかないよ。まずは明日しっかり勝って、埼スタに首位攻防戦のために帰ってこよう。もっともっと上を目指そう。