【レビュー】09年第9節 浦和戦@埼スタ

浦和レッズ 1-0 アルビレックス新潟
スタッツ


数メートル、数秒。それが及ぼす影響をどちらが熟知していたか。その差なんだと思う。向こうはその差が生死を分ける戦いを何度も経験してきたチーム。国立競技場でも、アジアでもね。
やっぱり上で戦わなくちゃ知ることが出来ないことは本当に多くあるって事なんだよね。ならば食らい付こう。まだまだまだまだ足りないことが多すぎるチームなんだ。だからこそ、上にいてそれを知らなくちゃいけないんだよ。



試合の立ち上がりは浦和ペース。前戦の4人が積極的に前の位置を取り、積極的なポゼッションから新潟の守備陣にプレッシャーを掛けまくる。2分には中盤でパスカットしたポンテからエジ、その後も主に新潟の右サイドで山田直、原口あたりが絡んで起点を作っていくものの、そこは新潟の守備陣が踏ん張って決定的な形までは作らせない。
すると次第に新潟がペースを引き戻していく。この浦和の猛攻を凌いだ時間帯で、ジウトンとペドロの左サイドをボール奪取のスウィートにする形が出来はじめ、そこから真ん中を経由して素早い攻撃を繰り出す形が出てくる。ていうかこの時間帯のジウトンがなかなかいい。やっぱ守備上手くなってるよなw
で、ジウトンが連続でクロスを上げて一回は坪井の手に当たりつつwコーナーゲットしたり、貴章のヘッドって形を作ると、そっからコーナーキックを連続でむしり取る事に成功。そのコーナーを得点に結びつけることはできなかったものの、それで完全に流れをつかんだ新潟は、貴章がプレビューで書いたとおりの浦和の不安要素である左サイドに、何度も仕掛けてチャンスを作っていく。しかし貴章はあの右から中に切れ込んで左足でシュート!って形がパターンとして完成しつつあるけど、あれが枠に飛ぶようになるとかなり大きいと思うんだけどな。多分あの角度で枠に飛べば、GKがこぼすなり、CKゲットするなり、っていう副次的なチャンスも生まれると思うんだよ。だから是非とも練習してほしい。あれが完成したら、貴章が相手に与える脅威が何倍にも増幅すると思う。がんばれ貴章。

その前半の半ばで顕著だったのは新潟のプレス。序盤こそ浦和に素早くボールを動かされたものの、次第にそれを掴むことが出来るようになると、浦和の流れを停滞させる事に繋がっていく。んで、そうやって浦和の停滞した攻撃からカウンターに繋げて行くんだけど、その中で圧巻は27分のペドロ。
自陣左サイドのハーフウェーライン付近でボールを受けたペドロが山田暢を背にしてボールをキープした所で、一気に4人プレスに行く浦和の選手。しかしペドロはそれを足裏を使いながら反転してぶっちぎり、一気に加速。すかさずチェックに行った鈴木啓太を颯爽とかわし、後ろからファウル覚悟で止めに行った阿部勇樹をなぎ倒しながら、最後はたまらず前に出てスライディングでつぶしにきたトゥーリオの足先ぎりぎりで右サイドに走りこんできた貴章にパス。ただ、貴章のシュートは枠外、ってシーン。
すっげええええwww何これマラドーナじゃんwwあの一瞬だけマラドーナ降りてきてたねwwまあマラドーナはあれを毎試合何度もやるから神なんだけどw

その後はマルシオのロングシュートがポストを叩いたり、両ワイドをうまく使いながら攻撃を仕掛けたりと、どちらかと言うと新潟ペースだったのだけど、浦和もピンポイントではセットプレーだったりサイドアタックだったりと効果的な仕掛けを見せ、ほぼ互角で前半終了。何となくこういうがっぷり四つな試合を動かすのは、ミスだったり、ファウルトラブルだったりだよなあ・・・って感じで後半を迎える。まあ、この予感は的中しちゃうんだけど。


後半の序盤も、前半同様ポゼッションしながら攻撃を仕掛ける浦和と、そっからカウンターを仕掛ける新潟の構図。最初のチャンスは新潟。奪って素早く展開すると、オオシが左のジウトンにはたいて、そっからのクロスを再びオオシが胸トラップから左足でシュート!も左に切れていく。
その後も、うまく右サイドへの展開を作り新潟がちょっとずつペースを握っていく中で、先に浦和が動く。54分、原口に替えて高原。



で、このゲームの分水嶺になったのはその後のマルシオのファウルトラブルだった。55分に貴章が倒れたもののゲームが動いているのを見たマルシオがファウルに行ってイエロー。そしてその6分後、山田直のトラップが流れたのを見て、ちょっと難しいスライディングでのカットに行った所で、レイト気味に足に引っかかってカード。イエロー二枚で退場になってしまう。
これさ、すっっっっっっげえ良く分かるんだよ。マルシオがああいうギリギリの所で、相手のミスをかっさらってチャンスに繋げてきたシーンって今まで何度となくあったからね。それでカードを頂戴してしまうのが、悪い癖でもあり、逆に献身性の証左でもあり・・・だったんだけど、このシーンに関して言えば、この時間帯、その前の貴章のシーンでのちょっとピリピリしたムード、そして何より自分が既に一枚カードを受けているという事を考えれば、やってはいけないプレーだったと思う。
もちろん、頭に血が昇ってやったプレーではなく、いつも通り高い位置でボールを奪えればチャンスになる、っていう新潟のプレースタイルの中で、そのボール奪取→カウンターの中心選手であるという責任感とこの試合に対するモチベーションがちょっと暴走してしまったのが原因ってのは良く分かる。でも、だからこそ、自分が途中で欠けるって事の重大さを分かっていなくてはならなかった。皇帝は途中でチームを離れてはいけないんだ。でも、マルシオの気持ちもすっっっっげえ分かるんだよなあ・・・あああああ!もう複雑すぎる!とりあえずごめんなマルシオ。愛してるぜマルシオ
まあ、マルシオは一試合ゆっくりお休みして山形戦に照準を合わせてくれ。あと俺をパシリでも何でも使ってくれ。焼きそばパンとコーラ買ってくるのでも、山形の温泉の予約でも何でもやります。



そしてそっから30分間は試合後のインタビューでも淳さんが言うとおり、ポイント1をまず獲得する事を主眼とする戦いが始まる。
その退場劇の数分間は貴章が中に絞るような感じで守備組織を作っていたけど、淳さんが選んだカードは松下→マーカス、オオシ→ヨンチョル。いやーヨンチョルは分かるとして、まさかのマーカス!!びっくりした。で、これで中盤は勲とマーカスが2枚並び、その前にいつものヨンチョル投入後のシフト、って形に変わる。
で、個人的な注目やっぱり、新潟の選手として初出場のマーカスだったんだけど(それもすげーよなw)、主に右サイドで集中してポジションを取り、マークの受け渡しを周りと声を掛け合いながらしっかりと仕事を完遂。この状況で投入された選手の仕事としてはほぼ完璧だったと思う。数年前のサテ戦でふらふらと中盤を彷徨っていた姿は全くなかった。いいじゃんいいじゃん。


そして新潟はガッチリとリトリートして守るという形が続いたのだけど、攻撃に移り替わった時ではペドロが驚異的なテクニックでボールをあくまで前へと運ぼうとするし、それに呼応してヨンチョルと、そしてジウトンが必ず絡んでくる。ポイント1は確保するけど、同時に一発の可能性をあくまで捨てない。だってベンチも守るつもりならもう一枚カード切れたしね。それに、トップに張ってるのが前半に一瞬マラドーナになったペドロだ。極めて高い集中力に裏打ちされた守備の堅牢と、一発の可能性。その形のまま時計を進めていく。


選手も落ち着いていた。いつもの浦和戦のようにGKがボールを持つたびにブーイングをかます浦和サポを背に、北野はいつも通りのプレーを見せるし、その上相手から流れてきたボールをキャッチする前に、エジに対してキックフェイントを入れちゃったりしてるwてかやっぱ天然は強いよなあ。ぜってー勝てないもの。
それに度重なる浦和の攻撃に対しても。常にマークを確認しながらポジショニングを取り、必ず相手に数的優位を作らせない。ボールがペドロやヨンチョルといった前線に渡ってちょっと守備組織が崩れた時でも、うまく相手をディレイさせてしっかり守備組織をセットし直す時間を作るし、永田さんが鼻血を出して9人になった時間帯でも全員が戻ってスペースを埋めていく。度重なるセットプレーでも集中していた。



でも、あの最後の一発。俺の手元の時計でも94分を過ぎてたし、最後のプレーだと思った。だから俺もこの試合で一番の、気を失いそうなくらい絶叫を選手たちに届けてた。でも、数秒後に待ってたのはむこう側の歓喜の爆発だった。



あれ、後で冷静に録画見なおしてみたら(トゥーリオも試合後のインタビューで言ってたけど)、トゥーリオのマークだった千代に坪井がスクリーンかけてるんだよね。この試合のセットプレーの守備って、ちょっと遠めから中に入ってくる選手に対しては最初からマーカーが選手に付くんじゃなくて、ボールが放たれてボールがゴール前に到達するまでの間に、ボールの弾道とそのマーク担当の選手の動きを見ながら跳ね返す、って形だった。
それがこの試合ではうまく行っていた。でも、最後のシーンでは千代がボールの弾道とトゥーリオの動きを見て軽くバックステップ踏みながら跳躍しようとしたところで、坪井に後ろからぐいっとスクリーン掛けられてるんだよね。坪井は明らかに最初からそれを狙ってた。だって坪井の動きは明らかにボールに競り行く動きじゃなく、千代を動かせないようにするそれだったしね。
やられた。完全にやられた。これは新潟の選手の集中力の欠如とかでは到底ない。選手は最後まで集中してた。でも、それを凄く狡猾な「技術」の部分で上回られた。だって新潟の選手が、一人でもこの坪井のプレーを予測してただろうか?死ぬほど悔しいけれど、誰もいなかったと思う。これがこのゲームを分けた差だった。それ以外では互角だったと胸を張って言っていい。ただ、その一つの差が、生死を分けるって事を新潟は分かっていなかった。そういうことだと思う。




だからこそ、今できるのは上に食らいつくことだ。上位での戦いをしてなければ、こういう差は絶対に追いつけない。もっともっと強くなるためには、今日みたいなエキサイティングな状況の試合を経験しなくちゃいけない。少なくとも、この試合の経験は必ずやこのチームの血となり肉となっていくはずだしね。
だから次だ。連戦はまだまだ続くよ。それを愚直にハードワークして勝っていくだけだよ。下を向く?このチームは既に上しか見てねーよ。