【レビュー】09年第13節 清水戦@スワン

アルビレックス新潟 0-1 清水エスパルス
スタッツ


あーそうだよ。忘れてたよ。実に迂闊だった。このチーム、「引いた相手をどう崩すか」って課題に関して、まだ回答出せてないチームだったんだ。大分戦、京都戦、ナビスコ磐田戦で浮き彫りになった後、本当の意味でそういう戦い方、つまり新潟の良さを徹底的に消す戦いをしてくるチームに出会ってなかっただけなんだよね。うん、ホントに迂闊だった。それ、忘れちゃいけない大きな大きな課題だったんだよね。
さあ、どうするアルビレックス新潟ナビスコノックアウトラウンドに進んだら、絶対にこういう戦い方をするチームが出てくるぜ。残留を手にするためにポイントを死に物狂いで取りにくるチームは絶対にこういう戦い方をしてくるぜ。後半戦で優勝の境目、ACLの境目、賞金圏の境目にいるチームは絶対にこういう戦い方をしてくるぜ。そう、そういうこっちにとっても重要な局面でこそ、こういう戦い方を相手はしてくるぜ。間違いなく。
さあ、どうするアルビレックス新潟!!こういう試合が、13節という比較的早い時期に巡ってきて良かったと思えるか。この試合の反省を今後に生かせるか。それが重要だ。




試合の立ち上がり、新潟は明らかに右サイドを狙い打ちにして攻撃を仕掛ける。神戸戦の序盤のようにうっちーが高い位置をキープして、貴章とのユニットで対面の太田に突っかけ、局面の打開を図っていく。ただボールは回るし、貴章がガンガン仕掛けられるシーンも散見したんだけど、どうにもクロスに工夫がなく決定的な形を作るまでには至らず。
で、この右サイドの狙いって守備に不安を抱える太田と、岩下の欠場でこのチームにおいては本職は左サイドバックである児玉がCBに入ってる右サイドを狡猾に狙って行くっていう攻撃面でのコンセンサスもあったと思うんだけど、それは結果的には全く無駄になったと思う。その理由は単純明快。清水はこの試合に向けて、サイドバックの攻撃参加をほとんど放棄して、まずは新潟の武器であるサイド攻撃を仕掛けるためのスペースを消すことを主眼とする戦い方を取ってきたから。
元来、清水ってサイドバックの攻撃参加を非常に重視するチーム。長谷川健太がカントクに就任してから、前線・中盤の構成は色々と変わってきたけど、サイドアタックとクロスを上げる仕事の多くはサイドバックに任されてきた。今年で言えば、攻撃的にシフトする交替策として、アタッカーを変えたり中盤を弄るのに加えて、いやそれ以上に、サイドバックに辻尾というオプションを市川や高木純平に替えて投入するのを重要なカードとして使ってる事からもそれが伺えると思う。
で、太田という選手もそれを期待されて補強したんだろうし、大分戦で彼が起用されたのも攻撃面への期待が一番の理由だったと思う。ただ、その期待された攻撃面では目覚ましいけど、守備に移り替わった時の守備の拙さ、そして左の太田が上がった時のチーム全体の守備意識の尖らせ方、守備へのシフトの仕方が問題だった。だけど、この試合ではその太田という攻撃面での武器をほぼ放棄して、守備をまずは重視させるように送り出したんだよね。

もうこの時点で、すごくこの試合が難しくなるのははっきりと分かった。そもそも、これまで山本と枝村ってユニットが多かった中盤の底に、枝村の代わりに伊東テルを配置したって時点で、その兆候は見えていたんだけどね。相手のアタッキングサードを守らせたら天下一品の選手だし。
ということで開始数分で、この試合の新潟にとっての最大のタスクは「そのスペースを埋める守備をどう攻略するか」ってトコロであることががはっきりと判明する。


で、その攻略策の一つとして新潟がまずやったのはビシッとリトリートして守る相手の前でボールを動かしながら、積極的なサイドバックの攻め上がりを誘発してそこからクロスを入れていくという戦い方。実際、ボールは動いていたし、クロスを上げるシーンも何度も何度も作れた。ただ、そのクロスがジウトンもうっちーもあまりに工夫を欠き、プレビューでも書いたとおり「クロスを跳ね返す」事に関しては、長谷川健太体制になってからずっと積み上げてきた確固たる実績を持ってる清水の守備に対して脅威を与えられない。今年はそれが脆弱になってるとは言え、サイドバックがまずは引いてスペースを埋めるという守備の明確なタスクを持って戦っていれば、そのポジショニングの拙さを期待する事はできず。それに、クロスの合わせ方にも問題があったんだよね。センターバックサイドバックの間に入り込んで勝負をする形がもっと作れればよかったんだけど、貴章もペドロもそこまでは至ってなかった。

で、最近の得点の奪い方として、速攻ではなく中盤でボールを動かしつつ、両ウイングの個人技とオオシのポストをうまく混ぜながら組織を攻略してゴールゲット、ってのが出来るようになってきたけど、この試合では結局ほとんどそういった形が作れなかった。実際、ボールは回っていたしポゼッションも高かった。でも、ウイングは前述の通り仕事をする為のスペースを消されているので仕事が出来ないし、何より大きかったのはオオシがポストプレーでボールを捌くっていう形が全然見られなかったって所だと思う。
神戸戦、千葉戦、ナビスコ大宮戦の後半のように、オオシにバシバシボールが入ると、一気に新潟のリズムは快調になって攻撃の強度が増す。ただ、この試合では今シーズンで一番と言っていいくらいオオシが仕事できなかった。で、それってやっぱり伊東テルの存在が大きかったと思うんだよね。彼の「オオシへのパスコースを切る」「オオシが降りてきてボールを受けるためのスペースを消す」っていう仕事の質はまさに職人芸。腕のいいベテランの左官が、絶妙な厚さ・色で壁を塗りあげるように、この試合を左右する重要なスペースを丁寧に潰していく、っていうイメージ。やっぱこの人凄いわ。天才だよ。



ということで結局決定機らしい決定機さえ作れぬまま前半終了。



後半も基本的には前半と同様の展開。ポゼッションしてボールを動かして攻めようとはするものの、チャンスを作るために侵入しなくてはならないスペースには入りこめずに攻めあぐねる新潟。
そんな中、52分試合が動く。前半からピンポイントで危険な動きを見せていた岡崎が横パスをカットしてドリブルで攻め上がると、勲に倒されゴールちょい左寄りでFKゲット。でまあ、これを山本真希に見事なFK決められちゃうわけだけど、あれさ、キック自体はもちろん素晴らしいんだけど、壁の作り方には疑問なんだよなあ。
あの時点の清水のメンバーで直接FKを期待できるのは山本と兵働だけど、あの位置を考えれば十中八九山本が蹴るのはまあ分かる。で、このシーンでの壁の作り方って彼が巻いてニア付近を狙うのを想定してたんだと思うんだけど、これまで山本が見せてたFKってほとんどストレート系なんだよね。俺が今まで見た限りではほとんどそうだったと思う。だから俺あの壁の作り方って絶対右寄り過ぎるだろー、やべーなー、って思ってたら、案の定壁を全く無効化されてドカーンと空いてるコースにぶち込まれちゃった。ありゃ完全にスカウティングのミスだね。てか、それが情報として頭に入ってなくても、あの壁は右に寄り過ぎだったと思う。うーむ。


Tenyの須山アナが言うには、このゴールを観た長谷川健太のリアクションはそれはそれは大きかったらしい。そりゃそうだろう。いつもの攻撃をある程度犠牲にして、まずは相手の攻撃を潰すことに主眼を置いた戦い方を選択したチームが、この千載一遇のチャンスを見事にモノにしたんだから。これ以上監督として最高のシチュエーションはないよね。


そしてこれで、ただでさえこれまで非常に難しかった試合が一気にその難度を上げることになった。
まあ正直、もう書くことないんだよねww問題点も、さらに試合内容までが前半に書いた内容そのまんまなんだから。勲がコメントで出してる「90分、ずっと同じことの繰り返し。消化不良の試合だった」ってのはこの試合をこれ以上なく如実に表現してると思う。結局後半も、ボールは動くけどサイドまで展開して勝負!って時の工夫が足りずに単調な攻めに終始してしまった。
多分淳さんのジウトン→松尾、松下→ヨンチョルって交代もそのサイドでの工夫のなさを改善する意図があったと思うんだけど、それも最後まで奏功せず、で試合終了。



冒頭にも書いたとおり、こういう試合をどう反省して、咀嚼して、しっかりといいウンコが出せるか、ってのが何より重要だと思う。そしてここから3週間は、俺にとって今年最も重要だと思ってるナビスコ予選突破のための戦いが始まる。もう負けは許されない。勝つしかない。勝つための試合を死力を尽くしてやるべき期間なんだ。だからこそ、こういう負け試合の教訓を活かさなくてはならないよ。勝つぜ。絶対勝つぜ。もうそこしかねーんだからね。