【レビュー】09年ナビスコカップ予選第4節 マリノス戦@スワン

アルビレックス新潟 0-3 横浜Fマリノス
スタッツ


試合の立ち上がりから目立っていたのは両チームの中盤でのせめぎ合い。互いに4-3-3のシステムで戦う両チーム。これは4節のリーグ戦でもそうだったのだけど、マリノス相手に主導権を握るか明け渡すかは中盤でのせめぎ合いに勝利することが重要になる。あのときは3バックだったけど、前線に3枚を並べて、その後ろから入ってくる、もしくは前線から中盤に降りてくる選手の動きを封じなければ相手に主導権を握られることになるのは4-3-3でも同じ。
で、この試合の最初はほぼ互角の争い。マリノスは4-3-3と言っても、小椋と兵藤が中盤の底で並んで、その前にトップ下のように狩野が前線3枚に対してタクトを振るうような形(無理やり表記すれば4-2-1-3ってところかな)。それに対して新潟は、3トップの両端にはサイドバック、トップにはセンターバック、そして狩野には勲とセンターバックの一人がマークを受け渡しながら付くという基本的な約束事を設定し、まずはマリノスの前線4枚の自由を奪っていく。
そしてこの試合の序盤でキモだったのは、マルシオとヨンチョルのセンターハーフ二人が、マリノスの兵藤と小椋の中盤の底二人に対して次第にいい形でプレスをかける事に成功して、どんどん相手を押し込む形が出来たっていう点。
こうなると新潟らしい、高い位置でボールを奪って速攻に繋げていくという理想的な形が出始める。マルシオやヨンチョルが奪って一気に前を向くと、オオシが本当に上手い形で顔を出して、そのボールを的確に捌いてアトムと松下の両ウイングが前を向いて攻めるというこれぞ新潟!な形が頻発。
確か17分くらいだったと思うけど、高い位置で奪ったボールをオオシと松下の見事な連携で右サイドで展開し、それを追い越したマルシオに縦パス。その瞬間、その状況を見て前線に走り出したアトムとの連携で、一瞬2対1という超決定的な形を作り出す。これはマルシオの勝負パスが若干乱れてアトムへは繋がらなかったものの、その流れたボールを左サイドで見事フォローしたヨンチョルが折り返して、最後はジウトン!だけど右足だったので、ボールはバーの上を越えてしまう、という素晴らしい形を作り出すことに成功。


そんな感じで、完全に前半の中ごろは新潟がペースを握る。やっぱり中盤の勝負を最大の戦場であるということが、チーム全体として明確に分かっていたし、しっかり準備したんだと思う。素晴らしい内容だった。


あ、あと黒河のキックは素晴らしかった。というか、あれが普通っちゃ普通なんだけどねwwこれまで北野のキックに観慣れ過ぎててすごく新鮮だったwこの試合、3失点したけど黒河のプレーは全体的に北野の尻に火を付けるには十分の出来だったと思う。


しかし、その流れを一発で瓦解させる事故が26分に起きてしまう。


新潟のCKの崩れから、山瀬がカウンターの先陣を切ろうとPAちょっと外からドリブルを開始したのに対して、マルシオが体を当てて止めに行く。これがファウルとなり、その10分前にカードをもらっていたマルシオが早くも2枚目を頂戴して退場になってしまう。
ハッキリ言ってしまえばマルシオのこの行為は、あまりに軽率だったと思う。もちろん、2枚ともダーティなプレーではなく、ギリギリのボールの奪い合いでちょっと無理をすることで、これまでチームを救ってきた彼の献身性がそうさせてしまったのは間違いない。それは凄く分かる。
でも、あの状況で、あの時間帯で2枚目を貰うというリスクの管理を全く行った行為は猛省する必要があると思う。



これで状況が一変する。基本的には4-3-3から、マルシオが抜けた所を両ウイングが埋めつつ4-3-3(−1)は維持。しかしこれまで均衡を保ちつつもこちらが押しつつあった中盤から一枚欠けたことで、その均衡が崩れて一気にマリノスの中盤の圧力が新潟側へと逆流を始める。
これで一番影響受けたのは新潟のサイド。これまで中盤の真ん中で押し込めていたので、マリノスのサイドは中への意識をどうしても持たなく行けなくなって中に絞ってフォローに行ったり、また新潟のサイドを経由したカウンターを警戒してサイドバックがあんまり上がれなかったりしていたのだけど、新潟の中盤のキーマンであるマルシオが欠けたことで、これまで結果的に封じられていたマリノスのサイドでの展開が見られるようになる。
そうするとまず目立ったのは左の小宮山、右の田中裕介の両サイドバックの位置取りの高さ。本来攻撃的なこの両翼が、ようやく前にスペースを見つけることに成功して、ウイングとの連携でサイドで起点を作るプレーを連発。しかもそれに加えて、これまで中盤の下がり目でのプレーを余儀なくされていた狩野までもがサイドでボールを持って新潟の守備をつっ突いてくるという、非常に難儀な状態に陥ってしまう。
その結果、松下とアトムの両ウイングは殆どが守備の仕事に回ることになって、攻撃の糸口をつかめなくなり、そういう歪なサイドの守備では相手のサイドアタックを止めることができなくなり、右から2発連続で完全にぶっこ抜かれて大ピンチを迎えてしまう。


そして失点もサイドから。右サイドでジウトンと山瀬の1対1。ここで山瀬は足裏を使いながらジウトンが前に出てくるのを誘発して、ジウトンが距離を詰めてボールを奪い取りに行った所で、ジウトンの股を通して入れ替わり、完全にフリーでグラウンダーのクロス→兵藤が黒河の目の前でヒールで流しこんで失点。これは現時点のジウトンでは止めるの無理だろうね。山瀬は物凄く上手かったし、ジウトンの守備の癖を見事に見抜いていたと思う。かつ、これまでは永田さんや松下やヨンチョルがこういう状況では必ずフォローに行けていたんだけど、一枚欠けてると、やっぱここで穴が出来ちゃうんだよね。うーむ。



結局、このまま反撃の糸口がつかめぬまま前半終了。


後半、淳さんが切ったカードはアトム→マーカス。これ、アトムの質云々の交替じゃないだろうね。むしろ前半のアトムは最大の殊勲者の一人だったと言える。だからこの交代は前半最大の問題だった中盤の構成力を上げるために4-2-3から4-4-1に変更するための戦術的なものだろうね。
この形でまずは相手の圧力を抑え、そこから反撃していくという形で後半に臨む。


しかし後半開始早々、ジウトンが山瀬との接触プレーで倒れてる間にクロスが入り、それを渡邊千真にニアで触られてしまい失点。痛すぎる2点目をあっという間に取られてしまう。うぬぬぬ。

ただ、その後に試合がやっと落ち着いたのも事実。やっぱりマーカスを中盤の真ん中に入れて勲とともにボランチ2枚が中盤で相手にプレスを掛け、左のヨンチョル、右の松下のサイドハーフが明確なエリアでの仕事を与えられたのは大きかったと思う。あとジウトン→ヒロシのシフトも。そういえばヒロシが指を3本立てて入ってきたけど、途中からの松尾の位置取りを考えると、松尾を上げまくる3バック気味のアシンメトリーな4バックって形っぽかったんだけど、それも結構良かったと思う。だからこそ、返す返す後半開始早々の失点が痛すぎた。

で、この時間は単発ながらオオシに上手くボールが入ったタイミングで両サイドハーフと、この試合ずっと積極的だった松尾が一気に前を向くという形が作れるようになり、67分には松尾からのボールをオオシが完璧なワンタッチのポストプレーで松下に渡し、松下が最初のトラップでゴールを向いた、までは良かったけど、次のシュートを打つためのトラップが若干流れてCBを交わすまでが精いっぱいでGKにキャッチされる、っていう形を作れた。


ただ、やっぱり殆どが単発。どうしても流れを引き寄せることが出来ない。
で、74分に勲に替えてフミヤ。フミヤが右寄りの前目で松尾が上がりまくりの3-5-1っぽい4-4-1になる。しかし、この形が直接原因だとは思わないんだけど、そのてこ入れした右サイドを小宮山に突破されて、逆サイドの田中裕介に押し込まれて致命的な3失点目。


その後もフミヤの見事な切り返しからのクロスからのCKゲットだったり、CKから千代のヘッド、ってシーンがあったけど決定的な形も作れずに試合終了。



これでナビスコ予選突破の道は完全に断たれてしまった。



このチームが今できるのは、まずは今後リーグ戦で勝ちを積み重ねるためにいい準備を続けること。そして選手含めてチームに関わる全ての人が考えなくてはならないのはこの負けの意味。さあ、どうする。本当の勝者になるために、何が必要なのか考えなくちゃ未来はないよ。