【レビュー】10年第3節 ガンバ戦@万博

ガンバ大阪 0-0 アルビレックス新潟
スタッツ
黒崎久志監督 試合後コメント


この試合に入る時点で気になっていたのが二つ。まずは何と言っても急遽出番が回ってきた東口が、どんな形で試合に入れるかって所。前の試合では全くボールに触るチャンスがないまま失点を食らうという、最悪のデビューだっただけにそこに注目してたんだけど、試合の立ち上がり最初のプレーは東口まで一気にボールを下げて彼にキックを蹴らせるというもの。これと前半の永田さんのプレーでも分かるけど、チームとして彼にまずプレーに関与させて試合に馴染ませようという意図があったんだろうね。実際、東口は最初にプレー出来たことで試合にすんなり入れたとコメントでも出してるし。それと前半の2つのキャッチングで、彼は本格的にデビュー出来たと思う。
それともう一つはガンバの選手起用。この試合ではFW登録に佐々木の名が。佐々木の起用という事は、08年のACLを獲った時のように、彼を右にして遠藤をトップ下に上げる4-2-3-1の可能性もあるし、単純にそのまま入って4-4-2という可能性もある。
結論から言うと、この試合では4-2-3-1でスタートすることになったのだけど、これはクロさんも試合前に入念にミーティングを行っていたとのこと。その成果もあって、最序盤こそ遠藤や二川といった2列目の選手がPA内でボールを受けるような危険なシーンを作られたものの、あっという間にアジャストして守る事が出来た。特に相手のトップと2列目3人の関係をすぐに読み取って、プレスのポイントを整備したセンターバック二人とボランチ二人は素晴らしかった。これは本当にお見事だと思う。クロさんが念を押した準備の心構えと、選手たちの見事なアジャストこそ、この試合で勝ち点を獲れた最大の要因だろうね。



その最序盤の若干の混乱の時間を過ぎると、次第に新潟がペースをつかむ。ボールを奪うと右サイドのヨンチョルのドリブル突破をベースに、うっちーとマルシオが絡んでサイドで起点を作るという一連の流れが生まれてくる。やっぱり今の新潟の攻撃のブースターはヨンチョルのドリブルだろう。彼がバイタルを突っつくドリブルで中に入って、その結果できたスペースを右サイドの選手たちが使うという連動性は、他チームが研究してくるまでは間違いなく攻撃の核になるはず。だからこそ、早めに勝ちがほしいんだけど。
そして前半の唯一の、そして試合の中でも屈指の決定的なシュートシーンを演出したのもヨンチョル。20分、うっちーの縦パスを受けると、ラインギリギリで安田をぶち抜いてドリブル。そこからPA内で完全にフリーになったマルシオに勝負パス→マルシオシュート!!しかしこれはバーを叩く。これぞマルシオがトップ下に入ったからこそ生まれた理想的なシーンだよね。結局これしかなかったけど、こういうシーンがもっと作れるようになれば、もっともっと強いチームいなれるはずだ。
また、12分には右からのサイドチェンジを受けたゴートクが、巧みなトラップで佐々木を外し、真中のマルシオとのワンツーでバイタルへと侵入し、完全にフリーになったヨンチョルからクロス・・・というシーンを作る。また23分には、ゴートクが高い位置を取って起点を作り、これまたマルシオとのワンツーで一気に縦にスピードアップしてPA内に侵入してクロス!ってシーンを作る・・・など、これまでにないくらいゴートクがバイタルエリアでの仕事を見せる。結局後半は全く見られなくなってしまうのだけど、これが何度も出せるようになったら右に偏っている新潟のサッカーを変える原動力になるかもしれない。超頑張れゴートク。



それとこの試合の新潟で顕著だったのは、基本は奪ってからの素早いカウンターを狙う形だったのだけど、それが無理と見るやすぐにポゼッションに切り替えるという判断が、これまで以上にスムーズに出来ていた点。ここ2試合でもそうだけど、ともすればただ縦に行くだけしかなかった従来の新潟のサッカーと違い、ビルドアップに自信を持っているというのが、間違いなく今年最も変わった点だろう。なんせ万博でガンバ相手にポゼッションで勝ったのだ。
もちろん、ポゼッション率でサッカーの優劣が判断されるわけではないので、あくまで一つの目安なんだけど、ここまでの3戦は全て相手よりポゼッションを上回っている。実は4節で首位に立った去年は、その4試合全てでポゼッションで負けてたんだよね。それとはあまりに対照的。結果も対照的ww
そこからも分かるように、ポゼッションを取るって事が直接結果に結び付くわけではないんだけど、ポゼッションを取れるチームのみが出来て、ポゼッションを取れないチームが出来ない事が色々とあるのも事実。例えば基本はチーム全体の壮絶なプレスとカウンターが最大の武器である新潟で言えば、ポゼッションすることで体力をある程度温存・振り分けしながら、相手が落ちてくるのを見て、一気に体力を開放してプレスの餌食にする・・・なーんてカッコイイ事も出来ちゃうだろう。
だけど正直言って、現時点ではまだ「ただポゼッションも出来るチーム」に過ぎないので、そこを攻撃力・圧力といった「勝ちきるパワー」にまで持って行けていない。この試合で言えば、ボールを持てているし、ヨンチョルを中心とした右サイドのユニットというオプションもあった。だけど、それだけ。個の力で決定的なシーンは作れたから印象は悪くないように見えるけど、あくまでこの試合はチャンス自体が殆ど作れなかった凡戦だ。勝てるチームとは、イコール決定的な形を多く作れるチームなんだから。

だけど、間違いなく可能性はある。どんな方向にも強くなれるベースを作る作業は、間違いなく順調に行っているのだ。だからそろそろその特徴を活かした、勝利へのギアチェンジを見せるべきだろうね。クロさんはそろそろ勝負に行っていいはず。




・・・・あれ?言いたい事全部言い終わったwwwまあ、試合荷の流れに話を戻すと、前半は37分に故障を抱えている佐々木を早々に代えてチョ・ジェジンを投入するも、単発の攻撃に終始するガンバと、その攻撃を一つずつ丁寧に潰す新潟。そしてそこから攻撃に転じるも決定打を出せない新潟、の構図で終了。



後半はどちらもペースが握れないまま時間は進むのだけど、54分、ルーカスが故障してペドロがIN。お久しぶり。その直後のマルシオの直接FKと連続のCKあたりから、貴章がトップの位置、マルシオとヨンチョルがサイドに配置、という微調整を行う。その変化と、ただでさえミスの多かったガンバからルーカスが抜けて、その代わりのペドロがブレーキになるという惨状も手伝って、このあと数分は新潟ペース。61人は右に流れた貴章が起点となって、PAにびっくりするほど簡単に侵入できたヨンチョルがシュートを放つも、右のポストを叩く。これがやっと2本目のシュート。61分でやっと2本目。
63分にはまたしてもヨンチョルがドリブルで持ち上がると、スッカスカのバイタルに入り込んでシュート性のクロスにオオシが飛び込むもわずかに合わず。その次のプレーではヨンチョルが持ち上がって出来た右のスペースにうっちーが走り込んで、安田を見事な切り返しで交わしてクロスを送るも、誰にも合わず・・・と新潟ペースが続き、ポゼッションも新潟が取っていく。

ガンバも返す刀で72分、安田が素晴らしいミドルを放つも、これを東口が見事なセーブ。この試合で唯一といっていいほどの決定的なセーブを見せるチャンスだったけど、あれをしっかり押さえたことで、彼には大きな勇気となっただろうね。


76分、新潟ベンチが動く。これまで新潟のチャンスのほとんどを作りだしてきたヨンチョルを何故か変えて、ミシェウを投入。クロさんいわく、「ボックス内で新しいアクセントが欲しかった」との事。なるほど。で、ミシェウがそのままサイドに入ってちょっと流れが出てきた4-4-2継続、かと思いきやミシェウが左、貴章が右の4-2-3-1にまた変更。正直言って、この交代策は殆ど効果を発揮しなかった。結局この後は、この日全くと言っていいほど仕事ができなかった貴章が入った右サイドからはチャンスが殆ど作れず。
78分、「ミスキャスト」だったって事で、途中で入ったペドロに代えて平井。ぶち切れるペドロ。これで華麗にヤフートップを飾る。

80分には平井の抜けだしから起点を作り、中盤を経由して最後は加地のミドル炸裂!!も、これはバーを叩く。新潟にとっては最大のピンチ。てか、危ないのこれしかなかったんだよね。this is 凡戦。ガンバも中々の惨状。

85分には三門に代えて慶行。クロさんとしては恐らく、勝ち点1を確保を視野に入れての交代だったのだろう。

その後は互いにミスが目立って上手く攻撃を構築できないまま試合は進む。そしてロスタイムも3分を過ぎて、最後の最後、新潟がボールロストした瞬間に試合が終わるであろう、って所でこの試合の数少ない、そして最大の見せ場がやってくる。オオシの落としを受けたマルシオPAのちょっと外右側からミドル。そのボールはグイーンとスライスしてゴールを捕らえるも、ボールはポストの内側、ただし手前側を叩いてゴールには吸い込まれず。そしてタイムアップの笛。これが入ってたら去年のアウェイ大宮戦、大宮相手だから当然のように糞ゲームだったんだけど、最後の最後でマルシオの右足のマジックが発動したあの試合の再現だったんだけどね。実に惜しかった。




もうこのチームには「いい試合だった」とか「惜しかった」とか「楽しかった」なんてもういらない。もうそれは手に入れてるんだから。だから今はそのポジティヴな感情を、明確な「強さ」に昇華するための勝利が絶対不可欠だ。そしたらもう湘南からそれをガッツリ奪ってやるだけの事。絶対に勝つ。ここで勝つか否かは、本当に大きな分岐点になるはずだ。欲しいのは勝つことだけ。負けちゃいけない、じゃない。勝たなくちゃいけない。やるぜ。