【レビュー】10年第13節 セレッソ戦@スワン

アルビレックス新潟 1-1 セレッソ大阪
スタッツ
黒崎久志監督 試合後コメント


5連勝ならず。まあ、それは次からやり直せばいいさ。


試合開始からセレッソがペースを握る。これ、選手・監督みんな「試合勘」という言葉を使っていたけど、それは言い替えると「相手を過剰にリスペクトしすぎた」ってのもあると思う。
この試合の立ち上がりに顕著だったのは、ミカの位置が極端に低いって事。ずっと勲の隣でスペースをただ埋める動きが目立っていたけど、明らかにチームとして、相手の1トップ+3枚に対して、スペースを埋める事をまず第一優先にする、って戦い方しかない状態で入ってしまったんだと思う。つまり完全なる受動のサッカー。ミカは「序盤は誰が誰にマークに行くのか分からなかった」と言ってたけど、その準備のまずさも、相手の攻撃を受けて試合を進めざるを得なくなった理由の一つだと思う。
もちろん、それはセレッソの攻撃も巧みだったってのもあると思うんだけどね。特にこの試合のアドリアーノは実に切れていて、彼がシーズンを追うごとに開眼していった「左右に流れてスペースを作る」って動きが嫌って見られた試合だった。サイドバックの左右にふらふらとポジションを変えて動き、サイドバックの視野から消えながら、タイミングを見てひゅっとサイドバックの裏からクロスに飛び込んだり、センターバックサイドバックの間に顔を出してワンツーを狙いに行ったり・・・と超危険。セレッソさん、お隣の何でも欲しがるチームの動きに気をつけた方がいいと思いますよ。お隣さんが一番好きなタイプでしょ、あれ。
それとセレッソサイドバック、特に左サイドバックの丸橋のポイントも地味に大きかったと思う。勲も言ってたけど、あそこで一つ余計に起点が作られたことで全体として引いて守る事になってしまったと思う。

で、その結果、速攻を繰り出すための守備が出来ない。プレビューで書いたとおり、やっぱりセレッソはこのいい時間帯でもラインはあんまり高くなくて、あ、あそこに速攻でボールを運べればゴール獲れるんじゃね?ってスペースが結構あったんだけど、そこに効果的にボールを出せない。10分過ぎにミシェウが上手い事抜けていい形になりかけたシーンがあったけど、あれはまさに前線とDFの乖離のマズさを突いたシーン。最初からこの意識があれば、意外と早々にゴールを奪ってペースを握る事も出来たんじゃねえかなー、とはちょっと思うけど、まあ仕方ない。

しかし20分を過ぎたあたりで、ようやく新潟も相手のやり方に慣れ、勲やミカが高い位置(サイドハーフの横あたり)でボールを狙えるようになり、前線4枚の所でもプレスがかかる、そうするとサイドバックの位置も上がってくる・・・っていう4連勝中の好循環がちょっとずつ戻り始める。実際、この後の決定的なチャンスって高い位置でボールを引っ掛けてのカウンターと、サイドバックを絡めてサイドに起点を作るポゼッションからの攻撃、という4連勝中の攻撃っぽかったしね。
その中でも特に決定的だったのは31分のシーン。相手のボールを奪って、大伍が千葉ちゃんへとボールを戻す。そしてルックアップすると、乾と清武の間を縫ってするするとドリブル開始。で、空いたスペースに侵入すると、ボランチとDFの間で余ってるヨンチョルへと漢パス。そこからミシェウに預けてヨンチョルはDFの裏にランニング開始すると、ミシェウから必殺の勝負パスが通って、GKと1対1になるものの、キム・ジンヒョンがグッドセーブ、ってシーン。あれ、千葉ちゃんは完全に相手の脆弱な部分である、前述の「前線と後ろが乖離してスペースが出来る」っての分かってたよね。だから1トップの後ろ3枚の網を単独で抜け出せれば、一気に数的優位が作れるって分かった上でのドリブルだろう。あのドリブル開始した瞬間、思わず「おおおそうそうそうそう!!それそれ!!!」ってわめいちゃったもんな。素晴らしいよ。今年はホント、ヒガシと千葉ちゃんの攻撃的センスのおかげで新しい世界を見れてると思う。


と、いい感じの流れをつかんで後半へ・・・と行きたかったんだけど事故が起きる。前半終了間際44分のCK、千葉ちゃんがアドリアーノのマークを外してしまい、かつストーンの貴章の手前のニアのスペースに入られたことでフリーでヘッドを許して失点。流れを考えれば完全にいらない失点だった。痛すぎた。


後半。前半の流れのまま新潟が完全にペースを握って進む。49分、マルシオが高い位置で家長のボールをカットすると、ドリブルからヨンチョルへと繋ぐ。ヨンチョルはミシェウに預けるとスペースに走り、そこにまたしてもミシェウからの必殺勝負パスが通って決定的な形を作るも、シュートは枠外。8→9のユニットが完成?
53分、ヨンチョルが左でドリブルで突っかけたこぼれ球を勲が拾い、そこからヨンチョル→もう一度勲→ミカ→大伍と手早く見事過ぎるサイドチェンジを繰り出すと、大伍はすかさずグラウンダーのスルーパス的なアーリークロスを選択。そのボールはニアでつぶれた貴章を抜けて、ラインの裏に抜け出したヨンチョルの足元に合って超決定的なシーンになるものの、またしてもキム・ジンヒョン
直後、相手の決定的なシーンをカットしてカウンターをかますと、足が止まってきた上に前述の悪癖が治ってないので、ガッツリ生まれたスペースにボールを持ちこんだマルシオがファウルゲット。この本日3本目のFKは壁を擦って微妙にコースが変わり、キム・ジンヒョンの手元をわずかにすりぬけてゴール!同点。


で、この試合の大伍のサイドの起点としての動きは出色で、前半途中から見せていた、高い位置で彼らしい攻撃センスを発揮するシーンが頻発。そこでポイントを作れるので、この試合では本当に効果的なサイドチェンジを繰り出す事が出来ていた。この試合、結局それがゴールと言う形で実らなかったけど、これは何より次の仙台戦で大いに効果を発揮すると思う。これだよこれ。


んで、後半は圧倒的にポゼッションを奪いつつ、63分には相手の攻撃になった所でマルシオがすかさずプレッシャーを仕掛け、高い位置で奪ってミシェウ→大伍でいい形を作る、っていうカウンターも見せる。いいリズム。しかしマルシオがいい時って、こういう高い位置でのボール奪取ってのが多くなるよね。実はここが一番の調子のバロメータな気がす売る。

この流れを見てセレッソは64分、乾→小松、清武→黒木にチェンジ。小松とアドリアーノの2トップに。
その交代直後に小松がアグレッシヴに仕掛けたり、ってシーンはあったもののそれでも流れは変わらず。そして新潟は67分、ヒロシに変えてウッチー。ポゼッションを取れてるからこその交代だよね。新潟で最も起点になれるサイドバックだ。
その後も新潟がペースを握って試合を進めるものの、ビシッと組織を作って守るセレッソの守備はなかなか破れない。77分には勲がミドルを放って相手の守備を引き出そうとするものの、なかなか奏功せず。81分にはマルシオのFKの崩れから千葉ちゃんのクロス→貴章がヘッドで瀬ってその浮き球をバイシクル!ってシーンもあって盛り上がりこそするもののw、ゴールはなかなか生まれず。
対するセレッソもやっぱり絶好調なアドリアーノがここぞって時には完璧な動きだし、キープで効果的な逆襲を引き出すので、気が抜けない状態が続く。


それを見て84分、新潟が動く。ミカ→オオシで右から貴章、オオシ、ヨンチョルの3トップで、中盤は勲アンカーの前にマルシオミシェウ。確か3トップは連勝中の練習でカッチリやったと思うんだけど、それでもかなりのギャンブルで、ほぼスクランブル気味に相手に圧力をかけていこうとする。
ただ、そのスクランブルでの圧力って言うのが、結局最後まで中途半端な形で終わってしまい、相手の守備をドン引きさせるとか、ギャップを作らせるとか、そういう期待通りの効果はなかなか出せず。逆に間延びした中盤でセレッソが前を向いてカウンターに行く、って言う怖いシーンが出てきた事もあり、89分、ミシェウに変えてゴートクで中盤を締めてゴールを目指すものの、ゴールは割れず。終了間際にはこの試合のMOMと言っていいアドリアーノが、PA内で反転してシュートも、ヒガシががっちり押さえる、という危険なシーンを作り出して試合終了。


ま、仕方ないね。明確によくなかった前半の入り方と言う課題があって、選手・監督もそれを分かってるし、その後は新潟がここまで駆け上がった時の戦い方が時間によってはキッチリ出来てた。仙台に勝とうぜ。まずはそっから再スタートだ。