【レビュー】10年第15節 鹿島戦@鹿スタ

鹿島アントラーズ 2-2 アルビレックス新潟
スタッツ
黒崎久志監督 試合後コメント

これを書く前に、東口に全力で早期回復祈願。待ってるぜ!!



さて、まずこの試合で反省しなくちゃならない事がある。俺は前からこのチームの可能性を低く見積もることは大罪だと思っているので、いつだってちょっと大きめに楽観的観測をしてきたけど、この試合に関してはAWとかでも「向こうにポゼッション取られることは予想できるので、その上でガッチリとポジションを取って守って、カウンターに行く」って展望してたんだよな。
ところがどうだ!!相当に気合が入っていたらしいクロさんの気概をみっちりと全身にねじ込まれた選手たちが、今年初めて選択した4-3-3のシステムの中で、明確に自分たちからアクションを起こす、アグレッシヴで能動的なサッカーを鹿島相手に披露したのだ。相手の特長を消す、って意図があるのはいつもの鹿島戦だけどそれは「色々妥協して消しに行く」じゃなくて「こっちの長所によって消す」というものだ。痺れたぜ。
でもさ、こうやって感動してちゃだめだと思うんだよ。この程度で感動してちゃだめなんだ。もうこのチームはそんなことくらいで感動している段階をとっくに過ぎてしまっている。そうだよそうだよ、試合の途中で思い出したんだけどさ、これと同じ事を、去年のホーム鹿島戦でやってるじゃん。後で詳細は書くけど、あの試合の前半45分のチームは、恐らくアルビレックス新潟史上最強のチームだった。鹿島相手に、こっちから仕掛けた圧力によって完全沈黙させて2点をあっという間に奪って、前半で試合を終わらせてしまったんだ。あの再現を、本気で狙っていたんだ。もう少し言うと、あの時の戦いをベースにして、黒崎体制のアルビレックスになって新たに手に入れた武器を駆使して挑んだんだ。ちくしょー、勝ちたかったな。そうだよ、僕らが満足するのはこういう試合をして、勝った時だ。もっと言えば、こういう試合を試合を続けて、鹿島を超えてトップでシーズンを終えた時なんだ。満足するのは、まだまだ先だね。



この試合で最大のポイントは何と言っても新潟が選択した4-3-3システム。これまで4-2-3-1か4-4-2のみを使用してきた黒崎アルビにとっては、初めての実戦投入。しかも鹿島相手に。しかもしかも誰もが認める4-3-3の核である勲抜きで。
で、この英断は不安と共に大きな期待もあったんだよね。それが、前述した去年のホーム鹿島戦の前半の戦いという記憶があったから。鹿島と戦うって事は、相手のサイドバックの攻撃参加をどう沈黙させるか、っていう戦いと同義。そこを、去年の4-3-3はまず両ウイングが常にサイドバックの前で、基本は上がるスペースを埋め、同時に前への突破をチラつかせながらけん制する、っていう形で完全に殺したんだよね。で、そうなると同時にサイドハーフへの縦のパスが消されてしまうので、センターへと逃げる事になる。もしくはトップに一気に当ててくる。だけど、あの試合ではセンターバックと勲が完璧にその前へのボールを事前に準備して跳ね返し、勲とセンターハーフ2枚(マルシオ、松下)でセカンドボールを取ってペースを握らせない。そうなると、鹿島はセンターバックボランチの位置でボールをキープして、どこにパスを出すのか右往左往せざるを得なくなる。で、そこに対してマルシオ、松下、オオシ、それと同時に貴章とペドロが真ん中に絞って、猛烈なプレスを仕掛ける。つまり、ウイングが相手のサイドバックに常にプレッシャーを仕掛ける事をまず徹底する事をスタート地点として、そこから想定される鹿島の攻撃・ビルドアップに対して、全て先回りしてプレッシャーの網をガッチリと仕掛ける、ってのを45分間続けたのだ。その結果、鹿島は完全に機能不全に陥り、早々に2点を献上して負け試合を演出してしまった。本当に完璧。死ぬほどゾクゾクした45分だった。
そう、つまり早い話、「ウイングがどこまでサイドバックに効果的なプレッシャーを与えるか」ってのが4-3-3の期待の最たるものだったんだよね。


で、この試合。期待通り、両ウイングがサイドバックの前でポジションを取ってサイドバックとのサイドの主導権争いを繰り広げる。右は貴章がジウトンが上がってくるタイミングでは必ずプレスに走ってパスコースとドリブルのコースを限定し、同時にフェリペ・ガブリエル中田浩二へのチェックも怠らない。で、その上左サイドに流れてきて大伍の付近でポジションを取り直しまくってボールを受けようとするマルキーニョスのケアまでやっちゃう。なのに、ジウトンがボールを持つシーンでは必ず彼の前まで全力疾走でプレスに走るんだよね。さすがナチュラルボーン右ウイング。右ウイングになるとバケモノになる貴章の真髄を見た気分だった。
で、熱かったのが左サイド。試合開始早々に新潟がペースを握った後、新井場が高い位置を取って、野沢とのコンビでヨンチョルとゴートクを押し込み始めた20分くらいまでは鹿島ペースに押し戻されて、その結果楽にサイドチェンジを通されたり、サイドに引っ張られるので真ん中でのプレスが甘くなる。
だけど、ヨンチョルが高い位置でボールを受けて新井場に突っかけるシーンが増えてきてからは、一気に新潟ペースへと移行していく。この試合のヨンチョルはまさに新潟にとっての進軍ラッパ。彼がドリブルを仕掛けるたびに、チームが前を向いて走り出だす。今年はヨンチョルが新潟の攻撃の切り替えスイッチだけど、この試合ほど分かりやすく新潟のペースを作りだした試合はなかっただろうね。
特に、この試合でヨンチョルが何度か見せた、ボールを受けるワンタッチ目で一気に縦に抜けていくトライは、新井場を高い位置で守るための勇気にためらいを生ませるのに大きな影響を与えたのは間違いないと思う。やっぱすげーよ、ヨンチョル。
んで、こうやって鹿島のサイドの展開が死にだすと、必然的にセンターへの展開が増えてくるのだけど、そこで生きてきたのはミシェウとマルシオのテクニカルな2枚のセンターハーフ。クロさんもコメントで語ってるけど、サイドから逃げてくるパスを受けるボランチに、この2枚がしっかりプレスに行き、そこから奪ってからは攻撃的にどんどん仕掛ける事で相手を後ろに追いやる事に成功。本当にこの二人は素晴らしかった。この試合の主役と言ってもいいだろう。
で、この辺から前2枚と後ろの慶行の関係も非常にスムーズになって、鹿島が攻撃に切り替えるタイミングで、慶行が素晴らしいフォローを見せてすぐさまボールを奪い返す、という形が生まれてきた。それもサイドを殺し、ボランチを殺すための新潟の攻撃的なプレスが出来たからこそ。そして無視してならないのは、この時間帯でオオシが相手のセンターバックにプレスを仕掛けてパスコースを限定していった事だろうね。それもあって、新潟ペースを作り上げていった。
ああ、そうそう。慶行はこういう仕事が一番合ってるんだろうね。要は「前に行かなくてもいいよ」っていう状態でガッチリとエリアを決めて、その技術とセンスを発揮するっていう。ここでアンカーを務めあげたのは、今後に非常に大きな影響がありそうだね。確実にオプションが増えたよ。
で、ここまでは見事に去年のホーム鹿島戦の4-3-3メソッドの通り。あの時ほど圧倒的ではなかったけど、間違いなくあの日の遺伝子はここで生きていたと思う。
そしてこの試合ではその去年のベースに加え、その時には見られなかったショートパスを多用するビルドアップという今年のチームが作り上げてきたその要素が付加されていた。山形戦や清水戦のような、あのサイドバックサイドアタッカーとそしてミシェウが絡んでくる、常に相手に攻撃的にナイフをチラつかせる、例のあれだ。あれを去年のベースの上に、見事乗っけて見せた。
その結果、サイドに出来始めたスペースを大伍、貴章、ヨンチョル、ゴートクがぐいぐい突いて決定的な形を作り始める。特に32分の右サイドで、オオシ、マルシオ、大伍、貴章のコンビで起点を作った後、貴章が真ん中にドリブルを開始した瞬間に、新井場とフェリペがセンターにいるくらいまで右サイドにガッツリ引っ張られてのを見て、一気に左へサイドチェンジ→ゴートクがワンタッチで完璧な縦パス→ヨンチョル完全にフリーで抜け出してクロス→貴章ヘッドも枠外、ってシーンはまさにこの時間帯の好リズムが生み出した素晴らしい攻撃。
それとその次の決定的なシーンである、37分のマルシオが抜けだしてほぼGKとの1対1をソガハタに止められるっていうあのシーン。あれはセンターサークルの所でフェリペ・ガブリエルのドリブルを、「ゴートクと大伍」がつまり、「両サイドバック」が「センターサークルの位置でサンドする」プレスを仕掛けてボールを奪ってからのショートカウンターなんだよね。異常すぎるだろwwありえないwwwそれほどまでに鹿島はサイドを押し込まれていたし、それほどまでに新潟は両サイドの位置が勇気を持ってアグレッシヴに高い位置を取れていたって事だよね。素晴らしい。
で、そのプレーで得たCKは大伍が得意とするニアでのヘッドをドンピシャで当てるも惜しくも枠外、ってシーンを作るなどんどん得点の匂いがしてくる。
で、その匂いが結実したのは前半のロスタイム。逆襲に出かけた中田浩二のパスをさっくり貴章がカットすると、そのままドリブル開始。そして「左サイドで起用されて、左サイドを突破して、ゴールラインぎりぎりの所でクロスを挙げる時に左足じゃなくて右足のアウトサイドでクロスを蹴ります」な、貴章らしい変なタイミングでの右足アウトサイドのミドルシュートを放つと、伊野波の胸に当たってコースが変わりゴールへと吸い込まれる。新潟先制!!貴章とはこういう男なのだ。貴章にやっと生まれた今シーズン初ゴール。



そして後半。
序盤は前半のまま新潟ペースで始まる。右サイドで貴章対ジウトンの構図、という新潟サポ垂涎のシーンが何度かあったりして、またしてもサイドを起点に新潟がペースを握り、また鹿島の組織が崩れたままカウンターを発動できるシーンが結構あったので、多分この試合に勝つならばこの時間帯に取ってしまうしかなかったんだと思う。
しかし鹿島も51分にジウトンの鬼ミドルを足がかりに応戦。で、クロさんはこの時間帯で早々に三門を準備。恐らく、最初からプランとしてこのシステムの変更はあったんだろうね。このシステムと連戦を考え、どこかでセンターハーフとウイングの体力を考慮したんだろう。
そんな中、王者鹿島がついに牙を剥く。54分、中田浩二のサイドチェンジをラインぎりぎりで新井場が落とすと、それを受けた野沢がヒールで再び新井場に返す。その一連の見事な流れに必死に食らいつくゴートクを新井場が見事なタッチで抜き去ってクロス。それに真ん中でフリーになったマルキーニョスがヘッドで押し込んで同点。黒河の飛び出しの拙さが本当に惜しかった。前半は安定していただけに。
58分、新潟はいったんストップしていた三門の投入を決断。オオシ→ミカ。これでいつも通りのミシェウと貴章の2トップの4-4-2へ。で、この辺から新潟は後半は影を潜めたサイドバックの攻撃参加が目立つようになり、同点のショックを押し返して行く。鹿島も返す刀でマルキを中心とするカウンターと鋭いサイドチェンジを仕掛けていく。
ただ、この時間帯は新潟のペースだったと言っていいと思う。しっかりサイドに振り分けた攻撃的なビルドアップと、縦への早めの展開を見せて鹿島を追い込む。67分、ジウトンの横パスをカットしたヨンチョルが強引に仕掛けてシュートも枠外。69分には右サイドから切り込んだ貴章がシュートを放つと、今度は岩政に当たってコースが変わってゴールに吸い込まれかける。70分には千葉ちゃんのDFラインから一気に局面を打開する素晴らしいグラウンダーの縦パスが入り(今年は本当にこれがすげえ。代表だろもう。)、それを貴章が上手くスルーすると、最前線のミシェウにすっぽり収まり、そこから逆サイドでフリーになったヨンチョルへ。そしてヨンチョルが狙い澄まして逆サイドネットを狙ったシュートを放つも、ポストの内側を叩いたのにソガハタの胸元へすっぽり。実に惜しいシーン。
その新潟ペースを見て鹿島が動く。72分、フェリペ・ガブリエルに代わって本山。するとその効果はいきなり出る。74分、本山がDFラインをギリギリで抜け出した大迫へ完璧な勝負パス。黒河との1対1をドリブルで制して無人のゴールへ流し込んで、新潟ペースで進んで殆ど前触れがない中で逆転に成功する。これが鹿島なんだな。つえーよ!!!!


これを見て新潟も動く。76分、ヨンチョルに代えてファグネル。ヨンチョルは素晴らしかったけど、クロさんはセンターでの勝負にガシガシ勝てて起点となっていたミシェウを残す事を選択。
そして80分。左サイドに移ったミシェウのパスを真ん中で貴章が岩政を背負いながら、マルシオに落とす。マルシオはそれを浮き球で前に送ると、そのボールは貴章があり得ない体勢で伸ばした足をかすめて、裏へと飛び出して行ったミカの足元へ。そして飛び出すソガハタの脇をぶち抜いてゴール!!!!!!!ミカがデビューしてからずーーーーっとトライし続けていたこのゴールへの飛び出しがこの重要な試合でついに実を結ぶ。やったぜミカ!!!そして千葉ちゃんの電気アンマ(しかもスパイクで)発動!!!!!!!!!普通にここがこの試合のベストシーン。いつぞやのFIFAの公式大会でやってた試合後にフェアプレーの場面をリピートする、みたいなのがあったけど、絶対に選ばれないであろう美しいシーン。
しかし千葉ちゃんはゴールセレブレーションで松尾をたこ殴りにして鼻血を出させた前科があるのに、また今回は凶悪な事をwww

83分、鹿島は大迫に代えて佐々木。この辺からすっかりオープンな展開になり、新潟も結構セットプレーをゲットできたんだけど、そこはさすが鹿島で迂闊なプレーを一切せずに切り抜けていく。
88分、ゴートクに代えてうっちー投入。オープンな展開でサイドバックが結構持てていたので、サイドに起点をもう一つ作りに行く意図だったのだろう。そのオープンな展開の中で、新潟も何度もカウンターになりかけたのだけど、ギリギリで伊野波と岩政がガッツリ踏ん張ってフィニッシュには持ち込ませない。で、最後はオリベイラが後半ロスタイムに新井場→青木で守りに入り、新潟もセットプレーを取るも今日はマルシオには魔法は降りてこず、試合終了。



勝ちたかった。うん、これは勝ちたかった。絶対に勝てた。これを書くために試合を見直したけど、絶対に行けたよね。まあ、次だ次。こういうファインゲームをした次はしっかり勝たないと意味がない。勝つぜ!!