【レビュー】10年第19節 清水戦@スワン

アルビレックス新潟 4-1 清水エスパルス
スタッツ
黒崎久志監督 試合後コメント


ボロ勝ち!!!


まずこの試合に関しては清水のこの試合に臨む状況と、メンバーの変更について言及しなければならない。真夏に中2日でアウェイに乗り込むという条件の元、ヨンセン、藤本、市川をターンオーバー。それぞれ永井、枝村、辻尾が起用され、前節岩下が退場したので、そこにボスナー。岡崎を頂点として右に枝村、左に永井の3トップ。
結論から言うと、この中2日という日程が清水に与えた影響は大きかったのだと思う。それは体力的な部分もそうだけど、一番は戦術的な擦り合わせやスカウティング含めた準備が全く間に合わなったって所だろう。特にターンオーバーを敢行したのに、そこで戦術のすり合わせが出来ていなかったのは本当に大きかった。


試合開始から完全に顕著だったのは、この試合でウイングに起用された枝村と永井の守備におけるポジショニングの恐ろしいほどのマズさ。今の新潟の攻撃を形作っているのは、貴章の献身、ミシェウの技巧、ヨンチョルのドリブル、マルシオのキープとパス、ってのは当然の事、それに加えてキモになるのは両サイドバックの攻撃参加、ってのは今さら新潟サポには言うまでもない常識。新潟と対戦するに当たっては、どう考えてもどうやってサイドバックを上がらせずに押し込むか、ってのが事前の準備として必要な事だろう。
そういう意味では、新潟が鹿島戦でやったように4-3-3で両ウイングが相手のサイドバックに常にプレッシャーをかける、ってのは有効なので、この試合でも4-3-3の清水の両ウイングのプレーが重要になる・・・って事で注視してたんだけど、まあこれが完全に大失敗。
とにかく両サイドの二人が全くと言っていいほどサイドバックを捕まえられない。守備時には驚くほど後ろに下がって、殆どアンカーの本田の位置まで行ってしまうし、サイドバックを目の前にしても、そこから前へ一歩アプローチするタイミングも遅い。特に永井はそもそも守備の仕方が分かっていないような感じ。そういう選手じゃないからキャスティングミスだと言ってしまえばそれまでなんだけど。ま、この辺は初スタメンの枝村や久々にスタメンの永井といったターンオーバーで登場した選手たちに、戦術を与えて咀嚼させるだけの時間はなかったんだろうね。
で、そこでサイドバック、特に左のゴートクが時にサイドハーフを追い越してウイングみたいな役割で中に入ってボールを受けたりする、そういう位置取りが出来るようになると、一気に清水は後ろに引いてしまい、張り付けになって呼吸困難な状況が続く。アンカーの本田はすっぽりとDFラインに吸収され、それに追随して兵働と小野もぐぐっと後退。で、ウイングも前述の通りその横までガッツリ下がってる。
なので、新潟のセンターバックボランチは相手のプレッシャーを恐れることがないので、ものすごく楽に、体力を使う必要もなく相手の攻撃を迎撃する準備が余裕を持って出来る。すると清水がそこから縦へと攻撃に移行しようとするタイミングでは、トップの岡崎に素早くファーストディフェンスに行ってすぐに新潟ボールに取り返す事が出来るし、仮に岡崎が頑張ってボールを残して繋げても、攻撃時に前へとアプローチを始める枝村、小野、兵働、永井の4枚にはしっかり準備が出来ている新潟の守備陣がザザっと囲んでボールを奪えてしまう。そして相手が中途半端な状態でボールを奪う事が出来るので、何度も危険なカウンターを仕掛けて、さらに相手のラインを下げて押し込む事が出来る・・・という笑っちゃうくらいの好循環。結局、清水は16分に兵働が放ったミドル以降は前半に全くシュートを打てず、ずっと引いてジリジリと我慢する時間が続いた。


そうなると後は今年の新潟の特長であり、今年清水をアウェイで葬り去った時の主因でもある、攻撃的なポゼッションがどんどん出てくる。左はゴートク、ヨンチョルの二人が互い縦だけじゃなく横のポジションチェンジを繰り返しながら、相手のバイタルとサイドのスペースをこじ開けようと圧力をかけ続け、右は右から中に入るマルシオとそのスペースに入ってくる大伍といういつもの連動で押し込む。
そして貴章は主に右サイドでボールを受ける動きを繰り返し、そして何と言ってもミシェウだ。今年の新潟のサッカーを象徴するといってもいいこの男が、全く前に出れない清水の守備陣をあざ笑うかのように、あらゆる場所に顔を出してボールを受けて、時にサイドを変えるパス、時にテクニックで相手を外す動き、時に危険な縦パスを繰り出して相手の呼吸する時間を与えない。特に左サイドのゴートク×ヨンチョルのユニットに絡んでいった時のワクワク間は半端なかった。


と、完全にペースを握って清水を押し込み、13分にはヨンチョルのコントロールシュートがポストを叩いたり、っていう決定的な形も作って、後はゴールだけが足りないという状況だったのだけど、ガチガチにスペースを埋めて気合で守る清水を相手に先制点が生まれないまま30分が過ぎる。
こういう圧倒的な状況の中、点が奪えないってのはその後の試合展開に影響を与えるのでちょっと嫌な感じもあったのだけど、32分、マルシオがあっけなくそれを吹き飛ばす。
左サイドで貴章からのボールを受けたヨンチョルが平岡を背負いながら反転してドリブルを開始した所でユニを引っ張られてFK獲得。ゴールちょっと左寄りの位置。佐藤藍子乙させてもらうと、これ絶対入ると思ってました。というのも、山形戦の試合前の練習でほぼこの位置からマルシオが何本もFKを蹴っていたんだけど、それがまあ笑っちゃうくらいズバンズバン難しいコースに決まってたんだよね。あれを蹴れば絶対入る(しかも俺たちのベーニシだしw)って思ってたら実にあっけなくそれを沈めてしまうんだから恐れ入る。ニアを完璧にぶち抜くキックは西部の手を軽くはじいてゴールネットを揺らす。すぐにでもゴールを奪って不思議じゃない状況のまま試合を進めてきた新潟がようやく先制点を手に入れる。


その後も圧倒的な新潟ペースで試合は進む。前述の通りラインがガッツリ下がってる清水に対して、まったくプレッシャーがかからないボランチセンターバックは楽にプレーできるし、清水が攻撃に移った時でも、清水の選手は後ろに下がった状態から前に向かわくてはならないので攻撃が遅れ、手詰まりになった瞬間に貴章やミシェウのプレースバックを被弾してまた新潟の攻撃に切り替わっていくという形が続く。
そして42分、何度となくチャンスを作ってきた左サイドでゴートクがプレッシャーをほとんど受けないままドリブルで攻め上がると、ヨンチョルにいったん預けたボールを受けてクロス→本田のクリアが中途半端になったところを、辻尾の鼻先でボールをかっさらったヨンチョルが、左サイドの角度のないところ、−もはやヨンチョルゾーンになりつつあるこの位置から逆サイドネットをぶち抜いて追加点!!!!大きくこのゲームを決定付けるゴールを決める。
その後44分には、左サイドのPAちょっと前の位置でドリブルを仕掛けた永井に対して、完全にスピードとフィジカルで勝利してボールをもぎ取ったゴートクから始まるカウンター。真ん中の貴章を経由して、右から上がってくる大伍がワンタッチでクロス→飛び込むのはさっきボールを奪って後ろから物凄い距離を走ってきたゴートク→こぼれ球を貴章、という素晴らしい形を見せる。この状況での脅威的な両サイドバックの走力は本当に凄い。


という事で、圧倒的な内容で前半終了。


後半、前半の苦境の原因であるウイングを変えてくるかと思ったのだけど、長谷川健太の選択は辻尾に代えて市川。そしてシステムを4-3-3から、中盤は右から小野、本田、兵働、枝村、2トップは永井と岡崎の4-4-2に変更。新潟のサイドでの起点を潰す手当てをしてきたのだろう。
その効果はいきなり表れる。47分、左に位置した枝村がドリブルを開始すると、そのシステムにアジャストする前の新潟の守備が緩くなってバイタル付近までのペネトレイトを許してしまう。そしてそれに釣られて中央に集中する新潟のDFの右サイドに出来た広大なスペースに入った小野からクロス→枝村が飛び込むもわずかに合わず、のこの試合における清水の最初の決定的なシーンを作り出す。
これでペースが変わる予感が若干したのだけど、その芽吹きを無慈悲に踏み潰すだけの余裕と強さが、この試合の新潟にはあった。
49分、左サイドからのゴートクのクロスが流れたのを拾ったミシェウが右でキープして起点を作る。そこからマルシオ→大伍→ミシェウと経由した所で、ミシェウからボスナーと太田の間のスペースに完璧なタイミングで、柔らかくてジェントルだけど中には猛毒を含んだパスが出る。それにいち早く反応した貴章が西部のニアを豪快にぶち破るシュートを叩きこんで3点目。残り40分で、完全に試合は決した。


51分にヨンチョルのクロスからマルシオが飛び込む決定的なシーンを作るなど相手を押し込む手綱を緩めずに試合を進め、54分にはちょっと傷んだのと温存で勲→ミカに余裕のスイッチ。
その後も基本的には新潟ペースだったのだけど、それを見て65分に清水はターンオーバーしていた藤本が小野に代わって入る。本当は使いたくなかったんだろうけどね。
これと新潟の省エネモードで若干流れは変わる。68分には中盤で上手くいれ変わった岡崎→永井と繋いで、飛び出していた本田に繋がってシュートを打たれるも永田さんが完璧なスライディングでカット、っていう地味に決定的になりかけたシーンを作られた。大勢に影響はなかったけど。
とは言え、ミカがどんどん前へとアプローチをかけ、ヨンチョルやミシェウが相手をちゃぶりまくってペースを完全に放す事はしない。
そんな中、72分にマルシオに代えてジョン・パウロ、リフトオフ。そのまま右サイドハーフに入る。マルシオ温存、パウロ試運転の余裕。
75分、清水は全く精彩を欠いていた永井に代えて原。対する新潟も83分、ミシェウ→明堂。一時期のファグネル役を、ファグが故障している今彼が担ってる感じだね。
その辺りではどちらのペースでもない時間帯が進むのだけど、85分に原が見事なターンとドリブルという完全な個人技でゴールをぶち込んで一矢報いる。
しかし清水の反撃はここまでで、逆に新潟は90分、セットプレーからの反撃でパウロ→前線の明堂を経由して、兵働を追いぬいたパウロに折り返した所でファウルを受けるもプレーオンで、最後は西部との1対1をヨンチョルがPKで制する。これをヨンチョルが決めて4-1。試合終了。


という事で文句なしの完勝。というか、清水の大惨敗と言った方がいいかもしれない。この試合は清水のスカウティングの大失敗がまずあって、そこを見事、完璧に頂いた試合。素晴らしかった。でも、スカウティングをガチガチにしてきた山形には敗北したというのは忘れてはならない。まだまだ。まだ満足してらんないよ。このチームはこれから相手のスカウティングを乗り越える強さを手にしなくちゃならないのだ。

あ、最後にパウロの話だけど、まああの時間と状況じゃ何とも分からんよね。少しずつ出場の時間を延ばして行く中で、色々見えてくるだろう。期待してるぜ。