「ソーシャル・ネットワーク」「砂丘」「アンストッパブル」

※改めて書くけど、ここでは基本ネタバレしてますよ。

俺様採点:5
素晴らしかった。そして見た後、どんと圧し掛かってくる極めて爽快な疲労感と、頭の中を巡る数々のシーンの反芻、そして同時になぜかちょっとだけ落ち込むあの感じ。名作を観た時にしか感じないあの感じ。
これはITのサクセスストーリー云々よりも、抱え込んだルサンチマンに対して、どうケリを付けるかという映画だ。ルサンチマンに対しての戦い方の映画だ。誰かはただ鬱々と抱え込んだまま現実から逃避し、誰かは芸術への爆発力へと還元することで解消し、誰かは銃を乱射し、誰かはトラックで人ごみに突っ込んだこの戦いに、この映画の主人公はひたすらコードを書いて自分が作ったSNSを増幅させていく事で挑んだのだ。だからこそ、フェイスブックはダサくなっては絶対にダメだし、ちょっとでもサーバーが落ちて舐められたらダメだし、中途半端な着地点に着陸させちゃいけなかったのだ。
冒頭の全くかみ合わない恋人との会話のシーンで明確に描かれる、この男の絶望的なまでのコミュニケーション能力の欠如、ルサンチマンの存在、そしてそんなにダメでも女性を渇望する根底的な意識、つまりザックリ言えばリア充に対する非リア充感。そこからシームレスに繋がっていく「一方は着飾ったリア充たちのパーティ、一方はくたびれたGAPのパーカーを着てハッキングを試みるどうしようもない非リア充」の構図と、その怒涛のグルーヴ。もうこれで完全に心を掴まれ、この作品の世界に入り込んでしまった。俺にとって、彼は完全に「一緒にこっち側にいる人間」だった。ハッキングして手に入れた女子学生の顔写真の優劣を投票するサイテーなサイトのシーンなんて、「あーコレは右だろう・・・だよな!!やっぱ右だよな!!わかるわかる!!」なんて劇場でブンブン頷いてしまったもの。
そして「こっち側」の彼はそのルサンチマンとの戦いを、非情に、しかしこれ以上ないくらい痛快に鮮やかに繰り広げる。つまるところ、これはピカレスクなんだと思う。ルサンチマンとの「彼と、僕らの」共闘を煽りつつも、俺を含めたフツーの人が踏み込めないその「非情さ」を平然とやって、これまた踏み込めない大成功という領域に進んでいく姿に、猛烈な憧れを喚起していくピカレスクなのだ。だから、俺が見た後に感じた「何故か落ち込む」感覚の正体ってこれなんだろう。一緒に戦ってるつもりになってたけど、よく考えたら俺はあそこまでの悪漢になれないじゃないか、ってね。そもそも、あんな男が近くにいたら、俺は許せるのか?って事もね。
だけどそれでも、今もマークの事が心から離れないのは、悪漢としての存在感があまりに鮮烈だったのと、そして何よりあのラストシーンだ。怒涛のグルーヴで描かれる痛快なピカレスクって構図で忘れかけてたけど、この物語の主人公のスタート地点は「世界で一人だけの愛しい女」だった。そう、彼は見事に「女は世界であいつだけ病」患者だったのだ。「500日のサマー」の“俺たちの”トムと全く同じ。そういえば彼がフェイスブックを拡充させるきっかけも、彼女が通うボストン大学に対応していなかったからだったしね。
散々俺たちが到達できない領域に到達してきた「手が届かない憧れの対象」になりかけたマークが、突然こっち側に戻ってくる、彼女の返信を待ちきれずにF5を連打するシーンのどうしようもない「俺たち感」。結局、根本は彼女との繋がりの渇望だったと分かる、あのF5連打。もうだめ。泣けて仕方なかった。なんせそこで満を持してかかるbaby you're richmanの意地悪さに、本気でむかついてしまった。
考えてみると、F5を押す事ってもともと一種の儚さみたいなものを抱え込んだ行為だと思う。ネットの世界は一回の更新で全てを一気に変えることの出来る世界で、その反射性がゆえに、人々が食らいつくのも見限るのもとても早い。F5一つで全てが変わってしまう。だからこそ、サーバーへの入金が滞りそうだった時にマークはエドゥアルドに激怒するし、いつだって忙しくコードを書き続ける。人との関係もそうだよね。たった一言で、関係が壊れる事も、より強固なものになることもある。マークはそれを理解していない。それが分かっていないから、大切な「世界であいつだけ」な女とのつながりが切れてしまっている。だけど、彼はただひたすらF5を押す。そうやって全てを変えてきた男だからだ。それがうまく行くはずもないことを、彼は理解しないまま、F5を押し続ける。こんなに切ないラストがあるだろうか。


だから今はもうマークと酒が飲みたいww俺なら、お前が投げた瓶キャッチしてやるぜ!

俺様採点:4
どかーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!
死の象徴である砂丘と、その上で行われる生の象徴そのものであるセックス、という描写に代表されるように、生と死の狭間を抉り出した作品だね。まあ、とりあえずどっかーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!


俺様採点:2
映画的な興奮を、目立つ粗が覆い被してしまう。残念。デブはやせなくちゃいけないという、ありがたい教えはあるけどな!
色々言いたい事はあるけど、最後みんなやったーやったー!って騒いでるところで「えーと、で、ブレーキってどうやんの?」→どっかーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!→爆煙がもくもくと立ちこめる中、字幕で被害人数と損害額、環境破壊の度合いが出る・・・って演出だったら、ハリウッド的王道を換骨奪胎する名作になったのに、って思ったよ。それだけ。