「サラエボ、希望の街角」「ブルーバレンタイン」「イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ」「モンスターズ/地球外生命体」

俺様採点:1
女性の自立だとか、男女の関係だとか、アングルだとか、筆致だとか、そういう話の以前に、この映画はイスラム原理主義に対しての描き方があまりに酷い。要は「イスラムなんて悪ですよ」という視座でしか描いていないんだよね。それを正教会イスラム教とカトリックがせめぎ合って、色んな問題を生んできた歴史を持つボスニア・ヘルツェゴビナという国の監督が描くって事は、もう完全にフェアではない。言ってしまえば、大いにプロパガンダ映画の様相を呈してるんだよ。監督のコメントを引用すると「紛争の影響は人々の心に強く残っている。厳格な信仰に走る人が増えた一方で、私のように神を信じなくなった人も多い。ごく個人的な問題と社会全体を結びつけるような映画を作りたかった」だってさ。
はっきり言って、そんな映画は糞だね。馬鹿馬鹿しい。俺は典型的な日本人型無神論者だからどの宗教に肩入れするって事はないけど、この映画の宗教に対しての姿勢が最悪なのははっきり分かるよ。しょーもない。


俺様採点:5
さあ困ったぞ。「500日のサマー」を観た時と同じく、最初の感想とその後何度も考え直した結果の感想がグチャグチャになってしまって、一つの答えになかなか辿りつけないんだ。だけど「500日のサマー」の時は「この世にはあの女しかいない病」を患ったトムが悪い!!てか俺も悪い!!わかる!!って結論に何とか至る事が出来た。だけど、この作品ではなかなかそこに至らない。恐らく、それはトムが結婚してないからだと思う。
そう、この映画は「結婚」そして「子供」という分岐点を過ぎて変わるもの、変わらないものが何なのかを本当に理解していないと、自分の中の最終的な結論が導き出せない映画なんだと思う。そういう意味で、今のところ俺の手にはおえない映画なんだろう。悔しいけど、率直にそう思う。俺はまだ結婚という責任を背負う恋愛をしていないもの。だからぜひ、結婚したらまた観たい映画だね。


ただ一つ言えるのは、シンディにとって家族とは「仲良く一緒にいる事が出来ないなら維持しなくていいもの」であり、ディーンにとって家族とは「両親のどちらが欠けても本来はいけないもの」であるという、それぞれの生い立ちによって構築されてきた家族に対してのスタンスに、致命的な乖離があったという事だよね。それをお互いに埋めあい、補い合い、擦り合わせると言う行為が、この未熟な二人には出来なかったのだろう。
そして何より、男の目線から観て、ディーンは典型的な「この世にはあの女しかいない病」患者だ。運命の人だと思ってしまったら、もうそこから逃げだせないのだ。だから俺がこの映画を見て、結婚という経験をした事がないにも関わらず、ラストで大号泣してしまったのは、その病気を患ってる事がハッキリと見えたからだよね。なんせその病、俺も患ってるもんで。
だけど一方でこの映画のタチが悪いのは、シンディにもその気があって、「この世にはあの男しかいない病」をかつて患ってしまっていた事だよね。あのレスリング中出し糞野郎は、別に逃げた訳じゃないんだよ。責任を取ろうとしてたんだ。だけど、ふっと優しくしてくれたディーンの温度に、全てを委ねてしまった。そしてそれが5年の歳月の間に冷めてしまったから、もう一方でいつまでも「この世にはあの女しかいない病」にとり憑かれてしまったままのディーンとの、その温度差が酷い事になる。切ないね。


それにしても、この映画のエンドロールの花火とウクレレの響きの切ない事と言ったらどうだろう。あれは反則だよ。泣くよ。大号泣だよ。あ、音楽と言えばグリズリー・ベアの音楽も本当に素晴らしい。胸を締めつけるほどに美しい音楽。


俺様採点:4
面白かった!!まーこれは完全にバンクシー現代アートバブルに対しての痛烈な批判だよね。それをやる為の映画だ。だから、後半のティエリー・グエッタという男がミスターブレインウォッシュの名を名乗ってバブルの真っ只中に飲み込まれていく、って話の流れはどこまでを本気に取っていいのか、すごく微妙なところではある。そもそもティエリー・グエッタという男の存在とその成功体験自体が、100%バンクシーの差し金である可能性も否定できないんだからね。その辺をうまい事ぼやかしてるあたりは、間違いなくバンクシーのセンスのなせる業って所だろう。
でもそれを含めても、ティエリーが暴走し始めてバンクシーが絶妙のツッコミを加えていく後半は、一つのコメディ作品としても非常に優秀だし、とてもポップに楽しめる側面をしっかり持ったエンターテインメント作品だと思います。鵜呑みするのはバンクシーの思う壺だからやめた方がいいと思うけどねw


  • 127 モンスターズ/地球外生命体

俺様採点:2
総製作費がたったの1万5千ドルらしいという噂の作品。だからモンスターを何度も出す事は出来ないので、故に奇妙な関係の男と女のロードムービーとしての視点に、作品の力点を置いたのはよく分かる。
だけど、そのロードムービーの部分が、正直言って面白くない。もっと心の動きを饒舌に描くべきだし、そこをこの程度の濃度で描くのであれば、金がかかる「バケモノを見せる」映像を避けつつハラハラさせないとダメだと思うのだけど。だって最後まで「あの女とヤリてー!!」って思わなかったよ、俺。