ステッピング・ババア

皆さん経験あると思いますが、通勤・通学の電車って、全然知らない人なんだけど、いつもおなじみになってる人が結構いますよね。
いつも疲れた顔してるおっさん、日経を熟読するOLさん、吉祥寺から乗ってくる貧乳のおねえさん、中野でいつも乗ってくるむちむちのエロイおねーさん。まあ、おねーさんばっかなのはこの際無視してもらうとして、俺もそういう「いつもの」メンバーが結構いるんです。(しかしそういう意味でも中野は本当に素晴らしい街だな。I LOVE NAKANO!!)
んで、そのいつものメンバーの一人に、1週間に数回、吉祥寺から乗ってくる一人の初老の女性がいるんです。見た目は普通のおばさん。しかし普通ではないところが2点。いつも片手にコカ・コーラを持っている事。そして、何があっても絶対につり革や手すりにつかまらない事。
つり革や手すりにつかまらないってことは、電車が揺れるたびにふらふらとすることになりますよね?このおばさんの凄い所はそのフラフラしたときのステップワークなんです。
とにかく電車が揺れるたびに、360度どこへ移動するか分からない奇怪なステップを踏みまくる。電車の揺れってイレギュラーな要素を多分に含んでいるから、そのステップワークはいつも変化しているわけです。音楽とダンスの違いはあれど、これはまさにジョン・ケイジが提唱していたチャンス・オペレーションの思想。もしくは酔拳の思想とも言えるかも知れません。
そしてそのおばさんの凄い所は絶対に他人にぶつかったり、足を踏んだりしないという所。中央線に比べて空いている総武線とはいえ、限られた自分のテリトリーの中で多彩なステップを踏むわけです。
最初は「このおばさん毎朝アホなの?空いてるんだから手すりつかまれよ」とか思っていたんだけど、だんだんと俺の中では「革新的なステップを探求する旅人」という評価に変わっていきました。それほどまでに、あのおばさんのステップは毎朝凄まじいダイナミズムを生み出していたわけです。


そんなある日の事。いつものようにおばさんは朝からコーラ片手に奇怪なステップを踏んでいたんです。そしたらそのおばさんの前に座っていた男性がそのステップワークを見かねて席を譲ろうとしたんですよ。
「あの、よろしければどうz」
その最後の「ぞ」を言い終わるか言い終わらないかのうちに、そのおばさん
「あーららら、すいませーんね〜〜!!」
って嬌声を上げてどっかりと座ってんの。



あのババアめ、ステップワークの旅人どころか、とんだ策士でやがった!!