たとえ話

例え話をします。
男は頭に溢れる情報を思う存分放出する場を欲していた。思いついたアイデアやデッサンを放出する場所を。
そんな時、大きな黒板を見つけた。それは大きさ、書きやすさ共に理想的だった。男はその黒板に夢中に書き込んだ。指をチョークの粉で真っ白にしながら。時には楽しさを持ち込み、時には悲しみに満ちたラインを描いた。
しかし気付いたら、それはもう書ききれなくなってしまった。まだ書く場所は僅かに残っていたけど、一度書き始めたら溢れてしまいそうな、危ういスペースしか残っていなかった。
そんな時、別の黒板を見つけた。男は今まで愛用していた黒板に残ったわずかなスペースを気にしながらも、新しい黒板に新しい線を引き始めた。まだまだ広大なスペースが残る黒板に、胸を高鳴らせていた。
そんなある日、男は一つの噂を聞いた。それは今まで愛用していた黒板は、実は裏側にも書くスペースが残されているという事だった。
男はそれを俄かには信じなかった。噂は噂だと思っていた。しかしその黒板の裏の存在を確認せずにはいられなくなっていた。それを確認する方法はいくつもある。一番簡単なのはその黒板の前にもう一度立ち、裏を覗き込むこと。しかし男にはそんな度胸がなかった。いや、度胸という言葉は正しくない。「男が、そして彼に向き合うモノがハッピーであるために引いて置かなければならないラインを踏み越えること」これが出来なかっただけだ。
だから男は僅かな運に賭け、根気だけを手に持ち、その「裏側」の存在の確認に勤しんだ。
そして、その試みは思いがけずに、あっけなく解決する。
やはり、その黒板には裏側があったのだ。
そして男は、その裏側のスペースに、ゆっくりとチョークを押し当て始めた。



何故、こんな例え話をしたのか。それはゆくゆく話します。もう知ってる人もいるけどねw