【レビュー】第14節 神戸戦@スワン

アルビレックス新潟 3-1 ヴィッセル神戸
エス!!!2試合連続のファインゲーム!!やっぱり6月のアルビレックス新潟は走るアルビレックス新潟だな。踊る竜宮城、みたいな。ピューと吹く!ジャガー、みたいな。とまあ、くだらねー事言ってないでれびゅっちゃいましょうかね。
まず、この試合の立ち上がりは今までにないくらい相手のサッカー、つまりカウンターを警戒した試合運びを選んでいたね。DFラインでじっくりボールを回し、全体的に引いて虎視眈々とカウンターのチャンスを狙いすます相手を前に引き出し、彼らのゲームプランを狂わせようとした。これについては淳さんは具体的なコメントは出していないけど、坂本のコメントを見る限り、やっぱりチーム全体としてのゲームプランだったんだろうね。
ちょっと話はずれるけど、甲府戦でも中盤をすっ飛ばしてDFラインの裏めがけてロングボールを多用するというプランを見せていたように(それが阿部の退場を招いたんだけど)、そういう明確なチームとしてのゲームプランを高い精度で遂行できるようになってきたのは、間違いなく成長した所だろうね。その辺はちょっとだけ、大人に近付いたと思う。
試合に話を戻します。そんな戦法をとった新潟だけど、神戸はその手には中々乗ってこなかった。いわゆるひとつの斜めタメで構える待ちガイルみたいな状態。それに対して新潟はサイドバックの攻め込みや2トップとマルシオ・リシャルデス、松下の絡みという波動拳を連発してジリジリ削りにかかるんだけど、神戸もその都度ソニックブームでそれを相殺にかかるという構図。しかし、そんな中で飛んできたソニックブームの一発を食らってしまう。これに関してはあっぱれ神戸、としか言いようがないだろうね。ゆっくりとしたDFラインのボール回しから、一気に縦に早く入れてキレイな連動で新潟のDFを完璧に切り崩した。
しかしここで新潟が素晴らしかったのは、そこで慌てふためく事無く当初のゲームプランをじっくり推し進めた所。ただし、サイドバックの位置をちょっとだけ上げる、縦に入るパスの数を増やす、という微調整を加えて。その結果2トップ、特に貴章にボールが入る回数が増え、貴章の積極的な姿勢からファウルを誘ったり、コーナーキックを奪うシーンが増え始める。サッカーの一つのセオリーとして、セットプレーの数と質にはゲームの流れを変える力がある、ってのがあると思うんだけど、この日のリシャのキックはまさにそれを証明するものだったね。そしてその流れを彼自身の素晴らしいFKで見事昇華させた。もう、彼は文句なしでこの試合の主役だったね。
そして同点に追いついた時点で、当初のゲームプランは御役御免。そこからはいつも通りの新潟のサッカーを遂行するのみ。結局、ここの切り替えのスームズさがこの試合を新潟の完勝に誘ったのだと思う。試合の流れを読み、チャンスと見るや手綱を緩めず積極的にゲームを進める。この大人な部分が勝因だろうね。
同点弾から始まった新潟のいい流れを切らす事無く、後半スタートからチーム全員がアグレッシヴに走りまくった。前半はいつもと違うプランにちょっと戸惑い気味だった千葉と勲のボランチコンビがこの流れに乗って中盤で相手を潰しまくり、そのハードワークの結果、リシャのテクニカルなプレーが新潟の攻撃に流麗な流れをもたらし、回りの選手が活き活きと動き始める。特に坂本のオーバーラップは完全に神戸のDF組織を混乱させていたね。そのいい流れのまま逆転弾と、勝ちを決定付けるゴールを奪ってそつなく試合を終わらせた。完璧。
それにその前線のムービングの結果、新潟のDFが不利な状態のまま神戸の攻撃に曝される事は殆どなかったし、懸念だった2列目、特に大久保に対しては内田がピンポイントで見事な守備を見せて完全に存在を消していたね。うむ、本当に完璧なゲーム。


磐田戦は「自分達のサッカーを遂行すれば勝てる」という事を思い出すためのゲームだった。そしてこの神戸戦は「自分達のサッカーをどうすれば発揮できるか」って課題に対しての一つの答えを導き出したゲームだったと思う。相手のカウンターを警戒してちょっと違うゲームプランで始めて、チャンスと見るや自分達のサッカーに相手を放り込んで勝利を収める。そんな試合を読む力。それを発揮してくれたのが何より嬉しい。勝者のメンタリティってそういうものだと思うしね。
それと最後に、主審を務めたニコライ・フォルクアーツさんに言及したい。久々に主審の笛にイライラしないゲームを演出してくれたね。判定の基準がぶれる事なく、過剰に笛を吹く事無く、流す所は流し、ゲームの流れを断ち切るような無粋な笛は全く無かった。今「無粋」って言葉を使ったけど、結局日本の主審の問題点を表現するなら「無粋」って事なんだよね。審判の仕事はサッカーという娯楽を、円滑に間違った方向に進まないようにうまーく進める事なんだよな。試合をエンターテインする精神を持ってね。だから、開始早々にまあカードを出す審判もいるよねって微妙な判定でいきなり赤出して11対10の試合を85分間観客に見せるとかさ、ロスタイムの最後の攻防でリスタートの位置をいちいち注意するとかさ、ちょっとしたフィジカルコンタクトでいちいち笛吹いて流れを止めるとかさ、そういう無粋な判定が日本の主審は多すぎるんだよな。今日のフォルクアーツさんの様な粋な笛が、今後の日本の審判の主流になる事を願うばかりだよ。


さ、これで2連勝。この後は下位に低迷するチームとの戦いが続く。去年下位チームに勝てなかったのはひとえに引いた相手に対しての策を持っていなかったのが原因だと思う。しかし、この試合で引いてくる相手に対しての対処のヒントは手に入れたはずだ。だから、その流れを断ち切る事無く、勝ちを伸ばしていってくれい。だからやっぱり、6月は走って、走って、走れ!!!!!!