【レビュー】第20節 名古屋戦@スワン

アルビレックス新潟 4-0 名古屋グランパスエイト
何が何でも欲しかった勝ち点3、得失点差+4、新潟らしい積極的なプレッシングの体現、カードも怪我人もなし、シルビーニョの試運転、そしてこの後も続くこの夏の連戦を乗り切るための次に繋がるような試合内容。それを全てこの試合では手に入れる事ができた。つまり、パーフェクト!
この試合の立ち上がりすぐに判明したサプライズは名古屋のシステム変更だった。藤田、山口、金の逆三角形のセンターの3-1-4-2ではなく、山口と藤田がセンター、金と本田がワイド、トップ下に片山を置いた3-4-1-2という形。これは前線、特にバイタルの部分へのチーム全体でのプレッシングを重視する新潟への対策だったのか、それともセンターバックとアンカーのトライアングルでセンターの守備を構築する新潟に一枚ずつアタッカーをぶつけようとしたのか、真意は分からないけど、この形に新潟が若干の戸惑いを見せたのは間違いなかったね。立ち上がりは守備ラインがバタバタするシーンが目につき、津田がサイドに流れる度にセンターにいや〜なスペースが出来てしまっていた。
ただ、名古屋のその奇襲が奏功したのは前半の10分くらいまで。そのシステムを理解した新潟が持ち前の運動量を活かして前線からのプレスをピンポイントで掛け始めると、一気に名古屋の組織は混乱し始める。特に2トップとサイドハーフが名古屋のバックとボランチに手を抜く事なくプレスをかけ続けたのが、前半の試合の流れを決定付けたと言って良いだろうね。餓えたパンサーの如くボールホルダーに食らいつく野性的な動きと、それが単独行動に終わらない組織的な連動性(特に勲、マルシオ、坂本の中盤の前3人の機能性は見事!)。そしてプレスを掛けた結果サイドラインを割ったら、必ずラインがグググっと5〜15メートル上がるという全体の積極性。これぞ走るアルビレックス新潟の理想形そのもの!
そんな流れの中で効果覿面だったのがロングボール。淳さんのコメントを読むと意図してロングボールを多用したようだけど、新潟のプレスを前にラインと距離感がバラバラになった名古屋のDFラインは、左右に振り分けられるボールとエジ・貴章という高さと粘りに富んだトップに悪戦苦闘しまくる事になった。その結果サイドに美味しいスペースが生まれ、そこからまずは先制点が生まれる。
しかも「勲のヘッド」で。もう一回言おう。「勲のヘッド」でwwwいやーしかしあの先制点でこの試合の勝利を確信したわ。だって勲がヘッドでゴール決めるような試合でサッカーの神様にそっぽ向かれる訳ないじゃんね。勲、お前ホントに最高!
そしてそのロングボールの応酬となれば当然輝くのは永田。まさに新潟のロナルド・クーマンの面目躍如。前節のオウンゴール&足が攣っての退場という最高にかっちょ悪い姿が嘘のようなエレガントなプレーっぷり。永田さんやっぱかっちょいいなー。屈強でクレバーな千代反田と永田のコンビって改めて素晴らしいよな。
そして二点目もそのロングボールから。千代反田のフィードから貴章がDF二人をいなしてゴリゴリ進んで貴章ゾーンからズドン。ファンタスティック!貴章のスピード、アジリティ、ボディバランス、そして意外性。彼の特徴が凝縮されたような素晴らしいゴールだったね。しかしまぁ「縦ポン一発であとは任せた」な形で貴章がしっかりゴールを奪ってくれる時代になったんだよな。もう何が起きたって驚かないよ。そんな状況じゃやっぱ上向いていくしかないよな。
そんな新潟の驚異的な運動量と的確な攻撃メソッドが要因となり、完全に新潟ペースで前半を終える。そして後半、名古屋は増川と杉本を投入して4-4-2に変更してきた。ここで印象的だったのは後半開始前の円陣を組んだ新潟の選手の面々。その交代を確認しながら緊急ミーティング開始。今までここまで長い時間をかけて侃々諤々の議論をこのタイミングでするなんてなかったよなぁ、なんて思ったのだけど、こういう部分が今年のチームの成長だよね。当然の事ではあるのだけど、そういうチーム全体での摺り合わせがあってこその、今年の好調なんだよな。いいねいいね!
概して2-0というスコアは次の1点が試合の流れを決定付けるものだけど、その1点を新潟が後半開始まもなく手に入れる事ができた。大竹フェルフォーセンまことが試合後に「試合のターニングポイントだった」と語っていたようだけど、まさにその通りで、後半開始早々に再び新潟がプレスで強襲を仕掛けた結果生まれたという意味でも、これが決定打だったと言って良いだろうね。
そしてその後はあのうだるような暑さの中で、前半のような殺人的な運動量をセーブしながらある程度リトリートする形にシフトチェンジ。それでもあくまで奪い所を虎視眈々と狙い続け、前半に比べて数こそ少なかったものの効果的な攻撃を仕掛ける事ができた。うっちーあたりは後半若干停滞したことを反省するコメントを出していたけど、昨日はあれでいーのいーのブライアン・イーノ。だってこの後、鬼の連戦が待ってるんだからね。それに失点とかカードとか怪我とか、そういう事故を起こす事なく試合を終える事に成功したんだし、完璧と言っていいよね。
そしてお帰りシル!まだまだコンディションも試合勘も本調子からは程遠いけど、4点目のセクシーなスルーパスとか、らしいプレーも見せてくれたし今後も期待しちゃうよ!
つーわけで前節の完敗を吹っ飛ばすような素晴らしいゲームだった。そして夏場の連戦を乗り切るためのオン・オフを試合の中で切り替えるという賢さもバッチリ見せてくれた。前半にハードワークして勝負を決め、後半は無理せず相手をいなす。先日のハーフシーズンレビューで、連戦の疲労とどう付き合うかって事が新潟が次に向き合う課題だ、と書いたけどその課題への対策は着々と進められてると考えていいのかな?ま、これはこの後数試合を観てみないと分からないけどね。
ま、これで上位陣には食らいついた。今日の流れを途切れさせることなくまだまだ上目指すぞ!