【レビュー】第25節柏レイソル戦＠スワン

アルビレックス新潟 1-2 柏レイソル
今シーズンの戦績を見てきて、今年ここまで最も優れた部分って「連敗が一度もない」って所だと思う。ただ、それがこの試合でついに崩れてしまった。そしてずっと踏ん張っていた順位も下からどんどん追い上げてきたマリノスとレイソルに抜かれて7位。「状況」って観点から見ると、非常にダメージの大きな試合になってしまったと言えるだろうね。
まずこの試合の注目点であった勲の左サイドハーフ起用だけど、いきなりこれが奏功する。勲がするするとセンターに入り込んでボールを受けて果敢に前を向くと、ボールが上手く勲の前にこぼれる。それを右サイドのエジへ流して（この辺のシンプリシティが勲の真骨頂だよね。）そのシュートのこぼれをプッシュ。願ってもない先制点を手に入れる事が出来た。
その後は清水戦、千葉戦を見てるかのような押せ押せモード。松尾がびっくりするくらいのドフリーヘッドを放ったり（あれ決めてくれよ･･･）、エジのポストから松尾が決定的な形を作ったり、貴章の真骨頂といえるサイドからぬるぬるえぐるドリブルから、ほとんど角度がない所を狙ったり（あれは貴章じゃないと出来ないプレー。素晴らしかった。）、などなど大チャンスの応酬。
しかしこのいい流れは前半の半ばを過ぎると、次第に萎縮し始めた。その要因はなんと言っても柏がサイドで起点を作り始めた所。これは石崎監督も試合後に明言してるけど、これによって次第に新潟のポジショニングが曖昧になり始めた。丁度、あの悪夢の0-6のマリノス戦のような形で起点を作られた事によって、4バックとボランチの関係がおかしくなり、次第にちょこちょこ危険なギャップを作るようになる。フランサのポストから太田が抜け出しかけたシーンがあったけど、ああいったプレーが後半の布石となってしまった。
また、そのバックラインの不安定さが前線にも影響する。勲はピンポイントでは素晴らしい守備を見せたし、マルシオも局面を打開するパスとキープを見せ、貴章はめちゃくちゃ走りまくってよく守備をしてた。ただ、それが連動性を見せない。それぞれが個人的なプレーで完結してしまい、いい形でボールを奪っても効果的な攻撃が繰り出せない。その結果、パスミスが増えて柏のリズムがずっと続くという悪循環に陥ってしまう。淳さんも試合後にここに言及してたけど、結局逆転ゴールもこの形から。そこを修正できなかったのは本当に痛かった。
後半も同様の流れで試合が進む事に。そして散々危険なシーンを見せていたバックラインがついに決定的なミスを犯してしまう。センターバックと坂本がボールをキープするフランサの位置までラインをぐぐっと上げる。ただ、そこでなぜか松尾だけがそのラインコントロールに連動する事無く残ってしまった。そこでまんまとフランサからボールを通されて李忠成が完全にフリーで抜け出し同点。DFとしては絶対にやってはならないミス。そして、前半途中から続いていたチーム全体の曖昧なポジショニングの影響が、最もネガティヴな形として出てしまったとも言えるだろうね。
その失点の後も流れは柏。柏らしいプレスが攻撃のポイントを絞りきれない新潟の攻め上がりに的確に掛かるようになり、流れを新潟に渡さない。特にセンターバックの古賀と小林は2トップに中々ボールを納めさせず、その結果、局面を打開する術に迷った時に出てくるエジの悪癖であるボールの持ちすぎ病が発症し、シルビーニョも可能性のないシュートを空中に飛ばすしかなくなってしまう。
で、半端な攻撃と曖昧なポジショニングのバランスの悪さが柏のカウンターの餌食になってしまった。セットプレー崩れの猛攻から、柏のカウンター。一瞬4対4を作られてしまうという、セットプレー崩れで起こってはマズすぎる状況を作られ、まんまと失点。柏のカウンターの見事さ（特に交代で入った谷澤の完璧なキープは見事）があったとはいえ、前線とバックラインの連動性を欠いた新潟にとっては、起こるべくして起こった悲劇であったと言えるだろうね。
その後は永田の決定的なヘッド等もあったけど、そんままうっちゃられて試合終了。柏の術中にはまり、自滅させられてしまった試合となってしまった。

これで順位は7位まで下がった。そしてこの後はアウェー鹿島→アウェー浦和という今年のハイライトが待っている。はっきり言って、今のチームの調子は相当良くない。そんな中でこの最もキツイ相手と試合をしなければならない。笑っちゃうくらい、状況はマズイ。だけど、ここを乗り切らなければシーズン終了した時に笑う事は出来ない。今年はここまで間違いなく「いいシーズン」だ。だからそれを「凡庸なシーズン」にするのだけは絶対に避けたい。このチームは絶対もっと出来る。だから、この厳しい状況を何とか乗り越えてくれ。間違いなく、ここが今年の一番の正念場。弱者になるか、強者になるかはこの後数試合の勝ち点に左右されてる。残り9試合。ここがこれまで蓄積してきた自信と経験を発揮すべき所。いい準備をして、鹿島戦に挑んでくれ。