【レビュー】第27節 浦和戦@埼スタ

浦和レッズ 1-0 アルビレックス新潟
勝ち点1。この試合で新潟が見せたハードワーク、そしてこの試合のために用意した守備メソッドの忠実な実行ぶりを考えれば、その対価としては勝ち点1がどうしても欲しかった。もう少しの差。あの一発を凌げるか否か。ただ、そこを埋めさせない浦和の強さを実感したとも言えるけど。
まずこの試合の最大の注目点であった両サイドバック=ヒロシと光だけど、守備面では一部不安定な時間帯もあったけど全体としては良かったと思う。特に前半。このサイドにおけるしっかりとした守備の構築が、浦和の攻撃のリズムを削ぎ、この試合をファインゲームにした大きな要因になった。特に前半のヒロシの守備は出色。対面の山田に対して、ほとんど縦への突破を許さず、相手をジワジワと横への展開にせざるを得なくなるように誘発し、そこで勲・シルビーニョボランチコンビや坂本とのプレッシングの連動でボールを奪い取ると言うタスクを集中して遂行した。その辺はやっと巡ってきたスタメンの座に対してのモチベーションの高さを伺わせるプレーだった。
ただ、攻撃面でそのサイドを有効に使えなかった。後で言及するけど、寺川やシルビーニョが、経験に裏打ちされた本当に気の利いた動きで、狙いたかった3バックとウイングバックの間のスペースを上手く作り出し、そこからのクロスを放てるシーンを(特に後半は)右サイドで何度も作り出した。ただ、肝心の光のクロスが工夫がなくお粗末。あれだけズルズル滑るピッチコンディションならばグラウンダーという選択肢はもっと積極的に選んでよかったはず。結局後半上がったクロスで最も可能性を感じたのは、貴章のグランダーのクロスを阿部勇樹が後逸した形だった訳だしね。あとヒロシは守備に重きを置いたのかもしれないけど、もう少し判断早くオーバーラップして欲しかった。その判断が1秒早いだけで全く違うのだから。
それとこの試合で際立っていたのは前述の通りシルビーニョと寺川。この試合のシルはここ数試合の不調が嘘のような、ほぼトップフォームな素晴らしい出来だった。ここ数試合ではかなり散漫だった、DF前でしっかりスクリーンをかけるという仕事をしっかりこなした上で、前線に顔を出し、状況判断に優れたパスをバシバシ供給する。やっぱりこの人は特別な選手なんだって事を久々に思い出させてくれた。
それと寺川。これぞ寺川能人!な圧倒的な運動量で随所に顔を出してリズムを作り出す。それとタイミング良く中に絞ってサイドにスペースを作り出す動き。あれこそまさにベテランの味。これだけ怪我人続出の厳しい状況の中でこういうプレーを見せてくれると、本当にテラがいてくれて良かったと思えるね。
で、試合の流れに話を戻すと、前半は浦和の疲れの影響もあってか前線の連動がイマイチ。それに加えて前述の通り、サイドにしっかり蓋をした事もあり浦和の攻撃を停滞させる事に成功していた。その結果新潟はサイドで起点を作る事ができ、数こそ少ないものの可能性を感じさせるサイドアタックを繰り出すことが出来た。前半の終わりごろには浦和のごり押しセットプレーで何度も危険なシーンを作られたものの、北野が素晴らしいセーブを連発。本当に素晴らしかった。
試合が動き出したのは後半。浦和が、ウイングバック1枚に依存しすぎるサイドアタックの形を修正し、ポンテがサイドで絡むシーンを増やすと、浦和のクロスの数が一気に増加した。その結果、新潟のDFラインがゴール前に張り付けになるシーンが増えて全体のバランスが崩れ始め、スペースメイクが上手く行かないので効果的な攻撃が繰り出せなくなる。ただ、ここで踏ん張ったのがセンターバック2枚とボランチ2枚。クロスが放り込まれてもしっかり弾き返し、こぼれ玉をしっかりボランチが処理する。そこで踏ん張った事で、次第に浮き足立ったサイドの守備が落ち着きを取り戻し、浦和の攻撃はイージーアーリークロスが増え始めた。
で、そう言った流れの中で両チームの疲労も影響して次第にラインが間延びし始める。そこで非常に効果的だったのは河原の投入。それまでほとんどチャレンジ自体が少なかった、実に彼らしい裏のスペースへの飛び出しを見せると一気に新潟の攻撃は活性化した。ポジショニング良くボールを収め、受けたらすぐに走り出す。その結果美味しいスペースが何度も生まれてワイドな展開も出来るようになった。
そんな流れの中で、ますます浦和の攻撃は強引なロングボールとワシントンの粘りに頼る事になった。だからこそ、そういう流れに持ち込めたからこそ、あの失点だけは絶対に避けなくちゃいけなかった。これまでしっかりとセカンドボールの処理を徹底していたボランチセンターバックのポジショニングが雑だった一瞬の隙に、ポンテにボールが渡ってズドン。ここまでの時間に何度も浦和が試行してきたこの形に、何度も跳ね返し続けたこの形に、沈む事になってしまった。せっかく自分達のハードワークと集中力と状況判断で浦和の攻撃を単純化する事に成功したのに、こういう一発にやられてしまうのは余りにイージーだったと思う。冒頭に記したとおり、新潟のプレーに対する対価は勝ち点1じゃなければいけない試合だった。



ただ、間違いなく、この試合は迷いばかりが心を支配し始めてしまった最近のチームを蘇らせるに値するゲーム内容だったと思う。今欲しいのは「きっかけ」。この試合のシルビーニョの復調も、テラの老獪な存在感も、確実にオプションとして機能することが分かった河原も、サイドバックの守備も、そして自分達が極めて冷静に状況判断を行ってハードワークすれば相手の攻撃をしっかり迎え撃てるって事を確認できた事も、全て「きっかけ」になりうるはずだ。
だから、重要なのは次。ホーム大宮戦。この試合は絶対に、絶対に、絶対に落とすわけには行かない。選手達もきっと分かってるだろう。ここが今シーズンのラストスパートの可否を占う事になるはずだ。
いいシーズンになるか、凡庸なシーズンで終わるか。それはここでの踏ん張りに掛かってるよ。大宮戦。絶対に勝とう!!!ていうか、勝てっっっ!!!!!!!!