天然コックドゥードゥルドゥー

やっぱり夏帆は有史上一番かわいい。間違いない。以上。
・・・・・で、終わらせちゃうには余りにもったいない映画だな。うん、いいよ。これ本当にいい映画だよ。ハラカミの音楽も素晴らしくいい。エンドクレジットに流れるくるりも凄くいい。大沢君がちっとも中学生に見えないけど、そんなの関係ないって思えるくらい凄くいい。
この山下敦弘という人は「リンダ リンダ リンダ」でもそうだけど、ノスタルジーを嫌みになる手前で止めて描くことのできる監督だと思う。特にこの天然コケッコーではそう。ノスタルジーってのは他人にケツを叩かれて喚起するものじゃないって事を、この人は良く分かってる。もしかすると、この人の抱える最大のテーマはそれを分かってない人たちへのアンチテーゼなんじゃないかと思ってしまうくらいに。
楽しい思い出も、悲しい思い出も、そしてスケベ思い出も、平坦な日常の流れの中でほんの少しぽっこりと隆起したものに過ぎない。そしてそれは誰かの手添えや誘導によって生まれたものであっても、最終的には自分の中に収束して行くものなんだって事を、これを観て思った。
それともう一つこの作品が描いているのは、さよならをする事でしか前に進めないって事。今進んでる事はいつか終わり、変わり、別れる事になり、新しいモノに出会う。そしていつかそれに慣れて、それがまた新たな日常になる。島根のド田舎の山も、新宿の都庁も、それを知って理解してしまえば、なんら変わりのない、日常へと変わっていくのだ。
だからこそ、思い出は存在してる。それぞれの日常は平坦だけど、日常の種類自体は抱えきれないくらいに大量に存在している。その色んな日常を、生きているうちに何種類も進む事になる。だから、その抱えきれなくなりそうな日常をまとめる為に必要なのが、思い出なんだと思う。大量のさよならと、その都度自分の中に蓄積される思い出を駆使しながら前に進むのが、生きるって事なんだと思う。
そんな事を、黒板にキスをしてまた1歳年を取った主人公と、坊主になった大沢君と、他の子供達を観てぼんやりと思った。
それにつけても、夏帆はやっぱり有史上一番かわいい。

「いいお兄ちゃん」であるって事は物凄くしんどい事。「ダメな弟」であるって事は凄く楽な事。それが「ダメなお兄ちゃん」と「いい弟」に変わったときに生まれる軋轢。素晴らしい表現力だと思う。
オダギリジョー香川照之真木よう子蟹江敬三木村祐一もみんなイイ。