【レビュー】08年第29節 ちば戦@フクアリ

ジェフユナイテッドちば 0-0 アルビレックス新潟
スタッツ
実はこの試合の数時間前、フクアリに向かうべく外房線に乗ったところで俺の前に立ってたのが倉敷保雄アナだったんだよね。以前も蘇我駅でこれからフクアリに向かうであろう八塚さんを見かけた事があったんだけど、倉敷さんは初めて見たのでちょっとテンション上がると同時に、「そういや今日のスカパーは倉敷×ハラヒロミコンビだったよなあ」という事を思い出し、イチサッカーファンとしてこのコンビが実況する試合ならば、試合内容が面白くあって欲しいと願うと共に、なんとなく好ゲームになる予感がしてたんだよね。
ま、結論から言ってしまうとその予感は的中。0-0だったけど、凄くいい試合だった。何よりも、連勝で波に乗っているジェフに対して、極めて実直に対ジェフ戦の準備を進めてきた事が伺える新潟のサッカーは見事だった。こういう試合が見たいから俺はスタジアムに行く、いやむしろサッカーを見てるんだ、とか大それた発言をしてしまいそうなくらい、いい試合だった。



この試合は開始から1分でのいきなりのアクシデントから始まる。練習時から目に見えてボコボコになって剥れやすい状態だったピッチに足をとられた松尾が、ホント最初のプレーで負傷。彼自身も状態がすぐ分かった様で、即NGを出して腿裏を押えながらベンチへと下がり、急遽“新婚”ヒロシ投入。
しかしそのアクシデントがあったものの、動揺する事無く試合を進める事が出来た新潟。恐らくそれはこの試合での新潟がやろうとする守備のやり方がはっきりとしてたためなんだろうね。まず巻に対しては主に永田さんがマークに付き、トップ下のミシェウにはほぼマンマークに近いような形で千葉ちゃんが付く(特に相手がじっくりビルドアップをしてる時は)。んで、両ワイドに張ってくる深井と谷澤はサイドバックサイドハーフでまずフィルターをかけて、彼らが中に切れ込んできたところでボランチセンターバックが潰す。5連勝中の千葉を支えてきたのは間違いなく中盤の攻撃的なオプションだけど、そのオプションへの対応をまず何より準備してきたのだろうし、それは大正解だったと思う。
特に最近の千葉の勢いを牽引してきた深井への対応は秀逸。彼は主に新潟の左サイドでのプレーとなったけど(というか前半はほとんどこの左寄りのエリアで戦いが展開されてた。これが河原の躍動に繋がったと思うのだけど、それは後述)、途中出場のヒロシがしっかり対応。つーかこの試合の深井は新潟時代に「あー今日の深井微妙だなー」って時の深井だったけど、これってヒロシが彼の特徴をしっかり把握してたってのも大きいんだろうね。早い話が、彼と対応するときは彼が中を向いた時の左足をどう切って行くかってのをまず考えるべきって事。彼の真骨頂って、中に体を向けて左足で突っかけながら突き進むプレーだと思うんだよね。それをやる布石としての縦への突破とかアーリークロスのトライだと思うんだよ。それヒロシは完璧に把握してたよね。一回縦に走られて上手く引っ掛けられてカードを頂戴したプレー以外はほぼ完勝といっていいだろう。
てかヒロシ水飲み過ぎwwプレーが切れる度にしつこいくらいに給水しまくってたな。まあ、川崎戦の反省を踏まえれば至極正しいと思うんだけど、あんなに飲んだらお腹タプタプしないのかなあ。まあこの辺は彼の生真面目な性格が伺えるところか。
あと守備面だけでなく、松下とのコンビでこの試合の前半の主戦場だった左サイドにおいて相手を押し込むプレーを見せたのも良かった。ってか、やっぱりジェフはホームだったのでサイドバックも結構上がってきてたんだよね。肌黒のクソおっさんが深井を負い越すとかしゃらくせープレーも結構あったし。
ただ、プレビューでも言及したけど、ジェフの守備の最大の欠陥は攻守の切替えが遅いと言う事。特にサイドバックが上がって空いたスペースのケアの拙さ。そこを新潟が逃さなかった。そしてこれこそが、新潟がジェフ戦に向けて準備してきた最大の武器であり、この試合の最大のポイントだったと思う。


とにかく新潟がこの試合でやってきたのは「ジェフの中盤をどうやって効果的に潰すか」そして「奪ったボールをどれだけ早く美味しいスペースに送るか」って事だった。例えば前半は新潟の左サイドに偏向するジェフの攻撃を潰した後、ジェフが殆どケアできていない右サイドへ素早く展開すると(特に左からの松下のクロスがファーに流れるシーンでは)ほぼチャンスになっていたけど、あれも新潟の狙いそのものだったと思う。てかこの試合のワンちゃんのクロス素敵過ぎ。そしてジェフ逆サイドケアしなさ過ぎ。
だからサイドハーフに入った河原がこの試合でめちゃくちゃ活きたのって、攻撃面ではこの「相手の空いてるスペースをすぐさま察知して走る」っていうタスクだけをひたすらチームとしてやり続けたってのが大きいと思うんだよね。やっぱり彼の特長ってのは、ボールがないときに如何にして走るかって事。それがこの試合ではサイドのスペースでめちゃくちゃ活きた。だから河原がこの試合で活躍したのは必然とも言えるんだよね。だから、彼は本当に「次」が重要だと思う。この試合ではいろんなお膳立てがあって素晴らしいプレーを見せる事が出来た。次はそれがない時にどう言うプレーを見せるか。お膳立てがないなら自分で作ればいい、ってプレーができるか。そこが重要になるはず。がんばれ!!今が殻を破る最大のチャンスだ!!あ、ちなみに浦和もACLと神戸戦を見る限り結構サイド空くぞwチャンスを活かせっっ!!!



あーそうそう。永田さんの素晴らしさにここで言及しておこうかな。この試合の巻はフリックオンの上手さとか、空中戦の強さとか、あとDF前に上手く入り込んでボールを受ける技術とか、そういうものは存分に見せたと思うんだけど、それがなかなか決定的な形に結びつかなかったのって永田さんが素晴らしかったからだよね。てかここ数試合の永田さんは実に素晴らしい。早くて、強くて、そしてなんと言っても上手い。今日も河原の飛び出しに呼応してフィードを何度か見せていたけど、ホントセクシー過ぎ!





で、後半。前半同様の流れだけど、新潟の「奪ってから縦への早い展開」がより顕著なものに。前半よりもDFラインはちょっとリトリートして守り、相変わらず攻守の切替え時にぽっかり空くジェフのスペースに突進していく。
となるとまたしても河原が目立つ目立つ。てか何より驚きだったのが河原のクロスの質。めちゃめちゃいいじゃない!もし俺が河原の事を全く知らずにこの試合を見て「彼はユース時代からサイドアタッカーとして活躍してきたんだ」って言われたら何の迷いもなく信じたと思う。あとはシュートが枠に行けばなー。
とまあ後半も新潟の意図どおりの展開で、速攻からのサイドアタックが決まりまくるのだけど、今日のアレッサンドロは絵に描いたような「not his day」。ボスナーの嘘みたいなプレゼントパスから岡本を交わして後は流し込むだけのシュートがボスナーの足にバッチリヒットし、河原が動き出した事で始まった攻撃からうっちーの素晴らしいクロス→ドンピシャヘッドが岡本の左手にドンピシャ→こぼれ球をキックするも当り損ねで、岡本が体で弾き出す・・・・とか、河原のファーへのクロス→ヒロシのダイレクト折り返し→反応できずにゴール横に逸れる・・・・とか散々。まあ、この試合はアレがちょっとだけ幸運だったら勝ってた試合だよ。その運がなかったから引き分けた。そういう試合。
その後ジェフはミシェウ→新居、深井→レイナウドっていう攻撃のオプションを投入してきたけど、大勢は変わらず新潟ペース。新潟は目を痛めた(大丈夫?)勲→テラ、完全にオールアウトでへばってた殊勲の河原→アトムという交代もあったけど、点を取るための最後の一歩が破れず、最後は貴章がドフリーヘッドを上に外して試合終了。



というわけで引き分けだった。点も獲れなかった。ただ、この試合に臨む選手・スタッフの、変な言い方かもしれないけど「意匠」みたいなものが十分に伝わってくる、良いゲームだった。そして改めて思うのだ。こういうゲームができるこのチームはやっぱり下を向いてる暇はないんだと。
次はホームに帰って浦和戦。相手のピッチ外の喧騒なんてどうでもいい。相手を分析し、しっかり準備し、勝つための1点を獲りに行く。それだけだよ。