【レビュー】09年第21節 清水戦@日本平

清水エスパルス 1-1 アルビレックス新潟
スタッツ
鈴木淳監督 試合後コメント

やったぜJリーグ新記録!5連続引き分け。ビミョーすぎるwwww
だけどマジな話、強いチームは調子が落ち込んだ時でも最低ラインが引き分けである、って事を考えるとこれは物凄く大きな事だと思う。特にこういうゲームで勝ち点1をもぎ取ったのはとてつもなく大きな意味を持つはず。


試合の立ち上がり10分くらいまでは両チーム互角だったと言えると思う。結局決定機らしい決定機は作れないままだったけど、最初は新潟もボールを奪って前へと進む形が作れていた。ただ、結局これは前半の大きな課題として残ったのだけど、ヨンセンへのケアが曖昧になるシーンが多く、センターバック二人は一発目の守備は良くやっていたものの、千葉ちゃんのポジションがセンターバックにかぶったりするシーンが多くなってこぼれ球へのケアが全く上手く行かずに、岡崎、枝村、兵藤、本田あたりにフォローされてそこで起点を作られる、もしくはヨンセンがバイタルから下に降りてきたときは捕まえ切れずに簡単にボールを触らせてしまう、という形が頻発する。
正直、これは勲の不在が相当影響していたって事だろうね。センターバックとの連携でこぼれ球を処理する仕事、ここで前に行く/行かない、ここまで行く/ここまでは行かない、って判断を的確に行ってポジションを取る、って選択が今年の新潟の4-3-3の屋台骨であるという事が、今まで頭の中では思っていたことではあったけど、これ以上ないくらい眼前で明確になった前半45分だった。千葉ちゃん頑張れ。マーカス頑張れ。


この前線で起点を作られてしまう影響は甚大で、そこで起点が出来ると、まず伊東と本田のボランチの負担が軽減されてその2枚がキッチリと中盤の底で前を向いて、凄まじいスピードでプレスに走れるので新潟の攻撃に蓋をすることが出来る。前半、新潟が真ん中からの攻撃を仕掛ける(特にオオシへの縦へのクサビ)ってシーンはほぼゼロだったけど、これはこの2枚の影響がとてつもなく大きかった。ていうか、ここ最近新潟の攻撃が停滞気味である大きな理由はオオシへの縦へのクサビのパスが少なすぎるって所だと思う。これは各チームのスカウティングの所以って所だろう。オオシに対してセンタ−バックがしっかりマークし、オオシと中盤の間に1枚必ずフィルターを掛けておく。これって二周目で各チームが新潟に対してやってきてる対策の最も顕著なところだろうね。ここは今後の大きな課題だと思う。
で、そうやって前線の真ん中での起点、中盤の底での起点と、センターで確固たる形が作れると、今度は清水の最大の武器であるサイドアタックが活性化してくるのは当然の帰着。特に右サイドの兵藤と市川が目立ち始めると、いよいよ淳さんが「手も足も出ないような状態」と評した時間帯に移行していく。
プレビューでこの試合の注目点として、「両ウイングが相手のサイドバックに対してどれだけプレッシャーを与えて、オーバーラップをさせないか」って書いたけど、そこではまさに完敗。両サイドバックはセンターが安定したことでウイングのプレッシャーを意に介さずにガンガン高い位置を取リ続ける。特に市川はペドロを追い越して一気に前へと駆け上がる事に何の迷いも感じていない。この辺は清水がずっと積み重ねてきた、彼ららしいサッカーを体現してたって事なんだろうね。左サイド、センターでボールが収まった時の市川と兵藤の右サイド2枚の掛け上がりは本当に恐ろしかった。だって、チャンスと見るや逆サイドに引き寄せられたせいで広大なスペースが出来てる右サイドに2枚が突っ込んでくるんだもの。ジウトンが退場したのもさもありなん、だったと思う。
その苦しい状態で我慢し続けたのだけど、結局失点はやはりその右サイドから。33分、圧倒的なプレッシャーを仕掛けた清水が中盤の高い位置でボールを奪うと、枝村がヨンセンに縦へのクサビを入れる。ヨンセンがそのボールをワンタッチで右サイドで完全にフリーになってた市川に流すと、市川がそれをワンタッチでクロス→岡崎が永田さんの前に入り込んでニアでヘッドで合わせてゴール。うっひゃー。お見事。あの苦しい状況であれだけ連動したダイレクトプレーされちゃうとキッツイな。
その直後、貴章がサイドを抜けてクロス→ペドロがヘッド、で前半ようやく最初のシュートを打つものの、結局前半のシュートはこれ1本でその後もずっと清水ペースのまま試合が進む。そして43分には、ジウトンのドリブルを仕掛ける相手にひょいっと足を出しちゃう悪癖が出て2枚目のカードで退場。やっちゃった。まーあれは1枚貰ってる選手のプレーとしては軽率過ぎる判断ではあるし、ジウトンは猛省する必要があるけど、岡田主審がずいぶんと遠くからカードを持って走ってきた事は付け加えておきたい。あの距離から瞬時にイエローの判断が出来たのは熟練の技なんでしょうね。


と言う訳で前半45分間、完璧な清水。つえーなー。今年最も「完敗」を感じた45分だった。ていうか、今年ってここまで(ナビスコは除くww)明らかに完全に相手に上回られて手も足も出ない、って感じた事なかったんだよね。そう、そういやそうだよな。これまで最高のシーズンだった07年だって、3節の名古屋戦で早くも「完敗」を感じたのに。やっぱ今年のチームはつえーよ。
しかも一人退場。ぶっちゃけ、ここ数年で一人退場になったけど試合の流れを引き戻した試合ってほとんど覚えがない、というか、一人退場になったら一人退場になったなりの試合しか出来てないので、前半終了時点で相当覚悟してはいたんだよね。でも試合終了後に真っ先に感じたのが「勝ち点3を獲れなかったことに対する悔しさ」だったのだから凄い。やっぱ今年のチームはつえーよ。



後半はオオシに替えてゴートク。ゴートクが左サイドバックに入って、ペドロが1トップ、サイドハーフ(とウイングの間くらい)が左・松下、右・貴章、センターにマルシオと千葉ちゃんという、4-4-1でスタート。これでどうなるか、と注目していたのだけど開始早々の松下のシュートに始まり、思いの他良い流れでスタートする。
この原因、一つはまず清水のギアが落ちたこと。前半に比べてセンターからサイドに流れる動きや、サイドバックの鬼のような攻め上がりは若干影を潜めた。ただ、その前半の最大の脅威であった相手のサイドアタックを停滞させるのに寄与したのは、まず新潟のサイドバックのポジション取り。淳さんが言うように、「2失点目食らったらオシマイ」ってゲームの展開の中で、慎重にゲームを進めつつも明らかに前半に比べてサイドバックの位置が高くなり、松下と貴章の両サイドとの関係が近くなった。前半はペドロとジウトンの距離が遠くてそのスペースを自由に使われちゃった感じがあったけど、後半はその距離がぽっかり空くという事がほとんどなかった。これが同点への布石の一つ。
もう一つはセンターバックと千葉ちゃん&マルシオの二人の距離感が上手く行ったという事。千葉ちゃんのコメントを見ると、「DFラインに吸収されるのを注意した」ってあるけど、確かに後半はしっかりバイタルのスペースをケアするポジションを取るようになって、前半のようにセンターの前で起点を作らせない。千葉ちゃん、前半はボールタッチの回数自体極端に少なかったもんな。
そして何といってもマルシオ。この人さ、これ言っちゃおうかなあ・・・。まあ、この人もブログで言ってるから言っちゃうけどw、Jリーグベストプレイヤーなんだよマジで。外国人で、だけじゃなく、中盤で、だけじゃなく、全選手の中で。間違いないと思うよ。「選手個人」として評価をすればマジでベストだよ。この試合、後半の試合を決定付けたのはマルシオの一発のキックと、そしてセンターでの相手へのプレッシャーだったと思う。前半はあれだけ自由に動いていた清水のボランチが、後半は積極的なパス回しが出来なくなったのは、千葉ちゃんの位置と、そしてマルシオの献身的なプレッシャー、フィルタリングが最大の原因だったと思う。文句なしでこの試合のMOMだわ。あーすげえマルシオ。本当にすげーマルシオ。来年もマルシオのプレーを堪能するには、最低でもACL出ないとダメだよな。


そうやって試合の流れは随分と良くなったのだけど、結局のところ決定機らしい決定機は作れないまま試合は進む。失点をまずゼロで抑えるというタスクから言えば問題ないけど、スコアは1-0でリード許してると言う事を考えれば、能動的に手を打つべきシーン。そこで淳さんが選択したのは、75分千葉ちゃんに替えてヨンチョル。これでペドロ1トップ、右に貴章、左にヨンチョル、ボランチはうっちーがスライドしてマルシオとコンビを組み、右サイドバックには松下。この試合はわんちゃんの万能性に本当に助けられたね。素晴らしい選手だ、改めて。
そしてその交代と前後して、ペドロがドリブルを仕掛けてファウルを貰い、FKをゲットする。距離は約30メートル。若干左寄り。これ、マルシオも得意な位置だって言ってたけど、実際試合前のウォームアップでマルシオがいつもFKを蹴ってる位置なんだよね。俺はいつも試合前にそのマルシオのキック練習を注視してるんだけど、正直この日はあんまり調子良くなかったんだよねww1本いいキックがあったけど、あとは枠を外れたり、ボテボテのゴロだったり。それがゲットゴール!!!!!!!を絶叫しながらちょっとだけ頭にあったんだけど、そのキックは新潟に加入してから最も完璧なコース、スピードでゴールに突き刺さる。発狂。もうこのせいで喉が完全に死んだwwそして震えまくった。マルシオ凄すぎる。しかし、後で録画観たけど、あの曲がり方、スピード、コース、そして何といってもあの落ち方。すげーな。本当にすげーよ。


で、その直後に枝村が2枚目のカードで退場。あれ絶対にカードじゃねーよね。かわいそうに。相手にアジャストすると同時に、審判にアジャストしなくちゃいけないのって辛いよね。
これで数的同数になると、いよいよ新潟にとって勝ち点3が見えてくる。ヨンチョルとゴートクの左ユニット、貴章と松下の右のユニットも機能して相手を押し込むし、ペドロは常に裏を狙い続け、マルシオもその瞬間を見逃さんと虎視眈々とナイフをちらつかせてる。それとうっちーのボランチもパス回しの起点としていい感じで機能。ただ、最後の精度がブレて決定的な形を作り出すまでには至らない。長谷川健太監督が「相手に押し込まれていましたが」って質問に対して「最後の松下以外は怖くなかった」って言ってたけど、それは確かにその通りだろうね。ただ、前半のあの劣勢から、これだけ相手を押し込むことに成功して、追いついて見せたのは本当に見事だと思う。素晴らしかった。


と言う事で、最後はペースを握って清水に脅威を与え続ける事に成功したけど、1-1のまま試合終了。負けないと言う事の価値を、これ以上ないくらい感じたゲームだった。
ただ、その負けていないというのを本当の意味で消化するには、次の勝利が必要。最後は勝利で締めないと、ここまで踏ん張って引き分けた意味がなくなる。勝つぜ。次は勝つぜ。