デビルズ・リジェクト

すげえ。これは本当にすげえ。なんか色んな所でこの作品の高評価を見てたので、ずっと気になってたんだけど、これは凄まじかった。
ホラーやサスペンスや殺人モノって、「善意と悪意をどの位置に置くか」って事と「どこに観客の心の焦点を当てさせるか」ってのが大きなポイントになると思うんだよね。例えば「ノー・カントリー」は「圧倒的な悪意と、貧弱な善意が最後まで交わらない名作」だし、「悪魔のいけにえ」は「観客のシンパシーを一切排除した名作」だと思うんだよ。
翻ってこの作品、最初その二つの要素はごくごくシンプルなんだよね。前半は圧倒的な悪意の羅列だから。でもその悪意の羅列っていう物語の軸が、どんどん歪んで形を変えていって、悪意と善意とシンパシーが入り交ざる後半の圧倒的な展開には鳥肌立ちっぱなしだった。特にラスト5分くらいはもう鳥肌ぞっわーの連発。そして最後は、これまで嫌悪が殆どを占めていた「悪意」に対して「ああ、アイスクリーム食わせてあげたい」って思ってしまうんだからビックリだよ。
いやあ、アメリカン・ニューシネマの豊潤な影響だとか、音楽だとかも含め、文句なしの大傑作。凄いわ。感服だ。