プレシーズンマッチ 清水戦@アウスタ

清水エスパルス 2-0 アルビレックス新潟

黒崎久志監督 試合後コメント


※サポリンの日記より転載。一部修正・加筆。3/1もういっちょ加筆。



めちゃめちゃいい試合だったと思うなあ。マルシオがちょっと痛んだ事以外、PSMとしては理想的な試合だったと思う。あ、マルシオは大丈夫でしょう。今週の半ばに痛みがあった部分が、相手と交錯した時に気になったので、交代した感じだったし。あれなら来週は多分大丈夫。



課題は誰の目からも明らかだよね。相手の攻撃、特にクロスに対して、守備の約束事に曖昧な所が多かった。これに尽きると思う。

去年なら貴章がサイドに下がったらうっちーが勲の横にスライドするとか、松下やマルシオが勲の横に降りてくるタイミングとか、そういうオートマティズムが、相手がクロスを入れた時、跳ね返した時に希薄だったと思う。クロスが入って、さあ跳ね返す!って所で、あ、やっべその後のフォローいねぇ!ってシーンが前半から何度かあったし。そんな状態で、攻撃はサイドアタックからのクロスに特化した、清水とやったらそりゃ失点するよね。二つともわかりやすーく、クロスのリバウンドを沈められた形だったし。

それともう一つ大きな守備の問題で言うと、これは色んな選手のコメントでも出てるけど、プレスのポイントがあまりに曖昧だったと思う。4-2-3-1ってシステム、というか三門がガンガン前に出るのでしばしば4-1-4-1みたいになるこのシステムは、中盤の高い位置からプレスの網を張れる、って大きな利点があると思うんだよね。そこで相手を引っ掛けることができれば、カウンターの大きなチャンス。このシステムと、縦への推進力、裏抜けを得意とする選手たちの起用、そしてアルビレックス新潟と言うチームのカラーを考えると、やはりこの高い位置でのプレスがものすごく重要になると思うんだよね。
だけど、ここでもそのオートマティズムはイマイチだった。その結果、後手に回ってプレスに行った時にはすでに相手に半歩前に行かれてる、ってシーンがかなり多かった。てか、去年4-3-3でやったチームなんだから、アンカーへのプレスを重視することが相手の機能を崩すことである、って事は分かってたはずなのに、あんなに本田を自由にしちゃダメだよね。全然ダメ。


あと、結局このチームの守備は4-4-2がベースになるんだと思うんだ。4-3-3の時だって、ウイングがサイドハーフ、マルシオが2トップの一人として4-4-2としてのプレスやってたし。4-4-2だとサイドハーフサイドバックのユニットが重要になるよね。その2段の守備をハッキリさせることが、良質なプレスの基本だと思うんだ。特に今までの新潟のサッカーを見てると。
だけど、この試合ではそれが希薄な感じだったよね。その辺が曖昧だったので、美味くプレスがかからなかったんだろう。これはもう新潟のこれまでの遺伝子をフル動員して作りこんでいかないとね。今までの蓄積を、今こそ有効利用すべきだろう。


で、そうするといい形でボールが奪えないので、効果的なカウンターがなかなか出せなかった。この試合ですごくいいカウンターを仕掛けたのって、千葉ちゃんの全力オーバーラップとか、ヨンチョルやマサルの個人技とか、あくまで個人でのプレーに依存してたよね。それを押し出してもらうのは当然だけど、チームとしてコレクティヴにやらないと絶対にこれ以上には行けない。
このプレスに関しては、一朝一夕でどうにかなるものでなく、おそらくシーズンを通してずっと取り組んでいべきものだろう。だから頑張れ。これが完成した時、このチームは相当強くなるよ。


だからこの試合で「何故失点したかわからない」じゃなく、「だから失点した」が、明確に炙り出された意義はすごく大きいと思う。キャンプ中で、Aチームが失点したのってこれが初だよね?確か。たまたま失点せず、あやふやになったままシーズンに入るよりずっといいよ。
てか、清水と磐田の試合が逆の方が良かったなあ。この課題に取り組むにはもう一週間欲しい。つか、磐田ヘタレ過ぎ。もっと真面目にやれよ!試合観てないけどw


そして、今年の川崎の攻撃の最大のキモは、主にカウンターになった時、前の三人がボールを受けた後に飛び込んでくるセンターハーフだと思う。これ、今日の新潟の守備だと一番厄介な形。整理して入らないと絶対にやられる。あと一週間。超頑張れ。


対して、攻撃は凄く面白かった。後半に河原やヨンチョルを下げて、テスト色の強い442にした時間帯はとりあえず置いとく。だってマサル、勲、慶行、三門の中盤4枚なんてキャンプで殆どやってないっしょ?
あ、でもマサルが天才なのはあの時間でもよく分かった。彼は何より、体の使い方が死ぬ程上手いんだね。見事なパスもパスミスもあったけど、それよりあの時間だけでも分かる、あの背中の入れ方とキープ時の姿勢は凄い。フミヤが二年間に渡って課題として取り組み、未だ道半ばであるこの要素を、最初から身に着けちゃってる。これ伸びる選手の必須条件だよね。マサルさんすげー。


んで、この試合は、4231でスタート。多分、今年のファーストオプションに近い扱いになるのかもね。

このシステムで、貴章の1トップで何試合か試して来た訳だけど、貴章の1トップの是非ってのはやはり議論の的だったと思う。特に貴章にポストプレーさせんの?って所。だけど、ポストプレーって要は、中盤から前線に起点を作って、周りを前に向かせる時間を作る、って事なんで、別に前の誰がやってもいいと思ってたんだよね。だって4-2-3-1って言ったって、あれは4-4-2の亜流、アシンメトリーな4-4-2に過ぎないんだからね。河原とヨンチョルという、動いてボールを引き出せるFWタイプを両サイドに配置してる訳だし、何より真ん中には時間を作る事に関してはリーグ随一のマルシオが君臨してる。


で、今日の試合ではそういうシーンが結構あったよね。ハイライトは後半、失点のすぐ後くらいだったかな?
トップ下の河原がラインをかいくぐって抜け出し、ボールを左サイドに流れながら受けてキープ。そうやって相手のDFを引き寄せた所で、左サイドから貴章が中に入りつつボールを受け、その開いたスペースを利用してドリブル。そこからクロスが入って、オオシとGKを超えたボールを、ファーのヨンチョルがシュート性の折り返し→ポストに当たって、こぼれたボールをミカ(あれ?うっちーだっけ?)がシュート!ってシーン。
この場合、河原がポスト役って事だよね。これこそ4231の3と1の誰でも、ポストになれるって奴だろう。


で、後半は俺の目の前に清水のDFラインがずっといるような感じだったんだけど、いい時間帯は前の4人とミカが、そのラインと駆け引きしながら、虎視眈々と裏抜けと、ボールを受けるのを狙って動き直ししまくってんのよ。その、誰が飛び出しても、受けてもおかしくない、そういう状態で相手のラインにナイフを突きつけてんの。4バックとボランチに対して、こっちの前線4人とミカが「ほーら行くぞ、行くぞ行くぞ。誰が行くかなー、わっかるかなー」ってなってんの。分かる?その画。もんのすごくエキサイティングだよw

これが90分のうち、多くの時間でやれるようになったら、相手にとっては恐ろしく厄介なチームになると思う。去年の433新潟が、相手のサイドバックにペドロと貴章が常にナイフをちらつかせていたような、ああいう相手のDFに対する恒久的なプレッシャーに成りうると思う。それこそ、アタッカータイプを並べた4231の利点だろうしね。

これは勲もハッキリと言ってるよね。裏抜けの動きこそ、今の新潟の攻撃でのダイナミズムを作りだすために不可欠な要素。貴章、ヨンチョル、河原といった裏抜けを得意とする選手たちが揃っているんだしね。でもそれは体力を消耗するわけで、それをどううまく使っていくか。それを失敗すると、今の日本代表みたいになってしまう。だけど、俺たちにはオオシがいるんだ。彼がアクセントになって、タメを作るという変化を与えるだけで、ずいぶんと変わってくると思う。スタメンでも、途中出場でも、今年はかなりオオシが流れを握ってるんじゃないだろうか。


あと今日、そういう裏抜けとか相手のDFにプレスをかけるっていう形がなかなか出なかった理由の一つは、淳さんの頃からポイントであるボールを動かしてサイドを変えて攻めていく、って形が出せなかったからだと思う。前の4人とミカが動いて、ボールを引き出す動きの後、それをきっかけに素早く中を経由して、相手を横切るパスってなかなか出なかったよね。

この辺はやっぱり、マルシオがすぐ引っ込んじゃった影響ってあると思う。彼を真ん中に置く利点の一つは、彼を経由してボールを分散できるって所。マルシオ交代後の今日の前のメンバーはみんな走ってナンボ、仕掛けてナンボのアタッカータイプだったし、ミカも走ってナンボタイプ。ミシェウと慶行の補強は、やっぱこの辺が理由なんだと改めて思う。

前半の最大のチャンスって、左で河原とヒロシの絡みで起点を作った後、DFラインを素早く経由して、うっちーの所で縦にスピードアップして、その縦パスをミカがワンタッチでヨンチョルに流して、抜け出したヨンチョルがシュート! ってやつだったと思うけど、あれはまさにボールを動かす事で出来たチャンス。

ああいうのを増やしたいよね。



ま、あと今日のハイライトを挙げると、16分くらいだったかなあ。永田さんが相手のロビングを、クリアじゃなくワンタッチで、相手にギリギリ引っかからないようなチャレンジングなパスを河原に出して、河原がそれを受けて、後ろ向いてキープしようとした瞬間、永田さんが「縦に行け!!!」って河原に叫んだんだよね。それを聞いて、河原が反転して左サイドをドリブルで突き進んだんだ。

あれは永田さんが河原を縦にドリブルさせるための、ちょいリスキーなトライのパスだったんだよね。
その意志を無駄にすんな!行け!、って事でしょ?「縦に行け!」ってのは。永田さんが天才なのは存分に知ってたけど、こんなに大人になってたのは知らなかったぜ。永田さんかっこよすぎるだろ…。

今日の新潟の攻撃を牽引した河原もそうだけど、いつの間にか大人になってる選手っているよね。チームを見続ける楽しみってやっぱこういう所だと思う。


さあ、今年もそんな楽しみを胸に開幕だ!!
まずは川崎ぶっ倒す!!!!