salyu×salyuの「s(o)un(d)beams」は歴史的名盤である

s(o)un(d)beams

s(o)un(d)beams


http://www.salyu.jp/salyuxsalyu/main.html



結論から言います。コーネリアスsalyuを全面的にプロデュースしたこのアルバム。間違いなく日本のポップミュージック史に残る大名盤です。
「GUM」や「Another View Point」の嫁ヴォイスのサンプリングに代表されるように、声も一つの楽器として扱ってきたコーネリアスと、バリバリのヴォーカリストであるsalyuの組み合わせ。これはもう初めて出ると知った時からずっと期待してきた作品だったけど、その期待を遥か上回る凄まじいアルバムだと言えるだろうね。


http://www.cinra.net/interview/2011/04/06/000000.php
http://natalie.mu/music/pp/salyuxsalyu


このリンクにもあるように、声に関する音楽理論の追求という部分でも凄いんだけど、何より凄いのはその上でしっかりとポップミュージックになってるって所。小山田圭吾という人に関して、かつてフリッパーズギターでやってきたようなソングライティングを期待している人は多いと思うんだけど、ここで彼が書いている曲はまさにポップミュージックのフォーマットのそれ。「レインブーツで踊りましょう」なんて、リズムパターンとアクセントになってるカスタネット(もしくはクラベスかな?)の音とメロディだけを聴けば、松田聖子とかの王道ポップスの趣だし、最終曲の「続きを」なんてピアニカの音がもうスティービー・ワンダーのようだ。
そして「Sailing Days」は以前、三波春夫コーネリアスという信じられない組み合わせで披露された「赤とんぼ」の新たな解釈のような牧歌的で童謡的な佇まいだし、一方で「ただのともだち」、「奴隷」、「Mirror Neurotic」はザクザクと刻まれた緻密なリズムを持ちつつも、根底にあるのはsalyuの声によるメロディとハーモニーというポップミュージックの基本だ。



で、ここでちょっと話は脱線するんだけど、最近のJPOPと呼ばれる音楽で最も面白いものが出てくるのって間違いなくアイドルソングの分野だと思うんだよね。これが何故かと言えば、中田ヤスタカPerfume前山田健一ももクロ日比野裕史アイドリング!!!みたいに、職業作家と演者のかちっとした分担作業があって、それがそれぞれで最高のパフォーマンスを見せているからだ(それに、いやらしい話をすればお金の流れとしても演者→作家って所に、ある程度潤沢な流れがあるだろうし。アミューズスターダストプロモーションにフジテレビ!!)。
だってさ、演者と作家が半端な事になって、それがつまんなくなる主因になってるミュージシャンってあまりに多いと思うんだ。次々出てくるけど判で押したようなバンドは本当に多いし、浜崎あゆみは一人称が「僕ら」になる教祖様になっちゃったし、西野カナは会いたい病を患ってしまったし。

そういう意味でも、上のリンクに詳しいけど、このアルバムにおける分担作業と、それによって産み落とされたこのアルバムの奇跡的な凄まじさってのは、今の日本のポップミュージック業界にとっても物凄い重要な事だと思うんだよ。もっと大騒ぎされなくちゃいけないアルバムだと思う。正真正銘の大傑作なのだから。


それと今「奇跡」って言葉を使ったけど、そう、これ奇跡のアルバムなんだと思う。例えばそれは最終曲の「続きを」の歌詞がその理由の一つだ。もちろんこれは3.11以前に書かれた歌詞だし、実際このアルバムの発売は3.11の影響で延期になったわけだけど、その内容が現状に対して訴えかける事は、あまりにも深く突き刺さる。坂本慎太郎という人の凄さを、またしても思い知らされた気分だ。
最後に、その歌詞を紹介します。

「続きを」
words: 坂本慎太郎 / music: 小山田圭吾


もう朝 夜は あっという間 明ける
さあ まだ まだ やってみよう
今から おきる ありとあらゆる現実を
全部 見て 目に 焼き付けよう


お〜 ただの空 ただの雲 ただの見慣れた町
お〜 ただの路地 ただの角 全てがなぜかまぶしい


続きを あなたと
続きを もっと見たい
続きを 最後まで
続きを 見届けたい


涙の 日々は たった今終わる
さあ 来て 来て やってみよう
今目の 前の わけのわからぬ現実を
全部 その まま 受け入れよう


お〜 なぜか空 なぜか雲 なぜか見慣れた町
お〜 なぜか路地 なぜか角 全てが意味を持ち出す


続きを あなたと
続きを もっと見たい
続きを 最後まで
続きを 見届けたい
続きを 例えば
続きを 悲劇でも
続きを あ〜
続きを 目をそらさず